波乱の論理
教室に到着して時計をチェックする。
「よし、間に合った。セーフ」
そんな事を呟くと、教室の後ろから呼ばれる。
「シュタインお前遅いよ、どうしたの」
彼の名はぷやみ。シュタインの親友である。
「ぷやちゃんこそいつも遅いのに今日は早いじゃん」
「うるせえよっ」
二人で笑い合う。
チャイムが鳴り講師が席に着くように呼び掛けた。
数時間程授業を受けた後学校が終わる。
「じゃあ、ぷやみまた明日な〜」
「おう、シュタインもまた明日」
そう親友のぷやみと挨拶を交わして学校を後にする。
……
学校が終わり携帯をチェックすると通知が数件溜まっている。
彼女からのLINEに返信をしyeyを開く。
(学校終わったら通話上がってこいよ。逃げるな)
学校終わりに寄ったコンビニのWiFiを使い普遍的な男の返信に怪訝な表情を示しながらも文字を打つ。
「すみません、肉まん1つ」
コンビニで肉まん買ってイートインスペースでマスクを下ろし頬張った。
寒さで引き攣った口元が肉まんの熱で徐々に緩む。
【今暇だから通話上がれるから開けよ】
腹を満たしたシュタインは投稿に目を通しながら、ボイスチェンジャーの男に返信した。
「おっ、招待来た。」
通話に上がると、男はこう言った。
(昨日の続き話そうぜ、お互い食い違いあったし。)
……
ボイスチェンジャーを今日は使っておらず、その声にどことなく聞き覚えがあり戸惑って沈黙する。
「え、お前○○高校のぷやみ?」
……
(お前誰?でもどっかで聞き覚えあるなってずっと思ってたけど。もしかしてシュタイン?三日坊主知り合いかもって色んな人に言ったけどまさか本当にそうとは思わなかったわ)
「そうだよ、やばくね?」
二人が同じ高校の親友同士だと分かり喧嘩はそっちのけで会話が弾む。
数時間話した後、眠気に襲われたシュタインは興奮冷めやまぬまま通話を後に眠りにつく。
夜更かしのせいで寝坊したシュタインは急いで支度をし学校へ向かう。
到着するとぷやみがシュタインの席に座っていた。
「シュタインお前寝坊かよ、俺も危なかったけど」
「ぷやみじゃん。マジでビビったわ。サブ垢使うなよ全然分からなかったわ」
二人は昨日の余韻でしばらく会話を弾ませる。だがシュタインは普段のぷやみには感じなかった違和感を胸覚えた。
(……俺ってぷやみの事気になってる?いやそんなはずない。誰だってビックリ位はするだろ。違う、きっと違う。)
ボイスチェンジャーを外した時のぷやみの声と無邪気に笑う姿が走馬灯のように脳裏によぎる。
(これって恋なの?)
「そう言えば、ぷやみって好きな人とか居ないの?」
……
「どうした?いきなり。まあ居るけど」
……
「え、ちなみに俺の知ってる人?yeyとかピクパの人?」
……
「やー、まあ言わないよ。シュタインの知らない人笑」
ひとしきり会話を交わして席に着いた。
行き場のない恋心、彼女が居るのにも関わらず芽生え始めた気持ち、同性愛と言う経験した事ない物に戸惑いが隠せず授業中もそんな事ばかり考えていた。
最後の授業のチャイムがなり、一斉に生徒が教室から出ていく中、ぷやみが荷物を持ちこちらへ近づく。
「シュタイン、たまには一緒に帰ろう」
その一言で目を覚ましたシュタインが口を開く
……
「あ、うん。家同じ方向だよね。全然いいよ」
自転車に手をかけ二人で歩幅を合わせ歩く。
「ぷやみお前って好きな人いるって言ってたけど、誰なの?」
……
「んー。逆にお前は彼女とどうなの?ラブラブ?」
「まあ、普通だけど気になる人が他に居るかも。」
……
「そっか。俺の好きな人教えて欲しい?シュタインお前だよ。」
「…え?」
二人の間に数分間沈黙が続いた。
ぷやみが固い口を開く。
「親友だと思ってるし、彼女も居るから無理だって諦めてはいたけどこの前喧嘩した時の事を思い出してギャップで惚れちゃって。普段お前って優しいし話しやすいけど喧嘩になると論理的なお前が見れて。」
……
「そっか、ありがとな。俺も実はお前の事気になってて。彼女居るしただの友達としての好きだって思い込ませようと思ったけど無理だった。俺も好き、お前のこと。」
「シュタイン、俺ら付き合わない?」「う、うん。俺でよければ。」
彼女の事など頭になかったけど、心が明るくなる感覚を覚えた。
「シュタイン、手繋ごっか。」ぷやみがシュタインの手を優しく取る。
「ぷやみの手って暖かいんだな。」
しばらく二人で歩きお互い自宅付近に到着した為、別れの挨拶を交わして帰路に着く。
玄関の扉をスキップしながら開け鼻歌を歌いながら部屋に向かう。
ピコンッ
『シュタインへ。今日からよろしくね♡』
ぷやみからLINEが届いていた。笑顔でLINEを開く。