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パーティは少し照れ臭い

それから全員で集まって俺の部屋で盛大に誕生日パーティをした。坂口が事前に近所に通達をしてくれていたおかげで苦情というものは一切なかった。通達と言っても「大声で告白するからうるさくなります」といったものでは断じてない。あいつに限ってそんなデリカシーのないことするはずが・・・いやするな、あいつは。正直者だし。嘘つけないし。


ちなみにケーキはvtuberさながらの赤スパのチョコ板を乗せたショートケーキだ。いや、何も言うな。俺もどうかと思う。なんで傷心の元(?)vtuberにそんな思い出させるような、しかもわりとかっこ悪いものをあげるんだと思っただろう。今となっては俺もそう思うし、なんなら本人も少し苦笑いしてたし。完全に失敗だったけど、その反応を見た千夏ちゃんが「食っちゃえば全部一緒ですよ!!!」と言いながらそのチョコ板を手刀で割り、すぐさま各々の口に放り込んで事なきを得た。まぁ千夏ちゃんのアイデアだし、作った本人がそういう扱いをするのはこちらがとやかく言う事ではない。あえて言わせてもらうなら、どんまい。


赤坂には・・・赤坂ってなにやってたっけ。何をお願いしたんだっけ。やばい、忘れた。気付けばいなくなってるし、なにしてんだあいつ。


「こほんっ」


ケーキをみんなで食べて、騒いで、お酒を飲んで、騒いで、千夏ちゃんが作ってくれた料理を食べて、騒いで、今回はここが失敗だったとか、次はこうしたらいいとか、なんでもっとはやく言わないんだよとか、一通り反省会をして、時々春宮に茶々を入れられたりしながら話をしていたら、急にかしこまって春宮が一つ、あからさまな咳ばらいをした。視線は自然と春宮に集まる。


「みんな、ありがとう」


そう言って頭を下げた。顔を突き合わせる俺たち。


「私、仕事で失敗してすごく凹んでたんだ」


頭を上げずにそのまま話し出す春宮。


「もうどうしたらいいのかってすごく、すっごく悩んで、でも何もできなくて、もうほとぼりが冷めるまで何もしない方がいいんじゃないかなって思ってて」


「もうこのまま死んでしまおうかってぐらい追い詰められてた。でもみんなのおかげでちょっと元気出た。本当にありがとう」


「俺たち、友達だろ、一人で背負うなんてことするなよ」


すかさず坂口がフォローに入る。ちくしょう、俺が言いたかったのに。


「そうだよ、何でも相談してよ夢子ちゃん」


「お前励ます気ある?」


励ましたいのか、けなしたいのかよく分からない千夏ちゃんを一瞥する。


「うん、でもほんとにありがとう」


依然、頭を上げない春宮に訝し気に思いながらいると窓の外から声が聞こえた。


「おぉーい、準備できたぞー」


赤坂だった。お前なにしてんだそんなところで。祝いもせずに。ぶん殴るぞ。


「なにー!?」


千夏ちゃんが急いでベランダへ出る。


「なんだなんだ」


坂口がそれに続く。


「春宮、いこう」


「うん」


春宮の手を取り、立ち上がらせる。まだ俯いたままだったが、立ち上がれるなら大丈夫だろう。そのままベランダに出るとさっきまで俺がいた場所に赤坂が立っている。


「いいかー?見えるかー?」


「なにすんのー?」


暗くてよく分からなかったが、赤坂はその右手を足元にある筒状のものへ向けた。少しして、それから白い光が打ち上げられた。頭上でパンっと花開く。


「この時期って、どこにもないんだなー。めちゃくちゃ探したよー」


そうだ、赤坂にはこれをお願いしたんだった。


「どんどん行くぞー」


赤坂が点火していくと、次々に花火が打ちあがる。それに見とれながら、ふと後ろを振り向くと、春宮も笑顔でそれを見ていた。目が少し赤いように見えたのは、きっと花火の光のせいだろう。


「綺麗だね」


そう春宮に話しかける。


「うん!」


花火よりも綺麗なその笑顔を見た時に、俺はこの笑顔を一生守っていきたいと、心に誓った。

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