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98.狙撃手と立地条件

俺はアイテム欄が空っぽになって傷心していた。

俺の倉庫はジャイアントイノシシの頭蓋骨で埋まっているため、以前レッドドラゴンとジャッティを漁夫の利したときに得た戦利品はアイテム欄に寝かせておいたが、全部ドロップしてしまった。

ドラゴンの鱗とか爪とか肉とかあったんだが・・・。


まあいい。

これはこれでゲームの醍醐味だ。

PKで得たアイテムはPKで失う。そうして物流は回っていくのだ。

俺は立ち直ることにした。

アイテムといっても現実で何かを失ったわけではないからな。

おっさんともなると0と1で構成された電子データにそこまで入れ上げることはなくなるのだ。


それよりリコッチを少し待たせてしまったので、そろそろ土地探しの旅に出るべきだろう。

俺はフレンドチャットを送る。


『リコッチ、よければ土地を探しにいかないか?』

『ぜひぜひ! 行きたいです!』


大変乗り気のようだ。

まあ野外エリアとはいえ待望の権利書が手に入ったわけだしな。

気持ちはわかる。

善は急げというし、早速リコッチと合流することにした。




「センパイ! お待たせです!」

「いや、今来たところだ」


俺の返事に、リコッチはにへっと笑う。

もうすでに嬉しそうだ。

そんな顔をされると俺も悪い気はしない。


「リコッチ。提案なんだが、まず最初にどういう立地に家を建てるか条件を決めておいたほうがスムーズだと思う」

「あ、賛成です! 全部のエリアを回ってたらきりがないですし」

「リコッチの条件は、見晴らしのいい場所だったか?」

「見晴らしっていうか、窓から素敵な景色が見えるところがいいです!」


なるほど。

実に女の子らしい要望だ。

とはいえせっかくのVRゲームだ、景色がいいに越したことはない。


「センパイは何かありますか?」

「守りに易く、攻めるに難い地形が望ましい」

「あははー。現実的でセンパイらしいですっ」


ころころと笑うリコッチ。


「でも確かにPK可能エリアですからねえ。強盗が来ることは想定しなきゃですよね」

「ああ。そういう意味では、まあ・・・崖の上じゃないにしても、片側からしか攻められない地形がいい。そして丘のように上から見下ろせればベストだ」

「うーん・・・。そんな都合のいい地形なんてあります?」

「そうだな・・・」


俺は腕を組んで考える。

単なる丘であれば、そのへんにいくらでもある。

しかし全方位から攻撃を許すような地形はあまり気乗りがしない。

やはり崖の上が理想だが、風情も何もないのでリコッチが嫌がる。


ふとリコッチが、ぽんと手を打った。


「センパイ! やっぱりあそこにしませんか?」

「あそこ?」

「湖のほとりです!」

「・・・湖か」


確かに湖のほとりに家を建てれば、反対側は湖だ。

泳いで攻撃を仕掛けてくるような猛者を別にすれば、基本的には正面からの攻撃にだけ気を配ればいい。

それに景色もいいだろうからリコッチの条件も満たしている。

高台ではないのがやや不満だが、そのぶん警備アイテムに金を使えばいいだろう。

俺は頷く。


「悪くないな。俺は湖のあるエリアを知らないが、リコッチは心当たりはあるか?」

「ありますよ! 森に囲まれた綺麗な湖があるんです」

「ならそこにするか」

「はいっ!」


リコッチがにこにこしている。

楽しみなんだろうな。

しかし水を差すようで悪いが、大事なことを確認しておかねばならない。


「リコッチ。街中と違って野外エリアは更地だ。上物は買うか誰かに建ててもらう必要がある」

「それは任せてください!」


リコッチがぽんと胸を叩いて請け負う。

なるほど、すでに生産職の心当たりがあるようだ。

さすがはベテランゲーマー、抜かりがないな。


「なら早速、現地の下見に行くか?」

「行きましょー!」



俺たちは意気揚々と出発した。

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