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コミュ障にも友達はいた

翌日。

思い返すと、あれはただ単にスピーカーであのvtuberの動画を流していただけ、と思うようになってきた。肉声だったか、はたまた音質の良いスピーカーを使っていたから明瞭に聞こえたのか、今やもうそれは不明瞭な所となってしまったが、何が一番信じられないかというと隣の部屋にvtuberがいるという事実だった。

いやまぁ趣味は人それぞれだし、それを収入源として生活をしている人もいるくらいだ、どこにいようとなんら不思議ではないが。でも、ネットの中でも現実でも可愛いというのは反則過ぎないか。もし、ほんとにお隣さんがvtuberだったら、という話だけど。


それからはそのvtuberを追いかける日々だった。

そのvtuberの名は西連寺夢子。古家のお嬢様のような名前で確かに表現方法というか、口調がまさに大切に育てられた箱入り娘のような喋り方だ。少しだけ世間に疎くて、でもどこか芯の通った一貫性のある信念、そしてその笑い声は俺を魅了するには十分だった。vtuberは基本的に音声ソフトは使わず、地声で配信する場合が多い。西連寺夢子もおそらくその部類だろう。簡単に言うと、めっちゃ好きな声ってこと。


小鳥遊ミユの件があったにも関わらず、俺は性懲りもなく西連寺夢子の配信を追いかける生活を送ることとなった。


ほどなくして大学の夏休みが終わり、俺の学校生活は再開した。

初日から1限というのはつらすぎる。眠い目をこすりながら講義へ向かうと、後ろから「ようー、久しぶりぃ」と声をかけられた。


「その声は、我が友、李徴子ではないか?」


「なんでだよ。違うよ、坂口だよ」


「なんだよ、ノッてくれよ」


「はいはい、すまんすまん」


こいつは俺と同じ学部の友人、坂口大輔だ。大学に入って最初にできた友人。繰り返すが、俺の数少ない貴重な友人だ。


「ていうか、真っ黒じゃん、海でも行ったんか」


「そりゃ夏だもん、海ぐらい行くさ」


「誘われてないけど」


「お前家から出るの?」


「でねぇ」


「そうだろ」


夏休み前とは違いすぎる坂口の様相にたじろぐ。海とか陽キャの巣窟じゃん。


「お前は夏休み、なにやってたの?」


講義室に入り、適当な席に座る。坂口と夏休みのことについて報告をし合いながら夏の補填をする。坂口はイケメンで頭もよく、そのためかとても話が面白い。そして臨場感がすさまじいため、話を聞いてるだけで自分も行った気になる。イケメンで頭もよくて話が面白いなんて完璧超人過ぎない?神は二物も三物も与える。


「おっと、始まるみたいだぞ」


先生が入ってきて、まもなく講義が始まった。

他の部も合同で行われる講義だったのでかなりの人数がここに集まっている。全体を見渡せる席に位置どっていた俺たちは全体を見渡すことができた。いつもは気にならないが、その中に既視感のある背中があるのを俺は見逃さなかった。


「ねぇ、坂口。あの子なんて名前か知ってる?」


坂口はその容姿から非常にモテる。それはもうイラつくぐらいに。月一ぐらいの頻度で女子から告白されているのはないだろうか。そのおかげで坂口は顔が広い。


「あー、えっと、なんて言ったかな。確か経済学部の子だったと思うけど」


「へぇー、そうなんだ」


「てかお前、やっと現実の女の子に興味持つようになったのか?」


「うるさいなぁ、いいだろ別に」


坂口には俺の趣味を話している。言わずもがなvtuberの追っかけだ。でもそれを馬鹿にすることも無いし、それでも友達を続けてくれているのでこいつは信用に長けるいいやつだ。


「なんだったら仲取り持つけど?」


「いりません」


余談だが、坂口には3年になる彼女がいる。何度も言うようで申し訳ないが、イケメンで頭がよくて話が面白い上に一途とかもうほんとこいつは・・・!(語彙力消失)


講義を終え、坂口と別れる。これから彼女と会うのだそうだ。

俺は少しの休憩の後、次の講義へと向かった。


着席し、西連寺夢子の情報を集めていると、先の講義で見つけた例の背中が俺の目の前に座った。

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