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コミュ障はできれば部屋から出たくない

「冬を満喫したい!一生、冬休みがいい!」


例のごとく、部屋に乗り込んできた東は開口一番そう言った。

なんかこいつ普通に俺の部屋にいるんだけど。


「なにかしたいことあるの?」


仕方なくその話に付き合う。


「やっぱり冬と言えばウィンタースポーツでしょ!」


東は身を乗り出し、瞳をキラキラとさせながら俺に詰め寄った。

ウィンタースポーツか・・・。


「それに確か藤宮さんって東北の出身ですよね?得意なんじゃないですか?」


繰り返すようだが確かに俺は東北の、さらには北東北の出身であるのでウィンタースポーツの場所には困らなかった。


ただ、


「・・・んだよ」


「え?」


「滑れないんだよ・・・」


「あっ・・・」


ここで俺の脳裏に嫌な思い出が蘇る。


小中学校では、冬のある日にスキー教室なるものが開かれる。平日丸々一日スキー三昧という好きな人には待ってましたと言わんばかりのイベントだ。そしてそれはよっぽどの体調不良が無ければ強制参加だったのでそういう日に限って万全な体調の俺はことごとくスキー板というものに翻弄された。スキー板を八の字にしながら滑るという教えの元、実践したのだがなぜかスキー板は言うことを聞かず真っすぐになるばかり。上がるスピード、頬に当たる雪、遠くから聞こえる教師の怒号、焦る俺、なんとか止めようと突き刺したスティックはスピードに負けて後方へ吹っ飛び、俺はその反動で転倒。骨折まではしなくて済んだが、その日はロッジでスキーを楽しむ同級生の姿を見ながら足の痛みをこらえていただけだった。俺にとってのスキーとは苦い思い出なのだ。


「なるほど、そうだったんですね」


「人の回想を勝手に見るなよ」


「まぁでもあれから何年も経ったわけですし、もう大丈夫なんじゃないですか?」


「そうかな」


確かに苦い思い出ではある。なんならトラウマでさえある。しかし、今なのか?過去のトラウマを払拭するべきは今なのか?過去を、乗り越えるのは今なのか?もう羨ましげにスキー場を見なくてもいいのか?


「じゃあ、行くか」


「それでこそ藤宮さん!じゃあメンツ集めですね!!」


てっきり東のことだから二人で行こうみたいな話かと思ったのに、自ら多人数を申し入れるとは。何か裏があるのか?でも俺にとっては好都合だったので特に言及はしないでおこう。


「さっそく行きますか!」


「え、どこに?」


「まぁまぁ、ついてきてください」


促されるままに連れてこられたのは東の部屋。なぜ?


「どうぞどうぞ」


「おじゃまします」と言って部屋に入るとそこには秋野がちょこんと座っていた。

ていうか友達放って俺の部屋に来てたのかよ。


「今回は雫ちゃんが言い出したんですよ。スキーしたくない?って」


珍しいこともあるものだ。ゲームが達人級に上手いのは知っているが、スポーツもするのか。まさかスポーツも達人級に上手いわけじゃあるまいな。


「雫ちゃん、スキーしたことないんですって」


その言葉に秋野がこくんと頷いた。

ほっと胸を撫でおろす。いやでもまだ油断するな。スキーはしたことないけどスノボはしこたま上手かったとかそんなオチだろ。俺はもう騙されないぞ。


「そんなわけでこれでとりあえず三人ですね。あともう一人誘いたい人がいます」


「だれ?」


「じゃあ、また行きますよ」


東はまた俺を連れ立って部屋を出た。俺の部屋を通り過ぎ、奥の部屋へ。まさか。

というかまた秋野は放っておかれてますけどいいんですか君ら。


呼び鈴を押す。


「春宮さーん、いますかー?スキーしに行きませんかー?」


「急すぎるだろ」


「本題は早い方がいいかと」


「それにしても早すぎる」


室内をこちらに向かって歩いてくる音。鍵を回す音がして春宮が現れた。


「急になんなの」


現れた春宮は上下黒のスウェットで髪はボサボサ、そしておそらくスッピンのようだった。スッピンでもかわいいんだなと思いながら見ていると、目が合い、一時停止。数秒の後、扉は勢いよく閉まり、中から「藤宮もいるんだったら最初からそう言って!」と声が聞こえた。


「春宮さん、寝起きでしたね」


「そう、だね」


「タイミング悪かったかな。でも藤宮さんは春宮さんがいた方がよいですもんね?」


「え、なにが?」


「さぁ?」


これ完全にバレてね?


東はさらに扉の奥の春宮へ声を投げる。


「また後で来ますから準備しといてくださいねー!」


そしてさっさと部屋へ戻ってしまった。

その背中を追いかけながら、


「そういえば荷物とか何がいるんだろ、ウェアとか板は現地でレンタルするとしても、こっちから持ってくものってあんまり無いよね。応急処置用の薬ぐらい?」


と話しかけた。


「お母さんじゃないんだからそれもいらないです。そもそもスキー場にありますし。それに持ち物がないわけないじゃないですか。大荷物ですよ」


「え?なんで?」


「あれ、言ってませんでしたっけ。一泊しますよ」


「・・・え?」


「一泊、します」


え?

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