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春宮愛と東千夏①

「いやー、助かったよ。鍵友達の家に忘れちゃってさ」


私はそう言いながら玄関で靴を脱いだ。


「そんなことより春宮さん、藤宮さんの部屋でお風呂入ったんですか!?」


先に部屋に上がった千夏ちゃんはそう言いながら私に詰め寄ってきた。


「いや、あれは事故というか。ほら、さっき雨降ってたじゃない?それで濡れちゃって、仕方なく・・・」


「一人暮らしの男の家でお風呂なんて危機管理能力がなってません!!!」


「え、えー・・・」


そこに何か強烈な矛盾感を感じたが、私は気付かないふりをした。


「春宮さん、可愛いんですからそういう軽はずみな行動は今後しちゃだめですからね!」


「はい、すみません」


「よろしいです。それではどうぞ」


千夏ちゃんは満足したようでようやく私を部屋に通してくれた。部屋の間取りはもちろん同じアパート、同じ階なのでほぼ一緒だ。しかし、私の部屋の出窓が向かって左側に付いているのに対して千夏ちゃんの部屋は右側だった。まぁそちらには部屋が無いのだからそこに出窓を付けるのは当然か。


しかし、同じ間取りでもやはり住んでいる人間が違うというだけでこんなに部屋が様変わりするのか。私の部屋はどちらかというと女の子っぽくない。ぬいぐるみや花なんて皆無だし、独立洗面台の他にこのような化粧台など無い。それに、部屋の中央で我が物顔でくつろいでいるドッペルゲンガーも、もちろん、いない。


「千夏ちゃんが二人!?!?」


私は素っ頓狂な声を出して驚いて見せた。


「藤宮さんと似たような反応するんですね・・・この子は夏美。私の、」


「双子の妹です」


部屋に見ず知らずの人間が入ってきたにも関わらず、千夏ちゃんのドッペルゲンガーもとい、双子の妹である夏美ちゃんがそう自己紹介をする。並んでみるとこれまたすごい。ここまで似ている双子を見るのは生まれて初めてではないだろうか。


「千夏ちゃんに双子がいるなんて初めて聞いたよ」


「まぁ、ええ、そうですね」


いつも元気はつらつな千夏ちゃんがそこで急に言い淀んだ。何か理由でもあるんだろうか。そこに私は踏み込んでもいいのだろうか。


私は中学、高校からの経験から必要以上に他人の内側に入り込むのは怖くなっていた。本当の気持ちを知ることが怖かったのだ。もう他人に振り回されるのもいいように扱われるのはもう嫌なんだ。


千夏ちゃんはそんな私を見て、


「春宮さん、ごはんは食べました?」


と、聞いてきた。


「いや、まだだけど・・・」


「それはよかった!ちょうどこれからごはんなんですよ!元気がないときはごはんを食べるのが一番です!」


「ありがとう」


「ぱぱっと作っちゃうのでその辺で適当に座っててください!」


千夏ちゃんはそう言うと、キッチン脇のエプロンを付けた。その豊満な胸のせいでエプロンの丈がだいぶ上がっている。これは、なんというか、いい奥さんになりそうだ。後ろから抱きしめてその胸を揉みしだくという男性の妄想が今は分からんでもない。服を着ているのに非常にいやらしい。


そこでこちらを見ている視線に気付いた。そちらを見ると、夏美ちゃんが半分開いていない目でこちらを見ていた。やばい、いやらしい目で見ている所を見られた。


「な、なに?えーと、な、夏美ちゃん?」


私は先制をとった。後手に回ると先ほどの出来事を追及される気がしたからだ。


「いや、別に」


元気はつらつな千夏ちゃんと違って夏美ちゃんはどちらかというと暗い感じの子だった。陰気ばちばちみたいな感じだ。


ぷいっと手元のスマホに再度視線を落とした夏美ちゃんはそれ以上何も言うことは無かった。セーフか?


千夏ちゃんは料理をしているし、話しかけるのが憚られる。しかし、夏美ちゃんとは会話が続きそうにない。私もスマホ見て時間をつぶすか。


持ってきていた鞄からスマホを取り出そうと手を伸ばしたら急に、


「お姉ちゃんとはどういう関係なんですか」


と夏美ちゃんが口を開いた。伸ばしかけた手を戻し、夏美ちゃんに向き直る。


「関係、ていうか、同じ大学で同じアパートに住む、えーと、知り合い?」


「知り合い!?友達じゃないんですか!?!?」


キッチンから声が飛んでくる。それに驚きつつも、な¥その友達という言葉に嬉しくなる。私だけが思っていたわけじゃなかったんだ。


「うん、そう、友達」


分かればよろしいという顔で千夏ちゃんはまた料理へ戻った。


うんうん、と夏美ちゃんがひとしきり頷いた後、


「じゃあ、藤宮さんとはどんな関係なんですか?」


と聞いてきた。


私と千夏ちゃんの時間が止まった。

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