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疑念は確信ではなく白紙へ

勘違いならばそれでいい。たまたま場所が被っただけで全然関係ないのかもしれない。普通に考えればそれしかない。ただ、もし?もしあの中に西連寺夢子がいたら?あの三人の中に西連寺夢子がいたら?推しが身内の中にいたとしたら?


消去法で考えてみよう。

まずは秋野雫。あの子は違う。西連寺夢子を合わせて三人でゲームをした。例えばPCと家庭用ゲーム機で別々にしたらアカウントが二個あることだろうし、操作も別々にできることだろう。でも現実的に考えてFPSを違うコントローラで同時にやることは無理だろう。よって、別人と考えられる。秋野は違う。


次に東千夏だ。ただ、東は違うだろう。ゲームが上手いようには思えないし(失礼)PCも確かノートパソコンだったはずだ。高スペックのノートだったら配信をしながらFPSのゲームを動かすことだってできるとは思うが、そもそも以前に西連寺夢子の生放送を見ている最中に訪問されたことがあった。よって、東も除外。


最後に春宮愛だ。以前のセンシティブ事件も含めて、春宮には疑念があった。はっきり見たわけではないが、窓際に設置されていたPCはデスクトップのそれだったし、西連寺夢子が生放送をしているときにはベランダに出てくることはなかった。偶然だと思うし、勘違いだと思う。でも可能性として一番高いのは春宮だ。


というか俺は例えば本当に春宮が西連寺夢子だったとしてどうするつもりなんだろう。刑事ドラマよろしく、証拠を突き付けて「西連寺夢子はお前だ!」とでも言いたいのだろうか。いやそんなことはない。知り合いにけっこう有名なvtuberがいるとしたらそれはそれは名誉なことだろう。しかもそれが自分の推しだったならなおさらだ。なぜ俺はこんなに躍起になって調べているんだ?俺のこのモチベーションは一体どこからきてる?




最寄り駅に電車が到着し、各自解散。ご存じの通り、俺と春宮と東は同じアパートに住んでいるため、帰り道は一緒だ。流れでそのまま一緒に帰ろうとしたら春宮は「用事がある」と言って別方向へ。東は秋野の家に一緒に行くと言って二人で秋野の家へ。そんなわけで俺は一人で帰ることになった。一泊旅行に誘われたものだからそこそこ好感度が上がっているのではと思っていたが、全然そんなことはなかった。


我が家に到着し、荷解きは後ででいいやとベッドへ寝転ぶ。やはり自分のベッドが一番だ。SNSのタイムラインを遡っていると、件の西連寺夢子が投稿をしていた。


『無事に帰ってきました!お土産話がたくさんあるので今夜配信しますー!』


今夜、生放送があるらしい。何か他に情報を得られるかもしれない。張り付くか。いやだからなんで俺はこんなに正体を掴みたいんだろう。


少しばかり考えると、その正体は優越感だと気付いた。他のリスナーへマウントをとりたいんだ。お前らは知らないだろう、でも俺は知ってるぞ、羨ましいだろう、そう言いたいんだ俺はきっと。なんかちょっと嫌な奴になってるな俺。少し自重したほうがいいのかもしれない。


否定する気はないんだ俺は。趣味なんて人それぞれだし、自分の得意分野であればそれを活かすのに配信者は最適だろう。でもなんだこの言葉にできないモヤモヤは。俺は一体、どうしてしまったんだ。


こんな気持ちのままでは春宮の友達も、西連寺夢子の追っかけも両方することなんてできない。やめよう、もう考えるのは。慣れない旅で疲れてるんだ。少し休もう。


次に目を開けるともう辺りは真っ暗で、時計を見ると夜の十時を少し回った頃だった。携帯には西連寺夢子の生放送が始まったとの通知があり、動画サイトへ飛ぶと西連寺夢子はまだ生放送をしていた。動画を見るでもなく、BGM代わりにそれを流しながら開けっ放しにしていたカーテンを閉めようと窓際に近寄ったところ、春宮がベランダに立っていた。


え?


春宮がベランダに立っていた?


背後からは西連寺夢子が談笑混じりに喋り続けている。最初の方で説明をしていたと思うが、vtuberというものはカメラで人間の動きを読み取り、画面上の3Dないしは2Dのキャラクターを動かす仕組みだ。急いでスマホの画面を確認したが、西連寺夢子はまた可愛らしい動きでリスナーを楽しませている。窓際へ戻ると、春宮はまだそこにいた。


あ、あれ?


俺はもう頭が真っ白だった。

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