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96.続・狙撃手は前に進みたい ―後編―

俺が復活ポイントから街の正門へと復帰すると、そこは阿鼻叫喚の地獄と化していた。


アゴヒゲはどうやらレッドドラゴンを敵と認識したようで、バトルアックスを振り回してドラゴンにガシガシとダメージを与えている。

信じがたい攻撃力だ。

しかしそれによってドラゴンのヘイトは完全にアゴヒゲに向いており、爪や尻尾を振り回して驚異的なタフネスを誇るアゴヒゲに対抗している。

もはやそこだけ怪獣大決戦の様相を呈していた。


問題はドラゴンの攻撃は範囲が広いということだ。

街を守らんと挑みかかっていくプレイヤーたちが次々と肉塊に変わっていく。

街の正門は初心者エリアに近いので、不運な初心者たちが木っ端屑のように巻き添えになっている。


「駄目だ、バラバラにかかっても勝てねえ!」

「まとまっていくんだ! 一斉にかかるぞ!」

「相手はドラゴンだ! 倒せばアイテムが期待できるぞ!」

「うおおおおお行くぞおおおおお!!」



ゴッバアアアアアアアアアアアアアアア!!



ドラゴンのブレスが燃え盛り、果敢な勇者たちをまとめて火葬にする。

上級プレイヤーであるジャッティの脳筋をして一撃で蒸発させるブレスだ、有象無象のプレイヤーたちに耐え切れるはずがない。


「ひいいい無理だああああ!」

「助けてくれええええ!」

「うわあああ何だこれは!?」

「ぎゃああああ!!」


何も知らずに街から出てきたプレイヤーたちが一瞬で消滅する。

ドラゴンは最強モンスターの名に恥じぬ暴れっぷりを見せており、もはや手がつけられる状態ではない。

攻撃範囲に立ち入った愚か者から順番に死んでいく。

かの歩く天災を打ち倒せる者はいないかに思えた。

ただ一人を除いては。


――そう。

英雄アゴヒゲだ。

さしもの最強の門番もエリアボスの攻撃を受けて無傷とはいかない。

だがバトルアックスを振り回してドラゴンの爪を弾き飛ばし、強靭な鱗に守られた巨体に斧刃を打ち込むその姿は、まさに英雄といえた。


いや、あのアゴヒゲおかしいだろ。

エリアボスを一対一で押してるぞ。

アゴのHPゲージも順調に減っているが、ドラゴンが力尽きるほうが早そうだ。

そりゃ俺一人で倒せないわけだよ。エリアボスより強いんだもの。


もちろん俺とて黙って見ているわけではない。

プレイヤーたちがわらわらとドラゴンに無駄な攻撃を仕掛けている更に遠く、遠距離からアゴヒゲに執拗に狙撃を繰り返していた。

俺の目的はあくまで怨敵であるアゴの打倒。

ヤツを仕留めさえすれば、俺はそのときこそ過去を清算して前に進めるのだ。




そうして阿鼻叫喚の地獄も大詰めを迎えようとしていた。

何百人の勇者が無駄死にしたか知らないが、主にアゴヒゲのバトルアックスがドラゴンのHPゲージを残り数ミリまで追い詰めていた。

しかしアゴヒゲのHPゲージももう残り少ない。

ドラゴンもエリアボスの意地を見せて奮戦しており、加えて俺のしつこい狙撃で少しずつ削っていた成果が表れているのだ。



ゴオオオオオオオオオオオオオオ!!!



ドラゴンが最後の攻撃とばかりにブレスを撒き散らす。

役に立たない勇者たちが一瞬で消し炭になり、アゴヒゲのHPゲージがグンと減る。


ここだ。

俺はアゴヒゲの脳天に照準を合わせる。

トリガーに指をかける。


ここまで長かった・・・。

ついにだ。

俺はついに悲願を果たす。

今ここにかの宿敵を打倒するのだ。


指に力を込め、今こそトドメの一発を――。


「おい」


俺の肩にぽんと手が置かれた。


「ああん!? 今一番いいところなんだよ! その珍妙な服よりも趣味が悪くなるようにテメーの顔面を叩き壊してやろうか!?」


俺が怒りの形相で振り返ると、なんか50人くらいいた。


あ、あれ・・・?

皆さんお揃いでいったい何を・・・?

なぜ武器を構えたり拳をバキバキ鳴らしていらっしゃるんですか?


「俺は見てたぜ。このおっさんがドラゴンを火山からトレインしてた」

「ほお」

「俺は途中で轢き殺された」

「私の夢のマイホームを更地にしたのも貴様か」

「万死に値する」


俺はダラダラと冷や汗を流しながら弁明する。


「ま、待ってくれ。そう、ほら、たかがゲームだ。落ち着いて冷静になればゲームごときで怒るのも馬鹿らしいと・・・」

「死刑」

「異議なし」

「異議なし」

「異議なし」


背後で、ズシーン!と地響きがした。

俺が悲壮な顔で振り返ると、英雄アゴヒゲが見事レッドドラゴンを討伐したところだった。


お、俺の宿願が・・・!

長年の悲願が・・・!

せめてあと一発・・・あと一発アゴヒゲに・・・!

ほんの少し手を伸ばせばあの怨敵に届くんだ・・・!

頼む、たった一発でいい・・・!

人としての情あらば、この哀れで善良なおっさんに僅かばかりの情けを・・・!



俺は切々と己が善性を訴えたが、50人からの屈強なプレイヤーにたっぷりと教育され、泉から出るたびにリスキルを繰り返されて二度とトレインしないことを誓わされたが上辺だけの反省を見破られてまたリスキルされ、あまりに死にすぎて最終的にはアイテム欄がゼロになった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新&返信ありがとうございます! おそらく・・・コレでも心は折れないケンタロ!!(笑) だと思う! 次も待ってまーす。
[一言] 最後の最後でちゃんと報いを受けててめっちゃ笑ったわ
[一言] 因果応報wwwww 周りの迷惑省みずゲーム楽しみ過ぎww 絶対反省してないな。 闘技大会で上げた株を自ら底値にするとは思いもしなかった。
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