102-滅亡惑星デート、再び
それから二日後。
僕とエリスとサーシャは、以前行った滅びた惑星へと遊びに行く事にした。
星の裏側を観察していたエリスが、興味深いものを見つけたそうなので、折角だからとピクニックに行く事になった。
「それにしても、静かな星だ...」
「人がいないから、当たり前でしょ」
「いや、動物も居ないのだが...」
植物以外のあらゆる生命が、この惑星からは消えてしまっている。
それで木々が育つのは不思議な話だが、それで問題なくなるように進化したのだろう。
「お姉様、向こうに何か見えます!」
「あれは...何?」
その時、サーシャが地平線の先を指差して叫ぶ。
そちらを見ると、突起のようなものが見えている。
「あれは恐らく、戦時のための広域レーダーの残骸だろう」
「つまり、それを使わないといけないほど航空戦が盛んだったのかしら?」
「そうとも限らないな...ミサイルの迎撃用だったのかもしれない」
僕たちはあまり平穏ではない話題を口にしながら、都市の跡地を歩く。
その時、エリスがとあるものに目を向けた。
半分埋まった自動販売機だ。
ただし、ソーラー発電のようで、まだ動いている。
「...」
「言っておくが、安全は保証できないぞ。僕が飲む」
「...分かったわ」
僕は自動販売機にクラッキングを仕掛け、内部の制御を掌握して飲み物を選べるようにした。
緑のパッケージの缶を選び、プルタブを開けて中身を飲んだ。
「...凄いな、劣化がほぼない」
「ということは、私も飲めるのね?」
「他がそうでないという保証はない、これでよければ半分は残っているが...」
僕が飲み掛けを渡すと、エリスはそれを飲み干した。
「...なんだか、不思議な味ね」
「そうか?」
「こういうものはあまり飲まなかったから、よく分からないけれど...」
「お姉様、私も飲みたいです!」
その時、サーシャが目を輝かせて願う。
僕はもう一本購入して、中身を少し飲む。
問題ないようだ。
「問題ない、飲め」
「はいっ!」
サーシャは慣れない様子で、缶ジュースを飲み干した。
エリアスはサーシャから缶を受け取り、側のゴミ箱に捨てた。
もう二度と回収されることのないゴミ箱に。
「それにしても...滅んだ惑星って、こういう風景なのね...」
「王国にも、こういうのはないのか?」
「あるけれど、安全が保障されていないし、海賊の拠点であることが多いのよ」
「普通は降下しないわけか」
僕は頷く。
仮に降りたとして、ゆっくり観光する暇もないだろう。
「なら、楽しむ以外の選択肢はないだろうな」
僕は周囲を見渡す。
時刻は正午であり、気温はだんだんと上がり始めていた。
「そろそろ昼食にするか」
「どうするの?」
「日陰を探そう」
僕たちは、都市の跡を歩く。
暑いは暑いが、湿度が低いので日陰に入れば直ぐに冷えるだろう。
「お姉様、あのビルの陰はどうですか!?」
「ええ、いい感じね」
サーシャが再び、ビルの日陰を教えてくれた。
僕たちはそちらへ向かい、植え込みだったであろう場所に腰を下ろす。
そこにあった木々は枯れて風化し、今は影も形もない。
「エリアス、最近疲れてない?」
「僕は疲れない、大丈夫だ」
「そうじゃなくて、精神的にってことよ」
ランチボックスには、ケルビス製のサンドイッチとデザートのドライフルーツ、果実フレーバーの茶が入っていた。
僕が持つ限り重さを気にしなくていいので、詰め放題ではあるが...それはあまりに品がないという事で、こうした軽食となったのだ。
「僕は精神鎮静の処置も受けているから、精神の乱れは長くは続かないんだ」
最初にカサンドラに情報をリンクさせられた時に、精神鎮静化プログラムを仕込まれたのだろう。
僕が動じても、それが後々まで続くことはなかなかない。
「それならいいけど...それって、とても辛い事じゃない?」
「ふと思うことはあるが、僕はVe‘zの最高責任者だ...僕が戸惑っていたら、エクスティラノス達は動けない」
だから、それを悲しいことだとは思わない。
思わないようにはしている。
「お姉様、美味しいです!」
「そう、良かったわね」
「はい!」
エリスも、サーシャの扱いに慣れたようだ。
ヴァンデッタ帝国を滅ぼした責任は僕にあるから、彼女の面倒はしっかりと見ないといけないな。
「...さて、そろそろ行くか」
「ええ」
僕たちは立ち上がり、エリスの見つけた「興味深いもの」へ向けて歩き出すのだった。
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