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87.狙撃手とトーナメント一戦目

闘技場の中央は円形の戦闘エリアであり、それを観客席が階段状にぐるりと囲んでいる。

そしてその観客席は満員だった。

とにかくどこを見渡しても人、人、人だ。


大人気VRゲームなのだから、当然これくらいの人はいて当たり前なのだが、それにしても圧巻だ。

そして歓声がすごい。

やはりこの手の武闘大会は盛り上がるのだろう。



「うおおおおー! リコッチいいい!」

「こっち向いてくれえええ!」

「リコッチ可愛いいい!!」

「付き合ってくれーー!」

「何でおっさんなんだよ!!」

「おっさんくたばれ!!」

「おっさんくたばれ!!!」



・・・。

・・・。

武闘大会だからじゃなくて、リコッチだから盛り上がっているのでは?

そして俺にブーイングを向けるのをやめろ。


当のリコッチは歓声などどこ吹く風で、前方の対戦相手を見据えている。

俺もそれに倣って相手を観察する。


「よう、97位のおっさん。手加減しねえぜ」


短剣使いの少年がニヤニヤしながら声をかけてくる。

自分たちの優位を確信している表情だ。

まあ確かに相性を考えれば、俺たちのほうが不利だからな。

それに相手はいずれもベテランのPKプレイヤー。

厳しい戦いになることは間違いない。


「センパイ、あの人と知り合いなんですか?」

「ああ。結構前にPKギルドに誘われたことがある」

「へえー」


短剣使いの少年は余裕の表情だが、その隣の弓使いは冷静そのものだ。

油断はしてくれそうにない。

俺はスナイパーライフルを肩から下ろすと、銃身を軽く撫でる。

頼りにしているぞ、相棒。



【戦闘開始:10秒前】



リコッチが一歩前に出る。

俺は逆に一歩下がり、ライフルを構える。



【戦闘開始:5秒前】



短剣使いの少年が一歩前に出る。

弓使いが弓を構える。



【戦闘開始:3秒前】



短剣使いはもうニヤニヤ笑っていない。

PKに慣れた狩人の目をしている。



【戦闘開始】



短剣使いの姿がすうっと消える。

ステルスを発動したのだ。


俺は即座に弓使いに銃口を向ける。

だがまだ撃たない。

今撃ったところで避けられるだけだ。


弓使いは弧を描くように移動しながら、リコッチに矢を向ける。

しかしまだ攻撃してこない。

攻撃の瞬間は足が止まる。俺がそこを狙ってくることをわかっているのだ。


とはいえ弓使いはリコッチを攻撃しなければならない。

リコッチはもう詠唱に入っている。


弓使いが弦を引く。

足が止まる。

俺も照準を合わせる。


「アローレイン!」


雨のような矢が、俺とリコッチにまとめて降り注ぐ。

くっ・・・!

避けるか? だがそうすると俺は攻撃できない。

ならば食らうか?


・・・。

・・・。


あれは範囲攻撃だ。

であれば威力は高くない。

経験を信じろ。俺のHPゲージはゼロにはならない。

俺はトリガーを引く。


ターン。


「ぐわっ!」


銃弾は過たず弓使いの頭に命中し、一撃でキルした。

反面、俺のHPゲージはまだギリギリ残っている。


だがまずい。

リコッチはアローレインを食らって詠唱がキャンセルされている。

すぐさま詠唱し直すリコッチの横に、短剣使いが姿を表した。

俺もリコッチもHPゲージが減っている。

どちらも一撃で即死圏内だ。


「もらった!」


短剣を振りかぶる少年。

ライフルの攻撃はまだクールダウンだ。

だがリコッチが落とされれば、勝ちの目はない。

俺は咄嗟の判断で、短剣使いの少年にタックルをぶちかました。


「くそっ! 邪魔すんな、おっさん!」


少年が短剣で俺の身体を切り裂く。

俺のHPゲージは一瞬でゼロになった。


だが、いい。

これはタッグマッチだ。

どちらか一人が残っていれば勝ちなのだ。


そして俺はもう自分の仕事を終えた。

一人落とし、盾となって時間を稼いだ。

あとはリコッチが決めるだけだ。


「ちいっ!」


短剣使いは俺をキルすると、すぐさま体勢を立て直してリコッチに向き直る。

だがもう遅い。

リコッチの詠唱はすでに完了している。


「フリージングエッジ!」

「ぐわああ!」


単体高威力の氷の刃が、短剣使いの少年を消滅させた。

俺たちの勝利だ。



「うおおおおおおおおおおお!!」

「リコッチいいいいい!」

「リコッチがやったぞおお!」

「リコッチ愛してるうう!」

「おっさんもよくやった!」

「おっさんいいぞ!!」

「おっさん!」

「おっさん!!」



闘技場はしばらく歓声が鳴り止まなかった。

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