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四兎を追うものは一兎をも得ず

「ここに四人の女の子がおるじゃろ?本当に好きな女の子を一人選ぶんじゃ」


「先に中身を見てもいいですか?」


「もちろん。ゆっくり選ぶとよいぞ」


「じゃあ左端から・・・」


・春宮愛


「その女の子はとてもよいぞ。ルックスもスタイルもさることながら、勝気な態度を表に出しながらも本当は寂しがり屋なんじゃ。Sっ気があるところに惹かれるのぅ。蹴ってもらえたら喜ぶぞ、わしが」


「博士、ドMじゃん。じゃあ次はその隣を・・・」


・東千夏


「その女の子はいわゆるロリ巨乳というやつじゃ。人懐こいところは小動物を彷彿とさせるのぅ。どの子もみな可愛いが、その子はわしのおすすめじゃ。君が選ばなかったらわしの助手として一生懸命可愛がる所じゃ」


「博士、ロリコンでもあるの?じゃあその隣は?」


・秋野雫


「その女の子はどこかミステリアスな一面を覗かせる女の子じゃ。すべてを見通しているのではないかという鋭い眼光は事態を見守る傍観者のように思えるが、今回はそうではなかったみたいだのぅ。その目を快楽に溺れさせてみたいものじゃ」


「まじもんの変態じゃん。じゃあ最後はこの子を・・・」


・橘美冬


「幼馴染というものは何事にも代えがたい存在じゃ。時としてそれは幾度の垣根を飛び越えてくる。その勢いは恐ろしいもので、正ヒロインの座を奪うのも遅くはないことじゃろう。あー!わしも幼馴染欲しかったー!!!」


「素が出てるよ博士」


「さぁ、好きな子を一人選ぶんじゃ」


「え、選べないよ。だってこんなにみんな魅力的なんだもん」


「ちなみに残った女の子はみんなわしの助手になってもらうことになっている」


「そ、そんな!彼女たちの人権はどうなるんだ!」


「うるせぇ!!!それが嫌なら早く一人選べってんだ!!!一人なら救えるんじゃぞ!!」


「一人じゃない!俺は全員救いたいんだ!!」


「わがまま言うなー!!!!ばかが!!!ぼけ!!!!カス!!!!」


「うわぁ!!幼稚な悪口!!!!」


「はよ選べ!!!」


「ひ、一人だけなんて選べないよー!!!!!」





「ちょっと!もう駅に着くわよ!!」


「はっ!!!」


寝てしまっていたようだ。


「うなされてたわよ、あんた」


「あー・・・うん・・・」


何かひどい夢を見ていた気がする。もはやその内容までは覚えていないが、何か腑に落ちないような恐ろしいことになってしまいそうなそんな夢。もし俺が未来予知能力者だとしたらあれが現実になるかもしれないということだ。そんなわけはないが。


「最寄り駅は次で合ってたわよね?」


都合よく車内アナウンスが響いた。大学の最寄り駅に着くという通知のそれだ。


「うん、そう。やばい、けっこう寝ちゃってたな・・・」


「最近眠れなかったの?すごい顔してたわよ」


「あー、いやそんなことはないんだけど」


程なくして電車が駅に到着する。美冬を連れ立って電車を降りる。


「ここからはどれくらいなの?」


「すぐだよ。音楽を2曲聞き終えるか終えないぐらい」


「なにその微妙に分かりにくい時間は」


電車内でも見ていたが、いつもよりスーツの人間が多いように思う。それは中年サラリーマンのような着古したものではなく、まだ糊付けすら剝がれていないようなきっちりしたそれだ。おそらく美冬と同じ新入生なのだろう。あの中に混ざっていけば美冬も一人で大丈夫なはずだ。


「あのスーツの人たちと一緒に行けばあと大丈夫だと思うよ」


「え?一緒に来てはくれないの?」


途端に涙ぐむような目を見せる美冬。そんな表情をされたら断れないじゃないか。


「行く、行きますよ」


「やった!!」


「でもそこまでだからな」


入学式が終わるまでは待っていられない。来れたんだから帰れるよな。


「え、待っててくれないの・・・?」


すぐに美冬の表情が曇る。いやだからやめろってその顔。


「わかった!わかりました!待ってます!」


「やった!!」


女の涙は武器とはよく言ったものだ。こう、実際に見るとこれに勝てない男性が多いことにも頷ける。大学近くにカフェがあったはずだ。そこで時間を潰そう。


そんな話をしていると、スーツの波が門の中に吸い込まれていくのが前方に見えた。もうここに通って2年が過ぎた。あっという間だったな。


「とうちゃーく」


「じゃあ、行ってくるね!」


「おう、気をつけてな」


手を振りながらその波の中に飲まれていく美冬の後ろ姿が見えなくなってから俺は大学に背を向けた。カフェは確かこっちだったか。


その時、携帯がわずかに震えた。携帯を見ると、西連寺夢子の生放送が10分後に始まるという通知だった。昼間から珍しいな。特に何も予定が無いし、だらだらとコーヒーでも飲みながら生放送を見るか。


その生放送が事態の急変を告げるものになるとは、俺も、おそらく西連寺夢子自身もまだ知らない。

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