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『第3回 下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞』シリーズ

僕と彼女の交差点

作者: 佐藤そら
掲載日:2021/12/07

 高校の通学路。

 いつも同じ時間、あの交差点に差しかかると、女子高生の彼女が向こうから歩いてくる。

 僕は、名も知らぬ彼女とすれ違う。

 いつしか僕は、今日も彼女に逢えないかと考えるようになっていた。

 

 彼女の制服が半袖になり、季節の変わり目を感じた。

 彼女が髪を切れば、失恋でもしたのだろうか?

 妄想は膨らんだ。

 

 

 ある日、交差点で僕と彼女は、いつものようにすれ違った。

 すれ違いざまに、何かが地面に落ちた。

 僕は振り返ると、彼女の落とし物がそこにはあった。

 

「あっ、あの……」

 

 彼女に話しかけた僕の声は、自分でも驚くほど小さかった。

 突然の会話のチャンスに、緊張が僕の喉を締め付けた。

 

 落し物は、いつも鞄に付いているお守りだ。

 彼女は振り返ることもなく、その後ろ姿は次第に小さくなっていった。

 

 

 

 翌朝。

 

「す、すみません……」

 

 僕は声を出したが、続きの言葉が出てこなかった。

 その間に、彼女の後ろ姿は小さくなっていく。

 

 このままじゃダメだ!

 このお守りが、僕にきっかけをくれたんだから!

 

 僕は、文章を考え何度も練習した。

 その様子を彼女のお守りが見守ってくれていた。

 

 

 

 翌朝、僕は意気込み玄関を飛び出した。

 しかし、お守りを部屋に置き忘れる凡ミスをした。

 慌てて引き返し、再び家を出る。

 

 遅れるわけにいかない!

 あの交差点に行かなければ!

 

 しかし、今日はどういうわけか邪魔が入った。

 道路工事により、迂回ルートを指示された。

 

 遠回りをし、息を切らし僕は坂道を駆ける。

 目の前を歩くお婆さんが荷物をぶちまけ、僕はそれを拾う。

 

 外国人に道を尋ねられ、もう踏んだり蹴ったりだ。

 

 僕は走った。

 あの交差点に行かなければ!

 別に明日渡せばいいのかもしれない。

 だけど、何故だか今日渡さないといけない気がした。

 

 

 あぁ、もう! なんでだよ!

 

 

 僕が辿り着いた時、交差点には人だかりができていた。

 赤い回転灯が見える。

 

 ん?

 

 トラックとの衝突事故があったらしい。

 

 え……

 

 タンカーで運ばれていくのは、彼女だった。

 

 

 

 彼女は亡くなった。

 

 

 いつもの時間に交差点に来ていたら、事故に遭ったのは僕だったのかもしれない。

 もっと早く、彼女にお守りを返しておけば、彼女は事故に遭わなかったのかもしれない。

 

 

 なんで、なんで彼女が死ななくちゃならなかったんだ!

 

 

 

 平行な道は交わらない。

 でも、ずっと隣にいられるのかもしれない。

 

 垂直な道は交わる。

 でも、その交差点は一度だけだ。

 

 彼女が落とし物をした日、それがきっと、僕と彼女の交差点だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ifがたくさん詰まった作品ですね。交差点へ行こうとした主人公に散々邪魔が入ったこと、運命の女神様の意思に近いものを感じます。
[一言] 涙してしまいました。 冒頭がかわいいと なおさらですね(/_;)
[良い点] 衝撃でした…!「えっ」と声が出ました。 走る"僕"の呼吸を想像するほど感情移入していたので、衝撃も激しかったですが、想像もしないこの終わり方、好きです。 読ませていただきありがとうございま…
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