第三話 聖女と教会
連れてこられたのは、予想通り教会だった。正面の門をくぐり抜け、聖堂へと続く道へと差し掛かった。そして、神官たちに置いていかれないよう、少し早足で歩く。
そして、ただいま僕──シエルは……
とてつもなく混乱している。
(え? 守護者ってなに? 神官の人が来てるってことは、教団と関係があるの? え、つまり……どういうこと?!)
頭の中に浮かぶのはクエスチョンマークだけ。ここに来るまでの間、神官たちは何も話してくれなかった。
なんというか……。ぽわぽわしてる? というか、心做しか焦っているように見えた。
何故僕は連れられているのか、守護者とは何なのかを道中に聞いていたが、「後ほどお話するので、それまでお待ちください」と言われただけだった。
教会の人だから怪しい人ではないと思うけど……。それでも、説明無しにただ連れてこられたら不安になってしまう。おばさんも、僕が連れられるときに少し心配しているように見えた。
本当に、こういうときに教会にステンドグラスがあってよかったと思う。混乱している最中でも、ステンドグラスを見ていれば多少は落ち着ける。このステンドグラスを作ってくれた方、本当にありがとうございます。おかげで僕は緊張で倒れませんでした。
「着きました」
ステンドグラスを拝んでいると、神官が聖堂の前でこちらを振り返っていた。
(どうして聖堂に連れてこられたんだろう……)
神官が聖堂の扉を開けると、奥に一人の女性が立っていた。
(黒い髪に黒い眼……。もしかして……!)
「聖女様?!」
僕が思わず叫ぶと、聖女様は口元に微笑を浮かべて僕に向かってお辞儀をした。
「来ていただき誠にありがとうございます、シエル様」
「ええ?! ぼ、僕そんなことをされる身分では……」
この街では、唯一神託を受けられる聖女が、一番身分が高い。そんな方に敬語を使われ、頭を下げられるとなると、なんだかものすごく悪いことをしているような気分になってしまう。
「なにを仰るのですか。貴方は『硝子の守護者』に選ばれたものです。この街を守ることになる貴方は、私達よりも位が高いのですよ。なので、あまり気にする必要はございません」
「でも……」
だからといっても、こういう風に扱われるのは慣れておらず、しかも聖女様相手だとさらに落ち着かない。
「……えっと。それよりも、先程から守護者、守護者って言われているんですけど、そもそも守護者ってなんですか……?」
まずは、この状況をどうにかする為に、話題をそらすことにした。
聖女は少し眉をひそめたあと、神官たちを見た。
「あなたたち、説明していなかったの?」
それを聞いた神官たちの肩が大きく跳ねる。
「すいません……。いきなり現れた我々に説明されるよりも、聖女様自らご説明された方がシエル様も理解していただけると思いましたので……」
「そう。ならいいわ」
神官たちは何か言いたげにしていたが、それ以上は何も言わなかった。
聖女はひとつため息をつくと、今度はシエルの方を見た。
「……着いてきてください。詳しくご説明して差し上げます」
そう言うと、聖女は裾から鍵を取りだした。そのまま彼女についていった。
聖堂の真下にある地下道を通って辿り着いたのは──
特別資料室と書かれた部屋だった。
みなさん!最後まで読んでいただいてありがとうございますm(_ _)m!この物語を少しでも楽しんでいただけていたら幸いです。
最後に特別資料室へと連れていかれたシエルちゃん。そこには一体どんなものが待ち受けているのでしょうか……。
一日に二話投稿するという暇人っぷりを見せつけた私ですが、次の更新日は全く分かりません!なので、またいつかお会いしましょう。
さいなら~( *´꒳`*)