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88.狙撃手とトーナメント初日終了

「せんぱあーいっ! やりましたねっ!」


リコッチが喜色満面で、ぴょんっと俺に抱きついてくる。

俺はしっかりと抱き止める。


短時間で終わった試合だが、内容は極めて紙一重だった。

もともと負ける可能性のほうが高かったので、勝利できて嬉しいのだろう。

リコッチは大喜びしている。

もちろん俺も嬉しい。


観客席からは「あああ俺のリコッチがああ!」「何であんなおっさんと!」「おっさんしねおっさんしね!」などと罵声が飛び交っているが、聞こえないフリをする。

いちいち聞き入っていたら精神力がいくらあっても足りない。


ちなみにこの闘技場においてはキルされても復活ポイントに強制送還されるのではなく、他プレイヤーに干渉できない幽霊状態になるだけだ。

そして戦闘が終了したら元に戻る。

このあたりはちゃんとプレイヤーの利便性が考慮されているわけだ。


そんなわけで俺はリコッチの頭をぽんぽんと撫でる。

リコッチも「えへへー」と嬉しそうに笑う。


まずは1勝。あと6回勝てば優勝だ。




******




次の試合まではしばらく時間があるので、俺たちは観客席に移動して敵情視察を行うことにした。


基本的にこのゲームの対人戦は、一戦一戦が短い。

何故かというと一撃のダメージが極めて重いバランスだからだ。

リコッチのような後衛職はせいぜい1、2撃、俺のような更なる紙装甲はワンパンでHPゲージがゼロになるし、前衛であってもほぼ短期決戦になる。

ちまちました長時間の削り合いはプレイヤーが面倒だと感じるし、観客にも受けが悪いので、対人戦はこれくらいのバランスでちょうど良いのだろう。

まあ一撃が重いバランスだからこそ、俺はスナイパーライフルのヘッドショットで前衛職すら一撃でキルできるのだ。

もちろんヘッドショットはダメージ倍率が高く設定されているというのもあるが。


「センパイ、あれが次の私たちの相手ですっ」


リコッチが俺の袖をくいくいと引っ張る。

円形の戦闘エリアで交戦し、勝利を収めたのは剣士と神官のタッグだった。


「どうやら神官がバリアスキルを剣士に張って、剣士が突っ込むスタイルのようだな」

「ですねえ。となると・・・」

「ああ。俺たちはさほど相性は悪くないな」


俺とリコッチは顔を見合わせて頷く。

とはいえ油断はできない。

本戦に勝ち上がってきている以上、実力者には違いないのだ。


「油断しないでいこう、リコッチ」

「はいっ、センパイ!」




******




【戦闘開始】




俺が神官に向けてライフルを構えると、その射線上に剣士が立ちはだかる。

先手はあえて剣士が受け止めて、次手を撃たれる前に決着をつける算段だろう。


神官は狙えないので、俺は剣士に照準を合わせる。


「セイクリッドシールド!」


神官が剣士にバリアスキルを張る。

俺は構わずトリガーに指をかけるが――。


「ガーディアンアーマー!」


剣士が勝ち誇った顔でにやりと笑い、自身にバリアスキルを発動させる。

これでバリア2枚だ。


「はははっ! 97位がバリア2枚を抜けないことは予習済みなんだよ! ジャッティ対暗ダの配信でな!」

「その首もらったあああ!!」


ターン。


銃弾がバリア2枚をぶち抜いて剣士を爆散させた。


「・・・・・・は?」


神官がぽかんと口を開けて硬直する。

すまん、俺のアーマーブレイクは二次職になって強化されたんだ。

ちょっと情報が古かったな。


「まっ、待て! 話せばわかる――ぐえっ!」


リコッチのフリージングエッジが神官を真っ二つにした。



「うおおおおお! リコッチ最高! リコッチ最高!」

「おっさんくたばれ!」

「おっさんやるじゃねえか!」

「ライフル見直したぜ!」

「応援してるぞ!」



リコッチとハイタッチしている俺に罵声が飛ぶが、純粋に応援してくれる声も増えている気がする。

人生でこんなふうに観客に応援されることなんてなかったので、まあその・・・照れる気持ちもあるが、嬉しい。

どうやら観客というのは、強者が当たり前に勝っていく予想通りの試合よりも、通用しないと思われていた弱者が、予想を裏切って勝ち上がる展開のほうが好きらしい。



そんなこんなで俺たちは初日を勝ち抜き、ベスト8まで残った。

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