103-旧き従者
エリスの見つけた、「興味深いもの」。
それは、近寄るとすぐに分かった。
「これは......ノクティラノスか」
砂に半分埋もれていたのは、ノクティラノスの残骸だった。
超巨大なそのボディは、滅んだ都市の中で異様に輝いていた。
「『目覚めよ』......駄目か、完全に動力が死んでいる」
僕は起動コマンドを入力するが、ノクティラノスは起動しない。
予備電力を含め、完全に死んでいるようだ。
「.....中に入るの?」
「少し待て」
僕は周囲をセンサーで確かめた。
生命反応もなし、熱源に異常なし。
「特に問題ないようだ、行こう」
「ええ」
僕たちはノクティラノスの足元付近を調べる。
「かなり旧式だ.....少なくとも五世代ほど前のノクティラノスだな」
「それって、数百万年前のものって事かしら?」
「そうなるな」
エリアスの....僕の両親より前。
そんな時代に放置されたノクティラノスに、僕は不穏なものを感じていた。
古いノクティラノスの仕様書を確認して、入り口を確認する。
「位置が高いな...二人とも、僕の触手に乗れ」
「分かったわ」
「はいっ!」
二人を乗せて、僕はノクティラノスの上部に跳躍した。
足場が悪いので、二人...特にサーシャを下ろすときは慎重になる。
改めて、ノクティラノスが巨大だと実感する。
エリガードはこの99.1倍ほどの大きさであるので、艦船である以上必要な巨大さというものがどういう事か分かる。
「ここが内部へのハッチだが...」
どうしても破壊できそうにないので、僕は内蔵レーザーでハッチの継ぎ目を焼き切る。
「えっ!? エリアス、目からビームが出るの!?」
「あまり使わない機能だからな」
正確には焦点上を起点にして荷電粒子砲のプロセスを行っているだけだ。
僕の眼は人間とは違うので、眩しかったり目が渇くこともない。
ハッチを破壊した僕たちは、内部へと踏み込む。
僕は触手の先から光を出して内部を照らし出す。
「お姉様、エリアス様は目も光るんでしょうか?」
「流石に目は光らないな」
「ありがとうございます!」
サーシャは僕に直接話しかけて来ることはない。
狂っても、恐怖は忘れないのだろう。
「内部に侵食や浸食の兆候はないな、完全に内的要因で死んだようだ」
「奥に行きましょう?」
「ああ」
僕らは奥へと進む。
その先には、中が曇ったカプセルがあった。
「エリス、サーシャ、少し下がれ。有害物質が漏れる可能性がある」
「分かったわ」
僕はカプセルのハッチを破壊する。
中の液体は数万年経っても蒸発しなかったようで、異様な匂いが鼻をつく。
「...どうやら、中身はもうダメのようだ」
「...そう」
遠くから声が聞こえて来た。
「とはいえ、内部メモリーはまだ生きている筈。これはアロウトに持って帰って解析しよう」
流石に義体ではこの巨体を解析するのは効率が悪い。
何より、旧世代型の稼働データも興味深い。
僕は二人と共に地上に降り、タッティラに「解析して欲しいものがある」と送り、ノクティラノスの残骸に手を触れる。
直後、ノクティラノスの残骸はその場から消え去り、後には不自然に広い砂地だけが残った。
「...なんだか、寂しいわね」
「そうか?」
「ずっとここを見守ってたみたいだったから」
「...そうだな」
だが、見つかってしまった以上は仕方がない。
Ve‘zは未知を知ろうとする種族だ。
「帰ろうか?」
「ええ、そうしましょう...サーシャも良いわよね?」
「はいっ!」
こうして、僕達はアロウトへ帰還した。
この滅んだ惑星には、まだまだ僕らの知らない何かが眠っている。
そんな事を、僕は密かに思っていた。
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