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アオハルなんてもんじゃねぇよ

街は赤と緑と白で埋め尽くされていた。

いつもの俺だったら「くそが、浮かれやがって」と恨めしい顔でその光景を眺めたものだが、今日の俺は一味違う。


なぜなら、女の子とデートだからである。


時は過ぎ、波乱待ち受けるクリスマス当日。

午後六時に俺は駅前で東を待っていた。

どうせ、隣に住んでいるのだから一緒に出ればいいのでは、と提案したが、


「待ち合わせをするのがいいんじゃないですか!」


と、東に一蹴された。

言わんことはわからんでもないが、時短になるかと思ったんだよ。


近くの自販機で購入したホットコーヒーを片手に空を仰ぎ見ると、ライトアップのおかげかいつもよりも明るいような気がした。寒さなのか緊張なのか、手が震えている。ホットコーヒーを両手で包み込んでそれを止めようとする。というか、よく考えると、


「女の子との初デートがクリスマスってそれどうなの」


何度も繰り返すようで申し訳ないが、俺は今までクリスマスに出かけることなどなかった。ましてや彼女がいたことすら無かったのだ。クリスマスというものは大切な人と一緒に過ごすものなのであって、まだ付き合っても無い男女が一緒に出かけていいものなのか。いやでもあれか?クリスマスで告白、なんてものがありえるのか?いやもうわからん。なにもわからん。世のカップル達はどうやって付き合ってるんだ。大学の急造カップルなんてのはあれだろ、クリスマスを一人で過ごさないためにできてるんだろう?じゃあ今この状態はいったいなんなんだ。俺と東の関係とはいったい、なんなんだ。


だめだ、考えれば考えるほど分からない。そうだ、もしかしてこれドッキリなんじゃないか?毎年一人でさみしく過ごしている俺への坂口からのちょっとしたプレゼントなんだ。そうだよ、もうこの『駅で女の子を待つ』というシチュエーションがもうプレゼントだったんだ。粋なことをしてくれるぜ。プレゼントの内容としては、友達を辞めるレベルのものだが、今は許してやるとしよう。


もう今回のカラクリについては分かったことだし、今日はこの辺りで帰るとしよう。そして明日、坂口を一発殴ろう。それで今回のことはチャラだ。


飲み終わった缶コーヒーをゴミ箱に捨てる。ようし、帰って夢子の生放送でも見ようかなぁと帰路への道を歩き出そうとした時、街灯の下から見覚えのある人物が現れた。


「お、おまたせしました」


白いコートに紺色のマフラー、長いブーツに真っ黒のタイツという出で立ちのその子はいつもの元気いっぱいな態度ではなく、少し恥ずかしそうに俯きながらそう話した。


え、かわいっ。


めいいっぱいおしゃれをして来てくれたのだろう。東は気恥ずかしそうに、


「気合入れてメイクして、服を選んでいたらちょっと遅れちゃいました」


てへへ、という感じではにかむのでした。


「お、う、う、うん」


なんだそれ。

こういうときに「かわいいよ」という気の利いた言葉すら言えんのか。ほんとに自分のコミュ障具合が嫌になる。


「それじゃあ、さっそく行きましょうか」


いつものはつらつな雰囲気はなく、むしろ女の子らしさ全開の東のギャップにドギマギしながら歩き出す。


「寒いですね」


「う、うん、そうだね」


「もしかして緊張しちゃってます?」


「い、いいいいいや全然そんなことないし?」


「嘘ばっかり。手が震えてますよ」


「え、うそ、まじで?」


さっきのコーヒーで手の震えは止まったはず。コートに突っ込んでいた手を急いで取り出すも、特に震えているわけではなかった。というかよく考えたらコートに突っ込んでるんだから震えなんて分からなくない?


顔の前に出した手を東が両手で掴む。


「えへっ、うそです」


東の手が、東の体温が俺の手を通して伝わってくる。


「こうすると、あったかいですよね」


俺は死んだ。

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