69.狙撃手、転職クエストをクリアする
フルプレートの動きは遅い。
俺は走って後退すると、もう一発ヘッドショットを打ち込む。
ガイン!
やはり通用しない。
HPゲージが全く減らない。
・・・これはおかしい。
どんな相手であろうとも、仮令人知を超越した強さを誇る門番NPCであろうとも、ヘッドショットを決めればHPゲージは減る。
しかしあのフルプレートは減らない。
つまり、何らかのギミックがあるのだ。
恐らくあのフルプレートをどうにかして剥ぎ取らないと、一切ダメージが入らない仕組みなのだ。
俺は走って逃げながら思考する。
力ずくで引き剥がすのは却下だ。
というか近づいてどうこうという案は無理だ。
非力で貧弱な狙撃手など、接近すれば一撃で捻り潰されるに決まっている。
ガシャコン、ガシャコン。
ガシャコンガシャコンガシャコン。
・・・ん?
心なしかフルプレートの移動速度が上がっているような。
俺は振り返る。
いや、気のせいじゃない。
ほんの少しずつではあるが、フルプレートの歩く速度が速くなっている。
なるほど・・・時間制限つきということか。
いつまでも逃走を許してくれるほど甘い相手ではないらしい。
どうする。
力ずくが無理なら、相手が自主的にフルプレートを脱ぐよう仕向けるしかない。
だがそんなことが可能なのか?
いや、考えろ。
人はどういうときに着ているものを脱ぐ?
どういう状況になったら脱がざるを得ない?
・・・。
・・・。
・・・。
そうだ!
俺は走りながらきょろきょろと目当ての建物を探す。
こんなクエストである以上、きっとあるはず・・・あった!
俺は酒蔵に飛び込む。
ウォッカのラベルが貼ってある樽を担ぐ。
ついでにそのへんの棚からマッチを失敬すると、2階に上がる。
2階の窓から顔を出すと、ちょうど真下をフルプレートがガシャコンガシャコンと通過するところだった。
喰らうがいい!
俺は樽の中身をぶちまける。
アルコール度数が極めて高い液体が、フルプレートにどばどばと降り注ぐ。
コーホーコーホーと呼吸音を響かせてこっちを見上げるフルプレート。
次にこいつだ。
俺はマッチをまとめて束にして、一気に着火する。
燃える炎の塊を、ウォッカまみれになったフルプレートへ落とす。
ごう!と鉛色のフルプレートが火に包まれる。
コーホーコーホー!
コーホーコーホー・・・コホーコホーコホー!
フルプレートは苦しむように手を悶えさせ、それから慌ててご自慢のフルプレートアーマーを脱ぎ始める。
兜を脱ぐと、グラフィックを使い回されたヒゲモジャNPCの顔が現れる。
うむ、頭が見えれば充分だ。
俺は窓からスナイパーライフルを構えると、ヒゲモジャの頭に銃弾を叩き込む。
フルプレートヒゲモジャは電子の光となって消滅した。
「・・・ふう」
俺は大きく息をつく。
なかなか難易度の高いクエストだったが、これで達成だ。
【転職クエストを完了しました】
すぐに目の前が暗転し、俺は神殿の司祭NPCの前へ戻ってきた。
『よくぞ戻ってきた、狙撃手ケンタロよ』
司祭様が大仰な手振りで讃えてくれる。
正直疲れたが、達成感もある。
単純な力押しだけでクリアできないクエストというのは、それはそれで楽しいものだ。
『そなたに神へと至る道を示そう。さあ選ぶがよい』
司祭様が言うと同時に、メッセージが表示される。
【転職する職業を選んでください】
・アサルトシューター
・スナイパー
おおおお! ついに来た!
このときを待っていた。
俺はついに二次職になれるのだ。
これはワクワクせざるを得ない。
とはいえまずは2つの職業の説明を読まねばなるまい。
特にアサルトシューターが全くわからん。
<接近戦も行えるようになった狙撃手。本職には敵わないが、ある程度の近接戦闘スキルを有する>
・・・なるほど。
遠近両用いけるようになった狙撃手か。
器用貧乏な感じはあるが、接近されても多少は戦えるというのは大きい。
次にスナイパーだ。
というかスナイパーってただの狙撃手の横文字じゃねえかよ!
カタカナにすればいいってもんじゃねえぞ。
どうやら一次職は漢字、二次職は横文字というネーミングルールがあるらしい。
確かに短剣使いはシーフ、クッコロはナイト、リコッチはウィザード、神官はプリーストと、二次職はどれもカタカナだ。
薄々知ってはいたが、どうもこの運営はネーミングセンスに些か問題がある気がしてならない。
良心的な運営ではあるんだが・・・。
まあ何はともあれスナイパーの説明を読んでみよう。
<狙撃手の特性をより強化した職。遠距離攻撃に秀でる>
なるほど。
要は狙撃手をそのまま強くした感じか。
今より狙撃は強くなるが、接近されたら死亡という弱点は変わらんということだ。
うーむ・・・。
これはどっちにするべきだろうか?




