第七話 街の命
シエルはステッキが光を放っている間も、掴んだ手を離さなかった。
すると、なにかが入ってくるような感覚に襲われる。電流がビリビリと全身を駆け巡るようなそれは、不思議と痛みはなかった。
むしろ、力がみなぎってくるような感覚だった。
光が収まった頃には、その不思議な感覚は消えていた。しかし、初めに触った時とは違って、ステッキが手に馴染んだように感じた。まるで、ずっと使ってきたものを持っているようだった。
これなら、厄災と戦う時までに使いこなせそうだ。
「どうですか、そのステッキを持って見た感じは」
聖女様は少し心配そうに聞いてきた。きっと、さっきのまばゆい光の所為もあるのだろう。
僕は、聖女様を心配させないために、微笑みながら思ったことを正直に話した。
「なんだか、仕事道具を持っている時と同じような感覚です。安心感があるというか……。これなら厄災と上手く戦えるかもしれません」
「そうですか。さっきの光を見た時はどうなるかと思いましたが、どうやら杞憂だったようですね」
聖女はほっとしたように胸をなでおろした。
そこで、シエルは思い出したことがあった。
「そういえば、僕はどのようにして守護者に選ばれたのですか? 神話には守護者を選ぶとしか書かれていなかったもので……」
「ああ、そうでしたね。実は、守護者を選ばれたのはソアシス様なのです。昨日神託があって、その時に厄災が起きることや、守護者についてソアシス様がお伝えしてくださったのです。守護者については見た目の特徴しかわからなかったようで、クリーム色の髪をして碧色の目をした方としか仰られませんでした。我々も必死に貴方を探したものですよ。この街にはあまりない目と髪の色だったので、案外すぐに見つかりましたがね」
「そうだったんですね……」
たしかに、シエルの目の色はこの街では珍しい。他に同じ目の色をしている人は、商売をして街の人と関わることが多いシエルでも見たことがない。
それに、クリーム色の髪の毛を持つ人も多少は居るものの、やはりいちばん多いのは茶髪の人だ。
聖女も珍しい髪色をしていると言えるだろう。黒髪の人も、聖女以外で見たことある回数はせいぜい片手の指で足りる程度だ。
そして、神官に見つけられたシエルは、今このような状況になっているのだ。
(今日一日、随分と濃かったな……)
疲れが出たのか、少し目眩がした。後ろに控えていた神官が支えてくれたため倒れることは無かったが、やはり体調には気を使わなければいけない立場だ。
「それでは、今日はこれでお開きにしましょう。いろいろなことがあって疲れたでしょう。神官をご自宅までお送りするので、本日はゆっくりとお休み下さい」
「すみません、わざわざ……」
「いいえ、構いませんよ。守護者の命は街の命。これから貴方には頑張ってもらわなければいけませんからね」
そうだ。もう、自分だけの身ではないのだ。僕がちゃんとしなければ、街の人達に関わってくる。
(明日から頑張ろう)
地下から出ると、空はもう茜色に染っていた。案外時間が経っていたようだ。
その後、神官に送られたシエルは家に着くなり、ベッドの上で寝てしまった。
こんちゃ!あるいはこんばんは!
今回のお話はどうだったでしょうか?少しでも面白いな~って思っていただけていたら嬉しいです!
この回では、シエルちゃんや聖女ちゃんの見た目がガラスの街では珍しいということが書かれていましたね~。
今後の話の中で、これらが結構大切になってくると思うので、その時までと覚えていただけたらと思います。
それでは、また次の話でお会いしましょう。
さいなら~