むしゃくしゃ、むしゃむしゃ、むしやむしや、むちゃむちゃ
★むしゃくしゃ
いつものように家でタバコを吸っていたら親に殴られてむしゃくしゃしていた俺は家を出て商店街のゲーセンに行くことにした。
ゲーセン内を歩いているとバナナに躓き転んでしまった。
何でこんな所にあのバナナが。
バナナも俺につまずかれて驚いているかのようだった。
イライラしていた俺は床のバナナを軽く蹴った。
するとバナナはすくっと立ち上がった。
「何するね」
中国人の馬 菜々は俺の顔面を思いっきりグーパンした。
どうやら彼女はゲーセンでお金を落として拾っている最中だったようだ。
風の噂で彼女の父親は中国マフィアだとか後から聞いて俺はゾッとした。
★むしゃむしゃ
俺の趣味は一人で出掛けることだ。
城巡り、ドライブ、孤独飯、エトセトラ。
で、今はドライブの最中で腹が減ったからコンビニで大人買いして車の中で車中泊仕様にして爆食いしようと思っていた所だった。
ふと、視界に廃墟らしきホテルが目に入った。
外壁は剥がれて緩衝材などが剥き出しになってい雨晒しのホテル。
元々スリルが好きな俺はそこでコンビニで買った飯を食べることにした。廃墟ならばスリルを味わえるし、罪悪感も感じないだろうと思ったからだ。もちろんゴミは持って帰るけどな。
廃墟に足を踏み入れる。
中は薄暗くて埃の匂いと湿気のジメジメしたような臭いが感じられた。廃墟になった時のまま、乱雑に置かれている机や椅子、日本人形などが目に入った。
廊下だった所は床が抜けていたり天井が剥がれたりしていたがそのまま真っ直ぐ進んでいった。
やがて日が差し込み、風が緩やかに入って来る突き当たりの部屋へと到着した。部屋も乱雑ではなく、ここならば外の景色を見ながら廃墟飯を楽しめそうだ。
俺は袋から買ってきた飯や菓子やジュースを取り出した。
さあ、腹一杯食べるぞ。
と、そこで背後から嫌な気配を感じた。
振り返るとそこには落武者の幽霊が……。
「む、武者、武者!」
「飯を、飯を寄越せ!」
俺はコンビニで買って来た飯を武者に投げ付けた。
「美味い。美味い」
武者がムシャムシャと飯を食べ始めた。
俺はその隙に廃墟から這うように逃げ出したのであった。
★むしやむしや
「無視や! 無視や!」
わいはクラスメイトに抗議をした。
最近転校して来たわいだったけど、最初は人がようさん寄ってきとった。
が、しかし急にわいの周りには人が集まらんようになって来た。何でや。わいがなんかしたんか。おいわれ。
切れたわいはだからこうして朝のミーティングで先生のいる前で抗議をしたのだった。
「だって、虫が……」
気の弱そうなクラスメイトの女が絞り出すような声で言った。
話を聞くと、わいが最近毎日捕まえて来た虫を学校に持って来ているのが怖うて皆距離を取っていたんかいな。
原因は虫や……虫や……。
何やわいのせいやったんか。
★むちゃむちゃ
コンビニでバイトをしていたら、覆面を被った人が入って来た。
うわっ、多分強盗だわ。
私は急いで奥へと逃げ込んだ。
「今、覆面を被った強盗らしき男が入店して来たわ」
私は同僚の男に言った。
男だというのは細身の身長と体格で判断して、男が入って来たじゃなくて、入店と言ったのはまだ強盗と決まっていないと言うのと、どんなお客様にも丁寧な口調でいようというプロ意識が混ざっての事である。
「おら、金を出せ!」
ドアの向こうから声が聞こえて来た。
当たって欲しくは無かったけど強盗だった様だ。
「私、行ってくるね」
私は強盗に立ち向かうべく言った。
「無茶! 無茶!」
同僚が私を止めようと強い口調で言う。
「大丈夫。相手は弱そうだし、薄着で武器は隠して無さそうだった。そして何より私にはこれがあるから」
私は私物のバッグから護身用の品を取り出した。護身用というよりは実際は私の趣味であるのだが。
「鞭ゃ……鞭ゃ……」
同僚がポカンとした様子でそう呟いた。
私はドアを開け鞭を相手へと構えた。
「月に変わってお仕置きよ!!」
私は強盗を見事に成敗した。