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コミュ障は安く見られたくないから一度目の誘いは断る

車でおよそ二時間。数回の休憩を挟みつつ、目的地に到着した。そこはスパリゾートと銘打っていて近くには川も流れているし、温泉もあるらしい。子供用の小さいアスレチックだったり、雨天でもBBQができるような東屋まで。ほんとになにもいらねぇじゃねぇか。どうすんだよこの大荷物。


「じゃあちょうどお昼時だし、部屋に荷物を運んだら昼食としますか」


運転席から降りた坂口がそう言う。皆、口々にそれに賛同した。


「運転お疲れ、大変だったでしょ」


俺はコンビニで購入したコーヒーを、坂口に差し出しながら労った。


「まぁ、こんなに運転するのは初めてだったからな。たくさん人乗せてたし、無事に着いてよかった」


手渡されたコーヒーを一飲みで飲み干してようやく一息ついたようだった。


「荷物持つよ」


「でもお前、人一倍荷物多いじゃん」


「これだけ荷物があれば少し増えた所で何も変わらねぇよ」


「でもさすがに寝袋とかはいらないから車に置いていったら?」


「それは確かに言える」


衣類しか入っていないリュックと坂口のリュックを持ち、二人で部屋に向かった。まぁ、俺は赤坂と同じ部屋だから正確には違う部屋だが。


各々、部屋に荷物を置いてリビングに揃う。運転していた坂口はもちろんだが、同乗していた面々も少し疲れの色があるようだ。車にただ乗っているというのも疲れるものだよな。分かる分かる。ただ、その中でもなぜかひと際元気のある奴がいた。


「さー、ご飯にしますよー!」


千夏ちゃんだった。いつものことではある。


「皆さんお疲れのようですので、不肖ながらわたくしめがお昼ご飯の担当を仰せつかりましょう!!!」


腕まくりをしながら演説のように喋る千夏ちゃんは正直、助かった。俺もあまり動きたくなかったからだ。体力が微塵もない。


「私、手伝うよ」


春宮が手を挙げ、キッチンへ向かう千夏ちゃんを追いかける。ちなみに秋野はソファに深く座り込み、動く気配は一切ない。分かる。分かるぞ。インドアだもんな、我ら。


「もう温泉に入りたい。ベッドに入って安らかに眠りたい」


こんなに人数がいるから一言も喋ることはないだろうなと思っていた秋野が誰に言うでもなくそう呟いた。キャラ設定どこいった。


備え付けのテレビで適当な番組を眺めていると、ほどなくして昼食が到着した。


「夜はBBQですからね、お昼は軽めにしました!」


そう言いながらテーブルの上に乗せられた皿の上にはそれぞれ中身の違うサンドイッチが乗っていた。卵焼きとレタス、ベーコン、ウィンナーと、半分に切られた断面からその中身が見える。


「千夏ちゃん、ほとんど自分でやっちゃって私ほとんど役立たずだったよー」


もう一枚の皿を手に春宮も合流した。


「ありがとう千夏ちゃん、春宮もありがとう」


俺は皿を受け取りながらお礼を言った。


「いえいえ。おすすめは甘い卵焼きとレタスが入っているやつですよ。マヨネーズたっぷりです」


皆、口々にいただきますと手を合わせてそれを頬張った。疲れた体に染みわたるとはまさにこのことだ。体の奥から活力が出てくるのが分かった。やはり食はエネルギー。あんなに大量にあったサンドイッチはものの数分で皆の腹に吸収された。


「さて、皆さん食べ終えたようなのでこれから自由行動とします。十八時には夕食になるのでそれまでには戻ってきてくださいね」


手をパンと叩いて、千夏ちゃんはそう宣言した。自由行動か、何をしよう。


リビングのソファに座りながら、面々を眺める。どうやら千夏ちゃんと秋野は温泉に行くようだ。秋野は渋っていたけど、千夏ちゃんが強引に立ち上がらせていた。坂口カップルと赤坂は部屋の隅で何かやっている。何してるんだろうとそのまま眺めていると、いつ借りてきたのか、その手には釣り竿が握られていた。そういえば、近くに川が流れていると言っていた。近くに釣り堀でもあるのだろうか。


急に坂口が振り向いて「藤宮も釣り、どうだ?」と誘ってくれたが、まだ動く気にならなかったので丁重にそれを断った。誘っておきながらそんなことはどうでもいいと言わんばかりに「そうか!」と返事をして彼らはさっさとコテージを出ていった。諦めずにもう一回ぐらい誘って欲しい。そしたら行くから。


かくして、コテージのリビングに残されたのは、俺、春宮、美冬だけとなった。あれ、なんかいやな予感がするな?

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