105-気づき
その頃。
クロペル共和国側の旗艦では、一人の男が狼狽えていた。
その名はアベル・ジオクリフ総督。
「どういうことだ、何故オルダモンは撤退する!?」
「そ、それが....オルダモンからは撤退の支援をせよ.....と!」
「我らを捨て駒に使う気か!」
アベルは怒り狂う。
だが、実際に宙域に取り残されたのはクロペル共和国であり、それを見逃してくれるほどVe’zは優しくないだろう。
「.....だが、妙だ。オルダモン艦隊は大損害を受けたというのに、何故我らには撃ってこない? 取るに足らない相手だとでも思われているのか?」
『つべこべ言わずに撃ってみましょうぜ! 総督!』
「ま、待て!」
その時、艦隊の中の一隻が発砲する。
直後、その船は光線に貫かれて撃沈された。
『あ、アベル様ぁあああ!』
「くっ――――落ち着け! 皆、落ちつけ!!」
アベルの一喝で、数隻は反撃をしなかったものの、艦隊のほとんどの船は、即座に反撃に転じた。
間に合わず、それらも反撃を受け、攻撃を届かせることなく沈んだ。
「総督、我々も!」
「待て! 我々は近づく以外何もしなかったのだ――――つまり、この場は、待機だ!」
アベルの言う通り、艦隊は待機し続ける。
その間も、撃ってしまった艦船は攻撃を受け続け、そして瞬く間に全滅した。
だが、撃たなかったアベルの旗艦を含めた数隻は、砲火に晒されることはなかった。
「一体.....?」
「敵は、我々の相手をする気など、みじんもなかったという事か....」
アベルは素早く理解した。
撃てば反撃されるが、撃たなければ反撃されない。
敵意があっても、害を与えるような行動をしなければ生き残れるのである。
「これは.....あまりに恐ろしい事実だな」
最強の艦船を持つVe’z相手では、生き残るのは難しい。
そんな中、彼らが――――「撃たなかった船は生きて帰そう」などとその身をもって示せば。
命を賭してまでVe’zを撃とうとする艦など一隻もいなくなってしまう。
「これは全体の士気にかかわる問題だ、早急に帰還する」
「分かりました、艦隊の目的地はノーヴォオルダではなく、クロンシスタ....我々の故郷へ向けよ!」
「はっ!!」
クロペル艦隊は、ゲートへと転進する。
そしてそれを、Ve’z艦隊は静かに見守っていた。
『キロマイア皇国艦隊から、なぜ彼らを見逃したのかと苦情が来ております』
「無視しろ。これは僕たちの誓いであり、同時に人間に広める毒でもある」
エリアスは、キロマイアからの苦情を無視した。
その傍で、カサンドラがにこにこ笑っていた。
後で何かしらの損害をキロマイアに与える気なのだ。
「(我々に対し”苦情”等と.....懇願であるべきです)」
と、彼女は考えていたのだった。
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