80.狙撃手、リコッチと狩りに勤しむ
「すまん、リコッチ。万策尽きた」
「あははー! 大丈夫ですよっ」
俺が報告すると、リコッチは何でもないかのように笑った。
PKプレイヤーの俺がPKで目的を達しようとしたことは見当がついているだろうが、何も聞いてこなかった。
いい子なのだ。
あの後、青年と頼りがいのあるお友達に手酷くボコられて、二度とあの青年をPKしないと誓わされた。
その条件を飲まざるを得なかった。
そうしないとソロプレイヤーの俺は、逆に粘着されてとんでもない目にあうからだ。
粘着PKする者は粘着PKされる。
世界の真理であった。
「センパイ。私も考えたんですけど、やっぱりモンスターをたくさん倒して権利書のドロップを狙いましょう!」
「しかし野外エリアの土地は」
「それなんですけど、どうやら家には警備アイテムも取り付けられるみたいです」
「・・・警備アイテム?」
リコッチが集めてくれた情報によると、野外エリアに建てた家はPKプレイヤーに荒らされることを考慮して、ちゃんと警備アイテムが用意されているらしい。
何でも街の不動産屋のすぐ側に、警備会社があり、そこで強盗を撃退するためのいろいろなアイテム、更には警備員NPCなどを購入できるそうだ。
リアルだ。現実でもセ○ムとかあるもんな。
しかしまあ、考えてみれば納得だ。
無防備で荒らされ放題のまま家を建てるプレイヤーなんて、そういないだろう。
確かに警備アイテムはあって然るべきものだ。
「もちろん警備にお金はかかりますけど、私たちそもそも街中に家を買えないんで」
「選択肢はないということか」
「そうなります」
リコッチの案は現実的だ。
それにモンスターが権利書ではない他のレアアイテムをドロップしたら、そいつをオークションで捌いて金を稼げる可能性もある。
運良く金を稼げたら、その金で街中の土地の権利書を買ってもいいのだ。
「よし、リコッチ。モンスター狩りだ」
「はいっ!」
俺とリコッチは拳を突き合わせ、狩りに繰り出した。
野外エリアはどこも普段より人が多かった。
みんな考えることは一緒というわけだ。
そもそもどのモンスターがどこの土地の権利書を落とすかなどわからない。
情報がない今は、手当たり次第に狩っていくしかない。
戦闘力に関わるアイテムならば、強いモンスターほど強いアイテムを落とす。
だが権利書はそういう類のアイテムではないので、例えばそのへんの草原にいる初心者用モンスターがぽろっとドロップする可能性だってある。
俺たちはなるべく混んでいないエリアを選び、モンスター狩りに精を出した。
「フリージングトラップ!」
リコッチがモンスターの動きを封じる。
そこに俺がヘッドショットを食らわす。
俺のライフルはヘッドショットさえ決まれば、大抵の雑魚モンスターを一撃で仕留めることができるので、動きを止めるフリージングトラップとは非常に相性がいい。
「フリージングストーム!」
とはいえ複数のモンスターが一度に襲いかかってくると、単体攻撃しかできない俺のライフルでは手が足りない。
そんなときはリコッチの範囲攻撃スキルの出番だ。
数を倒すことが目的なので、ギリギリの勝負になりそうな強力なモンスターには挑まない。
少し格下の雑魚をひたすら倒していく。
たまにPKプレイヤーたちとも戦闘になるが、概ね撃退できている。
もちろん負けることもあるが、100戦100勝など有り得ないので想定の範囲内だ。
「センパイ!」
「どうした?」
「私、楽しいですっ」
キラキラした笑顔を向けるリコッチ。
俺と一緒に狩りをするのが楽しいらしい。
・・・思い返せば、こうしてリコッチと2人きりで狩りをするシチュエーションは初めてかもしれん。
ある意味これもデートと言えなくはないのか。
モンスター目掛けてスキルを放つリコッチの横顔を、ちらりと盗み見る。
真剣にゲームをプレイしている凛々しい顔つきだ。
「・・・センパイ?」
俺の視線に気がついて、不思議そうな顔をするリコッチ。
「すまん、横顔に見とれていた」
「え・・・えっ」
リコッチ一瞬、何を言われたのかわからない様子で、それからぱっと頬を染めて照れる。
俺は口元を緩める。
一人で黙々とモンスターを狩っている時間は少し退屈なときもあるが、2人だと全く退屈さを感じない。
むしろ楽しい。
リコッチも同じことを考えていたのか、俺たちは顔を見合わせて笑い合う。
これならいつまでだって狩りを続けられそうだ。
******
「・・・とはいえ、一週間近くひたすら狩り続けて何も収穫はなしか」
「うーん・・・」
俺とリコッチは眉根を寄せる。
リコッチが公式サイトや知人からの情報を集めてくれた。
それによると、確かにモンスターから土地の権利書はドロップする。
するが、確率はとんでもなく低いらしい。
まあ権利書は、いわば土地の一部を永久的に確保できるアイテムなわけで、ぽんぽんドロップするのは問題がある。
だから確率が低いのは当たり前だ。
当たり前なのだが・・・。
「このぶんだと、一ヶ月かけても手に入らない可能性だってあるぞ」
「ですよねえ」
マンガや小説の主人公なら、こんなもの運良く初日にぽろっと手に入ってすぐさまキャッキャウフフのスイートライフが始まるのだろうが、現実はそう甘くはない。
まあMMORPGの超レアアイテムなんてそんなものだし、俺とて普段ならそんなにアイテムにこだわらない。
しかし。
「・・・」
どことなくしょんぼりしているリコッチを見ると、このまま諦めたくはない。
何としても手に入れてやりたいと強く思う。
そんなとき、運営からメールが届いた。
【公式イベント開催のお知らせ】だ。




