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FPSは3日サボると弱くなる

もちろん、冗談である。

実際の俺は確かに怒り狂い、般若のような形相でそれを眺めていたが、さすがにドロップキックはやりすぎだと思ったからだ。幸いなことにそういう良心を未だ持っていたという事実に心底安堵した。俺はその赤坂の姿を見送りながらまた帰路についた。


夕食を終え、PCの前に座る。

西連寺夢子がまたしても生放送を行っている。いやもうこの忙しさは社会人のそれだ。俺も動画で収入を得られれば、と頭をよぎったが、そもそもコミュ障が服を着て歩いているようなものだ、たとえ生放送に踏み切ったとしても一言もしゃべることもできず、しゃべったかと思いきやそれはどもりすぎて聞き取れるものでもなく、黙って終了のボタンを押すのだろう。そして、夜は枕を濡らすのだ。


西連寺夢子の生放送を開く。最近は東の奇襲が多かったこともあり、vtuberを追うことができなくなっていた。今回の生放送も通知で開催は知っていたが、最初から張り付いて見るという熱量も無くしていた。追いかける日々は今では楽しかったと思う。毎日それのために生きていると言っても過言ではなかった。


『推しは推せるときに推せ』


いつかのSNSで見かけた言葉を思い出す。vtuberといっても中身は人間だ。いつどこでどうなるか、それは誰も知らない。アニメやドラマにしたってそうだ。誰も保証できない。推したいときに推しがいなければそれはもう本末転倒である。


西連寺夢子はまたもや一人称バトルロイヤルのゲームをしていた。その左上には参加大募集との文字が。なるほど、視聴者参加型企画か。


このゲームは3人で1チームを組み、合計20チーム60人でマップ上に点在しているアイテムを拾いながら最後の1チームになるまで戦うゲームだ。西連寺夢子ともう2人を視聴者から募って優勝を目指すという企画なのだろう。推しと一緒にゲームができるなんて視聴者にとっては夢のような企画だ。同接数も6000人を超えている。これは競争率が激しそうだ。


ふいに魔が差したんだ。今やもうあの時ほどの気持ちは無い。ただなんとなくなんだ。入れればいいなってくらい軽い気持ちだったんだ。画面内での戦闘が終了し、夢子が新たなメンバーを募る。暗号化された部屋番号を公開し、先着順で2人を決める。なぜか分からないが、俺はそこに入ってしまった。


「トンガリさんとレインさんかな?よろしくねー!」


トンガリとはまごうことなき俺のことだ。名前を呼ばれて一気に心臓が高鳴る。あわててヘッドフォンをつけてボイスチャットを起動する。このゲームは逐一、メンバーとの連携が肝なのだ。タイムラグがほぼ無いといっていいボイスチャットを繋ぐことで優勝の可能性は高まる。


「よ、よろしくお願いします」


言葉が詰まらないようにゆっくりと話した。対面に人がいるよりはこの状況はマシだが、通話をしているのはあの西連寺夢子だ。どもらないことを第一とした。


「レインです、よろしくお願いします」


もう一人は女の子のようだった。聞き覚えのあるような声の気もしたが、まぁ気のせいだろう。


「じゃあもう一度説明するね!ボイスチャットは繋ぐけどトンガリさんとレインさんの声は動画には乗らないようにしています!なので気にせずどんどん喋ってくださいねっ!」


そう言われてディスプレイに視線を戻す。確かにそこから聞こえてくる声は夢子だけのものだ。


「今回も優勝目指してがんばりましょーっ!」


「お、おー!」




結果から言ってしまうと、俺たちは見事優勝した。

夢子はさすがに実況者というだけあって上手かった。中距離用の武器で確実に相手を撃ち抜くその姿に俺は引っ張られ続けた。気付けば夢子は5キル3アシストの好結果だった。一方、俺はというと残り3チームという所でスナイパーに撃たれ、そのまま死亡となり結果は1キル0アシスト。まぁ1キルでもできたんだから足を引っ張ったというほどでもないだろう。そしてレインさんはというと。


「レインさんすごいですねっ!私こんなに上手な方と遊んだのは初めてですっ!」


18キル6アシストという訳の分からない戦闘ぶりを見せていた。

彼女はスナイパーとショットガンという組み合わせで敵陣に乗り込んでは、人をなぎ倒していった。スナイパーももはや近距離で撃つことによりショットガンと化していた。夢子に引っ張られたと言ったが、先頭はレインさんだった。もはや独壇場と呼ぶにふさわしい奮闘だった。スゴクコワカッタ。


「いえ、久しぶりだったのであまり敵を倒せませんでした。今回はほんとに運が良かったです」


アマリテキヲタオセマセンデシタ?

俺のリザルト画面見た?喧嘩売ってる?


謙虚な物言いにコメント欄は非常に盛り上がっている。俺?蚊帳の外。


「お二方、本当にありがとうございました!また都合が合ったら遊んでくださいねっ!またねぇ!」


その夢子の言葉でボイスチャットは切れた。ため息をつきながら、ヘッドフォンを外そうとすると、


「トンガリさん」


というレインさんの声が聞こえた。


「あ、はい、なんでしょう?」


その声に俺は答える。


「世間って狭いと思いませんか?」


「え、どういうこと?」


「また会いましょう、トンガリさん。いえ、藤宮柚季、さん?」


ぶつり。ボイスチャットが切れる。


・・・


え!なにこわいだれ!!!!!!!!

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