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コミュ障は多人数だと喋らない

「おい、藤宮!聞いてんのか?」


「んえ?」


「おいおい大丈夫かよ」


坂口が何かを喋っている。しかし、その声は耳に入らない。

人生初の告白。人生初の失恋。そのダメージは想像以上に俺を苦しめていた。


「坂口、知ってるか。宇宙って広いんだぜ」


「急にどうした?」


「ウチュウトコウシンヲハジメマス。ピピーっ、ガガーっ」


「まじでどうした」


こんな時こそ察しの良さを発揮しろよ。どうでもいいときにだけ発揮してるんじゃないよ。しかも間違ってたし。いやある意味当たっていたが。


「知ってるか?新型ウィルスも頻繁に起こる地震も実は人為的なんだぜ」


「急に時事ネタを挟むなよ、しかもそれ陰謀論だし。根も葉もない噂だし。使えるかどうか微妙なラインの話をするな」


「うへ、うへへへへへ」


「本格的にだめだこいつ」


頭を抱える坂口を尻目に、これは好機とめちゃくちゃに頭の悪い人の真似をする。そろそろ飽きてきたので坂口に向き直る。失恋したことを伝えようと口を開いたら奥で春宮がトレイにうどんを乗せている姿が見えた。俺はこの世のものとは思えない速さで視線を逸らした。


「急に機敏」


「うるさい、今は話しかけるな」


「元に戻ったのか!」


「こちとら最初から正常だ」


「おー!よかったなー!」


坂口は急に立ち上がったかと思ったら俺の手をとり、ぶんぶんと振りまわした。


「お、おい、やめろって」


「あはははは、よかったよかった」


坂口なりに心配してくれてたのだろう。その気持ちは非常に嬉しいのだが。ちょっとこれは目につきすぎる。今はいつも以上に目立ちたくないのに。


「藤宮さーん!なにやってんですかー!」


遠くから走り寄ってくる音。振り回されながら見ると、そこには東の姿。おいおいこの状況はやばくないか?


「あ!千夏ちゃんじゃん!一緒にやるか!?」


「おい、ちょっと、巻き込むなよ」


振り回されているのでしどろもどろである。


「前にお前のことで相談された以来だムグッ」


「それは言っちゃだめですってば!!!」


東が坂口の口を抑える。相談されていたんですね。


「もうほぼ一緒に住んでるようなものなんだからいいだろ!」


東の手から逃れた坂口がまた余計なことを口走る。


「ど、同棲だなんて、そんな。坂口さんったら」


頬を赤らめる東。それを見て笑う坂口。顔面蒼白の俺。


「いや一緒に住んでないから!」


できるだけ大声で言う。声が、届くように。


東の後ろからひょこっと秋野も顔を出す。いつも一緒にいるなこの子ら。

俺と目が合い、ぺこっとお辞儀をする。癒された。


「はいはい、その辺にして。せっかく食堂にいるんだから飯でも食おうぜ」


いつの間にいたのか、赤坂がそう宥める。例の一件以降話していなかったので少し緊張する。


「お、赤坂も飯か?」


「そうそう。だからここにいるってわけうぇい」


「強引にうぇいしなくても」


「私たちもご飯食べよ!」


「そう、だね」


俺を先頭に坂口赤坂の坂コンビと食券を買いに行く。

なんか一緒に飯食う流れになってない?


「なんか一緒に飯食う流れになってない?」


頭で考えていたはずが口からも出た。


「みんなで食う方が楽しいだろ」


当然だろみたいな顔で坂口が言う。それに苦虫を嚙み潰したような顔を返し、食堂のおばちゃんから差し出されたトレイを受け取る。今日はカツ丼だ。


席に戻ると、弁当を持参してきているはずの東が(以前聞いた)席にいないことに不穏な気配を感じる。ご機嫌な顔で持参してきた弁当を広げる秋野に、「東さんは?」と聞くと、ふるふると首を横に振るだけだった。どこいったあいつ。


同じく食事を受け取った坂コンビも席に戻ってくる。

六人掛けのテーブルに五人で座る形だ。


「あれ、千夏ちゃんは?」


「いや分からん。俺が来た時にはもういなかった」


「持ち物だけはあるうぇいね」


「ずっと思ってたけどうぇいの使い方おかしくない?」


「トイレかなんかだろ。すぐ戻ってくるだろうし、待ってようぜ」


「そうだね」


「うぇいうぇい」


「相槌にも使えるんだねそれ」


と言ったところで東が戻ってきた。


「ごめんごめんお待たせー」


しかし、東は一人じゃなかった。


「一人でさみしそうに食べてたから連れてきた!」


東が手を引くその人は、


「お、お久しぶりです」


春宮その人だった。


「次回!(個人的に)地獄の食事編!こんな所で飯が食えるかいっ!」


「藤宮、何言ってんだ?」


「あ?次回予告だ」

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