106-禁忌の提案
そして、Ve’zの反撃が始まった。
常套手段として、攻撃を受けてもびくともしないケルビスが最初にワープし、攻撃してくるようならニューエンドの連射で敵を全滅させるというものが使われることとなる。
『攻撃してきた時点で、連帯責任だろう』
Ve’zのやり口は、屁理屈のようなものだったが、エリスが直接その場にいなければいいという滅茶苦茶な逃げによって成立していた。
Ve’zの攻撃により、たった三日のうちにオルダモンとキロマイア皇国の緩衝地帯にある基地は殲滅され、クロペル共和国の船は不戦を貫くことで被害を免れていた。
「....つまり、撃たなければ殺されないということか?」
そして、クロペル共和国では――――
生きて帰ったアベル総督が、ジアンにそれを伝えたのである。
「はっ、オルダモンの者どもにもそれを伝えたのですが、「馬鹿馬鹿しい」と一蹴されました」
「仕方ない、あまりに突飛な事実だ」
ジアンは驚きに満ちた表情でその報告を受け入れた。
映像も確認しており、攻撃しなかった船は一撃も撃たれていなかった。
「残酷だな.....我々は参加だけして、無能を晒すしかないという事か」
「攻撃しなければ、反撃されない.....つまり、Ve’zはキロマイアには手を出すなと、オルダモンに無言で訴えているのでしょう」
「あの愚者たちが、それに応じるとは思えないな」
ジアンは堂々と、オルダモンを批判する。
共和国の女王側近としても、オルダモン連邦は頼らざるを得ないだけの関係である。
敗北を繰り返し、Ve’zの攻略法も見つけようとせずにただ大艦隊と大火力をぶつけて勝とうとし続ける。
愚かと言わず何というか、といった様子であった。
「下の者の嘆きは、あの主席には届かないのでしょうな」
「やめろ。他の指導者を論うことは、我々のするべきことではない」
ジアンはアベルを制止する。
確かに、イワノフ主席は傲慢で蒙昧な人物であり、部下の言う言葉など聞きはしない。
それを分かっているからか、主席の周囲を固める人物は、叱責を恐れて聞き心地のいい物事しか話さないのである。
「だが、実際に我々に猶予はないな.....」
キロマイア戦線で存在感を示さなければ、オルダモン連邦との繋がりは切れる。
そうなれば、オーベルン神聖連合との戦いは確実に不利なものとなる。
不利どころか、最悪の場合敗北に直結するだろう。
「........アベル、Ve’zと密通する手段はないか?」
「まさか、正気でございますか!?」
アベル総督は叫ぶ。
それはつまり、オルダモン連邦を裏切り、裏側から手を組んで挟撃するという事である。
「ここで攻撃させたところで全滅するのみだ。私は女王様と相談してくる.....アベル、過去の文献を調べるんだ」
「畏まりました....色よい返事を頂けることを期待しております」
ジアンは立ち上がり、城内を移動する。
星間国家の君主であるティニアが住まうこの城は、巨大ではあるがそれでも他国に比べれば小さい。
彼女のいる場所に、ジアンはすぐにたどり着く。
「入浴中ですか?」
『ハイ、御用の際はこちらをお使いください』
ジアンはアンドロイドの表示したモニターを使い、入浴中のティニアと音声通話を行う。
「女王様、懸念事項があります」
『んー? どうしたの?』
「実は...」
ジアンは気持ちを引き締めて、女王にこれからの方針について報告するのであった。
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