67.狙撃手とスナイパーライフルの歴史
タイトルを、皆様のご意見を参考にして以下の通り改題することにしました!
ご意見をくださった方、本当にありがとうございます!
『社畜のおっさんが狙撃手になってPKしたりされたりゲームを楽しむ話』
明日あたりに改題しますので、ブクマしてくださっている方は誤って削除しないようお願いいたします!
今後とも更新がんばりますので、応援よろしくお願いします!
俺は久しぶりにシカ山に足を伸ばしていた。
今日はPKではなくモンスター狩りが目的だ。
シカ山はシカの突進に加えて、飛翔モンスターであるハゲワシが厄介な場所だ。
しかし俺も成長した。
充分な遠距離からシカを仕留めたあと、降下してくるハゲワシも落ち着いてヘッドショットを決めることができるようになった。
飛翔モンスターは動きが速いため、頭を狙うのは難易度が高い。
しかし攻撃のために降下してくるときは当然、俺に向かって一直線の軌道を描くため、その瞬間だけは狙いやすいのだ。
恐らく攻略サイトを見れば、あのハゲワシの簡単な仕留め方も掲載されているのだろうが、独力で仕留められるようになった自分を褒めてやりたい。
そうして何匹目かのハゲワシを仕留めたとき、スキルポイントが手に入った。
よし、これでまた一歩、転職に近づいた・・・む?
ピロン!と音が鳴り、メッセージが表示された。
【転職クエストを受注できるようになりました】
・・・!
転職クエスト。
ついに待ち望んでいたものが来た。
俺は年甲斐もなく、一気にテンションが上がる。
ついにただの狙撃手から二次職になれるのだ!
射程距離は伸びるだろうか? 威力は? 新しいスキルは手に入るのか?
攻略サイトを見ないプレイをしている俺にとって、これは非常にワクワクする要素だ。
いや、だが待て。落ち着こう。
喜ぶのはまだ早い。
転職クエストをクリアする必要があるのだ。
こうしてはいられない。
俺はモンスター狩りを切り上げて、いそいそと街へ戻った。
******
相変わらず人相の悪いチンピラNPCに金を払い、俺は街中へと侵入する。
いつも通り多くのプレイヤーたちで賑わっている。
大人気ゲームの看板に偽りなしだ。
楽しいもんな。よくわかる。
さて、確か転職ガイドなるNPCがいるはず。
多くのNPCがいる噴水広場に行ってみよう。
いつ見ても見事な噴水だ。
まるで本物の水のように飛沫が陽の光を反射して煌めいている。
そして・・・いた。
頭の上に転職ガイドと名前がついているNPCがいる。
『あなたは狙撃手の転職条件を満たしています。神殿の司祭に話を聞いてください』
こんなことを言われた。
しかし・・・神殿?
鉄と火薬の申し子のようなライフルが、神のお膝元である神殿。
違和感しかない。
まあそれも神殿に行けばわかるか。
そういうわけで噴水広場から大通りを更に進んで、神殿に行き着く。
白くて大きな柱がいくつも立ち並ぶ、古代の神殿のような建物だ。
NPCはちらほらいるものの、プレイヤーの姿はあまりない。
まあ、そりゃそうか。転職なんてしょっちゅう発生するイベントじゃないもんな。
俺も下手をすると、これが最初で最後の訪問になるかもしれん。
白い柱の間を進み、神殿の奥へと進んでいくと、長椅子が並ぶ広間へと行き着いた。
祭壇があり、その向こうに司祭と思しきおじいさんNPCがいる。
白くて長い帽子と、ゾロっとした法衣を着込んでいるから間違いないだろう。
よし、話しかけるとしよう。
『よくぞ参った、狙撃手ケンタロよ』
おお、荘厳な声だ。さすがは司祭。
早く俺を転職させてくれ。
『知っての通り、狙撃手には神より与えられしスナイパーライフルの力を取り戻すという使命がある』
?????
知らないが?
え、何? ライフルって神様から与えられたの?
俺はいつの間にそんな崇高な使命を授かってたの?
ふーむ。
よくわからないまま進めるのもアレなので、フレンドチャットでリコッチに聞いてみよう。
『なあリコッチ。転職クエストが発生したんだが』
『おおー! センパイおめでとうございますっ! やったあー!』
我がことのように喜んでくれるリコッチ。
こんなふうに言われると俺も少々嬉しい。
『しかし神殿の司祭が頭のおかしいことを言い出して困っている』
俺がメッセージを送ると、やや間があって返信が返ってきた。
『センパイ、もうちょっとストーリークエストやったほうがいいですよー』
何やら呆れられてしまった。
リコッチがこの世界の歴史を説明してくれる。
この世界は昔、剣と魔法しか存在しないコテコテのファンタジー世界であったらしい。
しかしどこからか侵攻してきた魔族との戦争により、人間たちは窮地に追い込まれた。
そこで神が、魔族に対抗するすべとして人間に与え給うたのが、誰も見たことがないスナイパーライフルという武器だった。
スナイパーライフルは弓や魔法よりも遥かに遠くから、弓や魔法よりも高い威力でもって攻撃できる、まさに神の武器という名に恥じない代物だったそうだ。
人間はその力で魔族たちを追い払い、世界に平和を取り戻した。
神様もケチケチしないで弾道ミサイルでも与えてくれたら良かったんじゃないかと思うが、さすがにゲームの世界観が壊れてしまうから、ライフルあたりが運営的にギリギリのラインと判断したのだろう。
だが時代が下ると、人間たちは徐々にスナイパーライフルの扱い方や製造を忘れてしまった。
そして今では、かつての神の武器からは程遠い劣化したスナイパーライフルしか残っていないそうだ。
つまり俺たちプレイヤーが使っているのは、その劣化ライフルであると。
そして狙撃手を選択したプレイヤーたちには、かつて神の武器としてあらゆる武器の頂点に君臨した、神代のスナイパーライフルを取り戻すという崇高な使命があるらしい。
・・・というのは、ストーリークエストを順番にやっていれば知っていて当然のことらしい。
どうやらストーリークエストは、このEarth World Onlineの世界の歴史をなぞって進行するようだ。
まあな。
そりゃあリコッチも呆れるわけだ。
俺はストーリークエストなんて全部飛ばしているからな・・・。
ともかくこの荘厳な司祭様の頭が決してアレなわけではない、ということが理解できた。
『リコッチ、助かった』
『いえいえ。今の全部、攻略サイトに書いてあることなんで!』
『そうか。もし転職クエストで詰まったら、また相談させてくれ』
『もちろんです! センパイふぁいとー!』
可愛い彼女から応援されてしまった。
頑張らねばなるまい。
続けて司祭に話しかけると、メッセージが表示される。
【転職クエストを受注しますか?】
もちろん”はい”だ。




