隣の部屋
僕の部屋は六年前建てられたマンションの六階だ。
此処に引っ越したのは数日前だ。
此の階は僕以外の住人を見たことはない。
だが誰かが住んでいること分かっている。
何故なら僕は派遣会社の深夜のシフトを担当してるからだ。
夕方からバイクに乗り出勤する時部屋の明かりが付いてるのは何度も見た。
だがら誰かが住んでいること分かっている。
鉱石ラジオの音がするから。
分かっている。
分かっている。
生活している音も聞こえる。
話し声も聞こえる。
大人と子ども。
親子か。
成績の事で怒られているみたいだ。
分かっている。
分かっている。
お風呂か?
大量の水が流れる音。
体を洗う音がする。
分かっている。
分かっている。
テレビの音が聞こえる。
某有名タレントの番組だな?
録画して僕も見ている。
ああ~~面白い。
うん。
面白かった。
分かっている。
分かっている。
分かっている。
分かっている。
分かっている。
分かっている。
分かっている。
分かっている。
数日後僕は急いで引っ越しした。
あのマンションから。
匂いのしないマンション。
そう匂い。
あれだけ住んでるのに何故か匂いがしない。
煙草。
其れに料理。
決定的なのは洗濯物を干していないということ。
何一つだ。
紹介して貰った不動産から後で聞いた話だ。
六階には僕以外誰も住んでいないという。
直ぐに離れて良かった。
そう思いながら僕は鉱石ラジオを聞く。
あれ?
鉱石ラジオなんか何時買ったかな?