表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/113

現実逃避の行方

「え!?妹!?」


「そうです。千夏から聞いてなかったんですか?」


さも当たり前のように、その東と瓜二つな女の子、東夏美が言う。確かに東からはそんなこと一言も聞いていない。というか、もしかして俺って東のこと、何も知らないんじゃないか?


「まだまだですね」


見下すような目線で東夏美は言う。悔しいような悲しようなそんな感情が俺を襲った。


「あ!ちょっとなにしてんの夏美!!」


どたどたと大きな足音を立てながらこちらに近寄ってくる音。程なくして東千夏がベランダへと現れた。


「雨降ってきたから洗濯物を取り込んでたの。優しいでしょ」


「それは、ありがとう。嬉しい」


東はふとこちらに目線を移した。


「げっ!!!藤宮さん!!!」


「げってなんだよ」


そしてその目線は東夏美へ。東夏美と俺を交互に見ながら、


「なにこの状況・・・」


と振り絞るように声を漏らした。


東夏美がいる状態でお返しを渡すのが少し気恥ずかしかったのでひとまずその話題に乗ることにした。


「ちょっと息抜きでもしようかと思ってベランダに出たら東がいたから声かけたら違った」


「ベランダに不審者がいたから下着泥棒かと思って通報することにした」


「いやだからそれは誤解だって」


「隣人程度の人が隣のベランダに来るなんて不審者以外の何物でもないかと」


「それは、そうなんだけど・・・」


東夏美と俺の押し問答が続く。状況は圧倒的に東夏美の有利だったが。


「それに、なんでベランダ同士が仕切られてないんです?普通あるでしょ、扉みたいなのが」


「それは・・・」


今さら言わずもがなではあるが、君のお姉さんがやったんだよ、と言ってやろうと思ったが、東をちらりと見ると、こちらに向かって腕で十字を作りながらぶんぶんと首を振っている所を見ると、どうやら東夏美には知られたくないということなのだろう。姉の威厳が全くないじゃないか。東の名誉の為にもここはひとつ嘘でもついてやるか。


「それは、俺がこの間ちょっとぶつかっちゃって壊しちゃったんだよ。今修理の依頼中なんだ」


「そうなんですか」


東は満足そうに頷いている。その顔に少しいらっとしたが、ここは我慢だ。俺の方が年上なわけだし。


「藤宮さんはそういう人には見えないですけどね」


「というと?」


「あらかたお姉ちゃんが突っ走った挙句に壊したんでしょう。しかもそれを大して気にも留めていない。むしろラッキーとすら思っているはずです」


「おっ・・・」


さすが双子だ。完全に当たっている。言い当てられた東は果たしてどんな顔をしているのか。東は鳴らない口笛をひゅーひゅーと鳴らしながら誤魔化していた。東、知ってるか?それはね、誤魔化しきれてないやつだよ、なんなら誤魔化しているのがバレているやつだよ、むしろ自分からそれは正解ですとでも言っているようなもんだよ。


「なんならあちらのお部屋の方も仕切られてないじゃないですか、どういうことなんですか」


東夏美が俺と春宮の部屋の間を指さしながら言う。まぁ確かに片側だけならまだしも両方となれば疑うのは当然だ。


「どうせ、あっちもお姉ちゃんが関係しているんでしょう?」


「うっ・・・」


なぜか俺が責められている気持ちになってどうしようもなく謝りたくなった。俺、関係ないけど。妹にも見破られ下手な誤魔化しをしていた真犯人はというと、足音を立てずに部屋に戻ろうとしていた。おい、なに知らずに逃げようとしてるんだ、謝るならお前だろうと声をかけようとしたとき、


「お姉ちゃん?」


と、冷たい言い方で東を止めた。「ひゃぃっ!」と小さな叫び声にも取れるような返事をした東は部屋に戻れること無く、その場で止まった。少し、おびえているようだ。


「ご、ごめんなさーいっ!!!」


東はしかしそれでも夏美から逃げるために小走りで部屋に戻っていった。それ、「こらー!!」と言いながら夏美も追っていく。ベランダに取り残された俺は静かに、今日はお返し渡せないなと悟った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ