108-モニカ
「わぁ~中々いいところね」
「....そうだな」
青い空。青い海。
僕らはパター星系に存在するパターⅣへと降りていた。
このパターが属する国は......
「クロペル共和国って、前から話は聞いてたけれど.....自然がそのままある国なのね」
「ああ。気に入ったならよかった」
資料の中にクロペル共和国が入ったままだったので、エリスを説得しきれずに僕らはパターへ向かう事となった。
パターには居住可能な惑星が三つあり、Ⅱの特徴は開発を最低限にとどめていることだ。
前世で言う、地中海のような雰囲気の町並みが広がり、前世との違いは街中のあらゆる施設が自動化されていることと、空をたまに宇宙船が過ぎる事だけだ。
「まずはどうするのかしら?」
「宿を取ってある、空港から近いが.......折角だから、バスに乗るか」
僕たちは宇宙港のロータリーに止まっていたバスに乗り込む。
前世だとありふれた二階建てバスだが、この世界では数百年前の技術のアップサイクル品だ。
事前に見た情報によれば、排気ガスを出さず振動もないという。
「あ、こんにちは!」
中に入ると、乗客は二人しかいなかった。
褐色の肌の女性一人と、目つきの悪い男だ。
「.....こんにちは」
「観光客...なのかな?」
「そうだ」
「ねえ、なんて言ってるの?」
僕は言語に困らないが、エリスはそうではない。
二人との会話が伝わらなかったようだ。
「こんにちは、と言っているようだ」
「そうなのね...私もこんにちは、と言ってるってと伝えてほしいわ」
「....彼女もこんにちは、と言っている」
僕は不本意ながら会話を続けた。
運転席に運転手はいないが、恐らく自動運転だろう。
「この時期に観光なんて、珍しいね」
「...そうなのか?」
「この時期はオーベルン神聖連合との戦争が多いから、観光客は巻き込まれないために居なくなっちゃうんだ」
その時、バスが動き出した。
四人しか乗客がいないのに発車するとは、本当に観光客がいないようだ。
「よく知ってるんだな」
「あっ....そう! ここの生まれだから!」
「お嬢、あまり親しくなる必要は....」
目つきの悪い男が忠告する。
確かに、身元不明の観光客と仲良くなる必要はないな。
「お前たちは、この時期になぜ?」
「ちょっと海に泳ぎに来ただけだよ、すぐに帰る予定なんだ」
女性はそう言った。
それにしても、一般的なクロペル人の顔つきからしても、かなりの美人だ。
乳白色の髪と深海のような深みを持った青い目。
ひょっとすると、傍にいる男とカップルなのかもしれないな。
主従関係なのか、そうではないのかは気になるが....人のプライベートだ。
「あ、そうだ。君、名前は?」
「.....エリアスだ、こっちはエリス」
「私はモニカ。こっちは従者のジン!」
僕たちは、モニカと連絡コードを交換し合った。
いつでも連絡してね、という言葉と共に。
「何日くらい泊まるの?」
「この星には一週間。その後パターⅢに移動して、最後にパターⅨに向かう」
「そうなんだ...パターⅨに行く時はまた連絡して、あそこにあるプライベートビーチを使えるように手配するから」
やはり一般市民ではないようだ。
貴族か、高級商人だろうか?
「お嬢!」
「これくらいはいいでしょ、折角来た人達なんだから!」
よく分からないが、パターの管理者であるパルター伯に関連する人物なのかもしれないな。
この辺はまだ情報収集不足であり、クロペル共和国がVe‘zの「目」からするとあまり注目されていなかったことを指し示している。
「止まったわね」
「では、また」
僕らはバスを降りるために立ち上がった。
宿の近くの駅に着いたのだ。
「またね!」
「...」
男の無言の視線を無視しながら、僕らはバスの外へ出た。
海辺からだいぶ上がってきたようで、段々状に連なる街並みが見える陸橋の上のようである。
「何だか変な匂いがするのね」
「潮風だろう、金属類の敵だと情報にあった」
ステンレス...錆びることのない金属すら錆び付かせる、エクスティラノス達には効果がないが、たいていの金属にとっては恐怖の象徴のような風を浴びつつ、僕らは宿を目指して歩くのだった。
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