第6話 『黒髪ロングがタイプです』
「どうだった?うちのボスは?」
「なんか、勢いすごくて食べられそうでした。」
「アハハハ、たしかにね。すごく力強いよね。しかも団長のランクはうちでNo.2のA3だからね。相当強いよ。」
「え!そんなに上なんですね。」
「うん。ランクアップは身体能力を大幅に強化するから、団長はもう筋力もスピードも人間の範疇を超えてるだろうね。」
「だからあんな身体に...。」
「あぁ〜あれは全然関係ないよ。ランクアップはこのリミトロフだけが享受できる恩恵みたいなものだから、見た目の筋肉量が変わるわけでは無いよ。ただ、基礎体力•筋力とランクの掛け算で身体能力が決まるから疎かにも出来ないけどね。」
(なるほど。じゃあ団長のパワーってどれぐらい凄いんだろ...)
そしてシュンさんに基地の至る所を案内してもらった。
分かったことは基地は5階層になっており、ひと1人入れるぐらいの透明なチューブが色々なところを繋いでおり、これで階層を移動してるらしい。
何回か乗ってみて説明も受けたが、空気圧の変化で動かしていると言うとこ以外は理解できなかった。
会う人会う人に声をかけられたが「あ、新人くん?」「君どんな能力使うのー?」「野良トロフは厳しいから、うち入ったほうがいいと思うなぁ」など同じような会話の繰り返しだった。
なんだよ野良トロフって。
「今のところはどう?気持ちに変化あった?」
「そうですね。野良トロフはやめといた方がいいのかなとは思ってます。」
「うん、それは僕もそう思う。野良トロフなんてのは団員の内輪だけで呼ばれはじめた言葉だけど、とりあえずどこにも所属せず1人で生きていけるほどリミトは甘くないってことだね。うちでもなく、野良でもないとなると、実は君の選択肢はあと一つなんだよね。」
「あと一つ?」
「選民派だよ。リミトロフは選ばれたモノであり、現世の人々を超越する存在であるという思想の基集まった危険た団体だ。」
「なぜ危険なんですか?」
「リミトロフを殺しまくっている。」
「え、何のためにですか?」
「タイランをあげる方法は鍛錬を積むか、殺してタイランを奪うかの2つしか方法は無い。タイランがSランクまである説明はしたと思うけど、彼らはS10を超えると現世に生き返ることが出来るとし信じている。」
「そんな殺人まであるなんて、、、」
「君が殺されかけたのも選民派だと聞いたよ。うちの団員も他人事では無いからね、そういう話はすぐに回ってくるんだ。」
殺人と呼ぶことは違和感があるかもしれないと頭をよぎったが、今の自分がどうゆう存在なのか定義出来なくなってきてしまい慌てて頭の外へ追いやった。
「そして、そうならない様に団員が訓練しているのが、ここトレーニングルームだ。ここでは対人戦闘の訓練を行なっており、四六時中ずっと団員同士が模擬戦を行っている。」
トレーニングルームは学校の校庭ぐらいのサイズで、上から覗ける様になっておりシュンさんはそこに連れてきてくれた。
下は至る所が凹んでおり、戦闘の激しさを伺わせた。
「すごい戦場跡ですね。これが能力の力なんですか?」
「そうだね。まぁ彼らは団員の中でもタイクラが高いから威力も凄まじいよやっぱり。あ、いま丁度お嬢とメルドの模擬戦が終わったんだね。」
「え?お嬢って...」
トレーニングルームの床には獣人?が座っており、白衣の人に手当てを受けていた。
その向かいに長い黒髪の女の子が凛と立っており、その美しい後ろ髪に目を奪われてしまった。