68.狙撃手と転職クエスト
無事改題いたしました!
今後ともどうぞよろしくお願いします!
【転職クエストを受注しますか?】
俺が”はい”を選択すると、視界が暗転して別のエリアに飛ばされた。
何もないだだっ広い丘だ。
どうやらクエスト専用エリアのようだ。
【転職クエスト1/2:的を撃ち抜け!】
・・・的とは?
見回すと、かなり遠い場所にアーチェリーの的のようなものがある。
なるほど、あれを撃ち抜けと。
狙撃手の基本が試されているクエストのようだ。
俺は地面に腹ばいになると、スナイパーライフルをセットする。
苦楽を共にしてきた自慢の相棒だ。
スコープを覗く。
ふむ。どうやら距離にして1kmもない。700~800mといったところか。
これなら的が静止していれば余裕だ。
今の俺は完全に静止した標的なら、1kmを超えてもヘッドショットを狙えるくらいの精度を誇っている。
これもスキルポイントをどんどん射程距離に割り振っているおかげだ。
慎重に照準を合わせる。
トリガーに指をかける。
引く。
ターン。
的に穴が空いた。命中だ。
と、また視界が暗転して、別のエリアに飛ばされた。
今度は街中だ。いろいろな建物がある。
狙撃手の視点で言うなら、遮蔽物が多いということだ。
【転職クエスト2/2:10人の暴漢を倒せ!】
暴漢?
と、大通りをヒゲモジャの山賊のようなNPCが歩いている。
なるほど、あれが暴漢か。
・・・ん? 反対側にも全く同じ顔のヒゲモジャNPCがいる。
つまりあのヒゲモジャどもを10人キルしろと。
それはいいんだが、グラフィックを使い回すなよ。
まあ単なるクエスト用のやられ役に、いちいち異なったグラフィックを割り当てるのも無駄な労力かもしれんが。
俺は膝立ちになってライフルを構え、一番近くにいるヒゲモジャにヘッドショットを食らわす。
すると他のヒゲモジャどもがナタのような武器を構えて、こちらに走り出す。
なるほど。
これは最初のクエストと違って、迫りくる敵に狙撃手としてどう対応するかが問われているようだ。
同じ場所に留まっていては、すぐに捕まって殺されてしまうだろう。
俺は接近する2人目のヒゲモジャを撃ち殺すと、近くの建物に入った。
何人か追いかけてきている。
俺は2階に上がると、階段の下まで迫ってきた3人目のヒゲモジャを撃ち抜く。
そして廊下を駆けて適当な部屋に入る。
部屋に入ろうとしてきた4人目のヒゲモジャをヘッドショットで葬るが、5人目、6人目が立て続けに入ってくる。
立てこもるのは無理だ。
俺は咄嗟に窓から飛び降りる。
少し落下ダメージを受けてしまったが、所詮は2階なので大したことはない。
窓から顔を出した5人目を狙撃して散らす。
俺はそのまま大通りから細い横道に入る。
追いかけてきた6人目に向かってぶっ放し・・・しまった、ボディに当たった。キルできていない。
そのへんの木の樽を蹴り転がす。
樽を乗り越えようとするヒゲモジャのボディに、もう一発打ち込んでキルする。
横道を抜けて、反対側の裏路地に出る・・・うお!
目の前に7人目のヒゲモジャがいた。鉢合わせてしまった。
ヒゲモジャがナタを振るう。
俺は咄嗟に避けようと・・・いや、無理だ。
この攻撃は食らうしかない。
ならば。俺は即断する。
ナタが俺の身体にヒットする。
それと引き換えに、超至近距離からライフルをぶっ放す。
銃弾は誤たずヒゲモジャの頭に命中して消滅させた。
・・・危なかった。
俺のHPゲージは残り1割ほど。
ナタが小ぶりだから即死はしないだろうと判断したが、間違ってはいなかったようだ。
とはいえもう一撃受けたら死ぬ。
裏路地の前と後ろから、それぞれヒゲモジャが走ってくる。挟み撃ちだ。
落ち着け。焦るな。
俺は照準を合わせると、前から迫ってくるヒゲモジャを撃ち抜く。
もう片方のヒゲモジャが、俺のすぐ後ろでナタを振り上げる。
俺は手近な建物に近づくと、扉を思い切り開く。
ナタはガツッ!と音を立てて扉にめり込んだ。
俺はその間に数歩下がると、ライフルを構えてヘッドショット。
9人目のヒゲモジャも電子の光となって消滅した。
よし、残り一人だ。
ガシャコン、ガシャコン。
・・・何か妙な音がする。
俺が嫌な予感を覚えながら振り返ると、鉛色に輝くフルプレートアーマーがゆっくりと歩いてきた。
よく城の廊下に飾ってあるような全身鎧だ。
え、何あれ?
10人目はあのフルプレートなの?
何でナタが光ってるの? ライトセ○バーなの?
コーホーコーホー呼吸してるんだけどI am your fatherなの?
とりあえず動きが遅いので、俺はよく狙ってヘッドショットを打ち込む。
ガイン!
なん、だと・・・。
必殺のはずのヘッドショットが兜に弾かれた。
フルプレートのHPゲージは1mmも減っていない。
・・・。
・・・。
・・・。
どうしよう?




