84.狙撃手とトーナメント表
【武闘大会:本戦トーナメント表】
公式ボードにでかでかと表示されている128タッグ、計256名のプレイヤーネーム。
そこに俺とリコッチの名前も載っていた。
「リコッチ、やったぞ」
「やりましたねっ、センパイ!」
俺とリコッチはパシッとハイタッチをする。
リコッチはにこにこと嬉しそうだし、もちろん俺もそうだ。
これで参加賞以外の賞品がもらえるし、何よりリコッチと一緒に勝ち抜けたというのが嬉しい。
俺はトーナメント表にずらりと並ぶ名前を見渡す。
ソロプレイヤーの俺は知り合いが少ないので、ほぼ見たことのない名前ばかりだ。
だが顔の広いリコッチなら、知っている名前も多いだろう。
「どうだ、リコッチ?」
「うーん・・・。準優勝も難しいかもです」
「そうなのか?」
「ほら、見てください。順調に勝ち進めば、準決勝でダンチョー・クッコロさんと当たります」
リコッチの指差す先を辿ると、確かにその通りだった。
ダンチョー・クッコロのタッグか・・・。
「そんなに厳しいのか?」
「センパイの戦い方も弱点も、全部バレてますからねえ。もちろん私もですけど」
「だがリコッチも2人の戦い方はよく知っているだろう?」
「そーなんですけど、センパイは戦い方がバレてると極端に不利になるタイプのプレイヤーなんで、私たちのほうが不利なんです」
「・・・なるほど」
確かにその通りだ。
俺の戦い方は結局のところ、遠距離からの一撃必殺。この1パターンしかない。
だからこの1パターンを熟知している相手には大きく不利になる。
反面、リコッチは戦い方のパターンが多く、またベテランの実力に裏打ちされているので、戦い方がバレていてもさほど不利は背負わない。
ダンチョーとクッコロのタッグもそうだろう。
「でも優勝候補の人たちは反対側のブロックなんで、決勝まで当たらないのはラッキーかもです!」
「優勝候補か」
「はい。朝も昼も夜もログインしてることで有名な人たちです。寝てないんじゃないかって噂もありますねー」
やべー連中がいるらしい。
廃人というやつだろう。
これはVRゲームなので、同じアカウントを共有して別人がログインすることはできない。
どういう認証方式を取っているのか知らないが、ともかく外見が異なるプレイヤーはログイン時に弾かれるシステムになっている。
だから廃人連中は、朝から晩まで本人がログインしているはずだ。
恐ろしい・・・。
このVRゲームは非常に面白いから、ハマる気持ちはわからんでもないが。
「もちろん他にも強い人たちはいっぱいいるんで、準決勝に行く前に負けちゃう可能性もあります」
「むしろ本戦に勝ち進んでいるわけだから、全員強いよな」
「あははー。そうですねえ」
リコッチがころころと笑う。
気負いは全くないようで、武闘大会を楽しもうという気持ちが伝わってくる。
本戦からは観客もいるというのに、緊張している様子がないのは、単純に慣れているからだろう。
もしかすると俺がこのゲームを始める前にも似たようなイベントが開催されていて、経験済みなのかもしれん。
「・・・それよりセンパイ。私たちの初戦の相手」
「知り合いか?」
「あの人たちです。私とセンパイが初めて会ったとき、私が戦ってた短剣使いと弓使いです」
「何、そうなのか」
名前を知らないからわからなかった。
弓使いがひたすら連射でリコッチを封じて、短剣使いがトドメを刺すという戦闘スタイルだったことを思い返す。
リコッチの横顔を見ると、どこか厳しい表情でトーナメント表を見つめている。
俺が横槍を入れたおかげで最終的には逆転したが、そうでなければ負けていた相手だ。
リベンジを果たしたいと考えているのだろう。
何だかんだリコッチは負けず嫌いなところがあるからな。
そしてリベンジしたいのは俺もそうだ。
あの短剣使いは、このゲームで初めて俺をPKしてくれた奴だ。
この機会にしっかりと白黒つけておきたい。
「リコッチ」
「何ですか、センパイ?」
「今のリコッチなら負けない。そうだろう?」
俺がそう言うと、リコッチは表情を緩めて笑った。
「はいっ! でもセンパイ、一つ間違ってます」
「何がだ?」
「私たちなら負けない、ですよ!」
「・・・ああ、確かにそうだ」
俺が拳を差し出すと、リコッチも拳を合わせてくる。
相手が誰であろうと狙うは優勝だ。
武闘大会の本戦が、いよいよ明日から始まる。




