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基本的にコミュ障は疑心暗鬼

それからの俺はというと、まぁそれはそれは疑心暗鬼であった。

俺の本名がバレていたということは俺の知り合いである可能性は非常に高い。SNSの名前も同じくトンガリなのでそこからバレたのか?いやでも疑念は持ったとしても本人から名乗り出ない以上、同一人物と紐づけるのは難しいだろうし。個人情報などSNSで書いたこともない。ふむ、わからん。


周りを伺いながら大学へ行くその姿はまさに挙動不審のそれだっただろう。

うーんうーんと頭を悩ませながら、でも絶対に結論が出ないだろう脳内会議は思わぬ人物によりあっけなく終幕を迎えた。


「トンガリさん?」


今にも消え入りそうな女の子の声だった。

振り向くとそこには、え、だれだ。何この子知らない。


片目を長い前髪で隠したその子はもじもじとしながらそこに立っていた。

身長もそこまで高くなく、ダッフルコートの前で両指を交差させながらこちらをちらちらと見やっている。よく見ると頬も心なしか赤らんでいるように思う。一瞬、東に似ているなと思ったが、この子は眼鏡っこだった。ん?東?


『わたしのこと、覚えていますか?』


差し出されたスマホにそう文字が羅列してあった。もしかしたらあまり話すのが得意な子ではないのかもしれない。でもこんな子知り合いにいたっけなぁ。


その女の子はスマホにまた文字を打ち込む。


『千夏の友達の秋野雫といいます』


「あー!この間、東さんと一緒にいた子だ!」


学食の場の出来事である。覚えてない方はぜひ読み返してもらいたい。


俺の記憶は確かだったようだ。秋野さんは顔をぱぁっと明るくさせ、頭をぶんぶんぶんと縦に振った。ヴィジュアル系バンドのヘドバンを彷彿とさせたぐらいだ。


たんたんたんと秋野さんはスマホに文字を打ち込む。


『覚えててくださったのですね!ありがとうございます!』


よほど嬉しかったのだろう。そこには可愛らしい絵文字が所狭しと散りばめされている。


「ところで、どうして俺がトンガリだと分かったの?」


繰り返すが、俺はネットリテラシーが高い方だと自負している。例えSNSのフォロワーだったとしても俺に結び付くことはないはずだが。


秋野さんは、はっ!と驚いた顔を見せ、すぐにスマホに文字を打ち込む。


『この間、ユメユメの配信で一緒にゲームしましたよね?』


ユメユメというのは西連寺夢子の愛称だ。ちなみにだが、ファンのことは夢人ユメビトと呼ばれる。私の配信を見てくれている間は色んなことを忘れてそれこそ夢見心地な気分になってほしいという西連寺夢子の願いから名づけられたものだ。


「え、したっけ?」


俺があの時にゲームをしたのは配信者である西連寺夢子と確かレインという・・・あ。


『わたしがレインです』


あのFPS激ウマ女の子か。


「あの時はほんとうにありがとうございました。おかげで優勝させていただいて」


『いえ、あれはほんとにたまたまですよ』


「でもあれだけでなんで俺がトンガリだと?」


『わたし、耳だけはいいんです!』


どやぁと胸を張って見せるレインさん改め、秋野さん。

これは後に分かることだが、レインという名前は、下の名前の雫→雨→レインという連想から名づけたそうだ。


ただ、果たして耳がいいというだけで済ませられる問題だろうか。

秋野さんと出くわしたのは、あの学食の時だけだ。声を覚えていたとしても生声とボイスチャットを通じての声はいくらか違うと思うのだが。

でも確かにFPSが上手い人は耳が非常に良いということを聞いたことがある。話の筋は合っているような気もするが、だからといって確信をもって話しかけてきたのだと思うし、まだほかにも事由があるはずだ。それを聞こうとして声を出そうとした時、秋野さんから再度スマホを提示された。


『まぁほぼ勘でしたけどね!違ったら逃げようと思ってました!』


勘だった。

全然確信してなかった。なんやねん。


『わたし、あのゲーム一緒にやってくれる友達がいなくて。ずっと一人で野良と遊んでたんですよね』


リズミカルにスマホをタップする秋野さん。


『だからあの時、友達の先輩でも知っている人と遊べてすごく楽しかったんです』


次の提示を待っていると、いきなり秋野さんの手が止まった。どうしたのかと待っているとちらちらとまたこちらを窺うようにしている。


意を決したように文字を打ち込み、おずおずと画面をこちらに見せた。


『また一緒に遊んでくれませんか。できたらお友達になってくれませんか?』


顔を俯けながら秋野さんは返事を待っている。


「もちろん!俺友達全然いないから俺の方からお願いしたいぐらいだよ!」


秋野さんはぱっと顔を上げ、その場でくるくると回った。嬉しさを表しているのだろかわいい。


『じゃあ連絡先交換しましょう!じゃんじゃん呼んでいいですか!』


「だいたい暇してるから連絡くれれば行くよ」


『わーい!ありがとうございます!』


その後、少しやりとりをして秋野さんと別れた。


まさかあんなにかわいくて大人しい子があんなにもスパルタだなんて今の俺には知る由もなかった。

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