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クリスマスは誕生日ってだけで終わらせておけ

あの一堂に会した食事会だったが、まさに地獄と呼ぶにふさわしいものだった。

適当に相槌や返答を返すが特に何もしゃべらない春宮、そんなことは露知らず秋野と談笑をしている東、東の話を楽しそうに聞く秋野、坂コンビは直近の授業の話、そしてそれに加われずに一人で食べ続ける俺、少人数だとわりと喋るが人数が多くなると途端に喋らなくなる典型的なコミュ障の俺、そして春宮がいるせいで倍、居心地の悪さを感じる俺。


ほぼ先日の飲み会の時と同じメンツだが、その時よりも関係性は悪くなっていた。まぁ、俺だけなんですけど。


「ごちそうさま。じゃあ私、講義の準備があるから」


そう言っていち早く春宮は席を立った。

傍から見るとあまり感じは良くなかったが、それよりもその優雅な立ち振る舞いに見とれてしまった。いや待て、俺はもう振られたんだ。もう彼女を目で追うな。


「おう、じゃあまた」


坂口がそれに手を挙げて応える。


俺はそこでようやく一息つくことができた。気まずいにも程がある。


「藤宮さんはクリスマス、私と出かけますもんね?」


「なんでもう決定事項なんだよ。しかも初耳だよ」


東が身を乗り出して俺に話しかけてくる。


「それに今はそんな気分になれないしな」


東のことは嫌いじゃない。妹系巨乳とか刺さる人にはそれはもう刺さることだろう。でも俺は失恋間近で今はほんとにそんな気分になれなかった。今すぐに家に帰って布団に潜り込み、ひとしきり声を殺して泣いた後はまたvtuberを見て癒されるんだ。


「なにかあったんですかぁ?」


東がさらに顔を覗き込んでくる。

まって、そんな前かがみになると、胸元が。


「なにもない!大丈夫!気にしないで!」


俺は必死に目を逸らしながら、


「そ、そうだ!俺クリスマスは坂口とバイトの約束してるんだよ!なぁ坂口!?」


「え?いや俺普通に彼女と過ごすけど」


親友に裏切られた瞬間だった。

嘘でもいいから話を合わせてくれよ。


「ふふふ、藤宮さん必死ですね?」


「な、なんだよ」


「そんなに私と出かけたくないんですか?」


「そ、そんなことは」


「それにすでに藤宮さんがその日フリーなことはそこのお二人に調査済みです!観念してください!」


「うぐっ」


二人を顧みると、目が合ったと思った瞬間には逸らされ、「あーそろそろ雪が降るかなぁ」とか室内の天井を見ながら言ってやがった。天井を見て天気の話をするな。


「いやでも他の人と過ごすかもしれないだろ!」


「え?藤宮さん、このお二人以外に友達いるんですか?」


例えるなら、そう、金づちで頭を殴られたようなそんな衝撃が俺を襲った。くそほどバレとるやん。


「いえ、いません・・・」


「では、そういうことで!何があったかは聞きません。でもそういうときほど、遊んだほうがいいんですよ。私は藤宮さんと過ごせて幸せだし、藤宮さんは気が紛れて気分転換ができるし、win-winじゃないですか!そうしましょう!」


そういえば東は俺のことが好きだったんだっけ。

自分のことばかりで最近はそんなこと忘れていた。この子はいい子だし、おっぱいも大きいし(小声)、面倒見もよさそうだし、なにより可愛いし、春宮に振られたことだし、この子と付き合ってもよさそうだなぁ。


「ちょ、ちょっと!どこ見てるんですか!」


ゲスな考えを脳内で繰り広げていると、視線は図らずともその豊満なものに釘付けとなっていたらしい。慌てて目線を逸らす。


「いいなぁ、藤宮は今年は女の子と過ごすのかぁ」


箸をペン回しのようにくるくる回しながら赤坂がため息を漏らす。「いいなぁ」となぜかもう一度、繰り返した。ところで、そういえば先日女の子と手を繋いでいた赤坂の姿を思い出す。あの時は怒りをなんとか鎮めることができたが、今それを思い出してしまったせいでまた怒りが芽生えてきた。


「でも赤坂、彼女いるじゃん。見たよこの間」


女々しいとは思ったが、少し嫌味な言い方になってしまった。いいよ、こちとら裏切られてるんだもん、それぐらいはいいだろ。


「え?いつのこと?」


「先週ぐらいだったと思う。放課後、そこの角で見た」


「んー?・・・あー!あれね、あれは妹だよ」


「え?」


「すごいお兄ちゃん子でさ、歳も離れてるせいですごい甘えてくるんだよね。大学にも迎えにくるし。いい子なんだ、ほんと」


言い終わった赤坂の顔が少し曇ったような気がした。

でもそんなのことより俺は、


「赤坂、悪い。俺にドロップキックしてくれないか」


自分に罰を与えることにした。ごめん赤坂、誤解だった。


「なんでドロップキック・・・」


ゲラゲラと俺と赤坂の間に座っている坂口が笑う。


「これは俺のけじめなんだ」


「けじめでもドロップキックは無くね?」


つられて赤坂も笑う。


「とりあえずそんなわけなのでクリスマス、空けておいてくださいね!また!」


そこで東と秋野も席を立つ。


「はー、笑った。俺たちも行くか」


続けて三人そろって、席を立つ。


思わぬところからクリスマスの予定が決まってしまった。どうなるか、まったく想像はつかないけど、波乱は覚悟しておいた方がいいかもしれない。

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