53.狙撃手とギルド戦の終わり
4つ目のサブ石を破壊した我らが脳筋軍団は、いよいよ敵本陣に攻め入った。
敵の防衛ラインの後方に、巨大なメイン石が見える。
あれを破壊すれば俺たちの勝利だ。
ジャスティスウィング軍はメイン石の守備隊を除く全軍が合流しており、士気も最高潮だ。
ちなみにどれほど優勢でも、メイン石の守備隊は必ず残す。
敵の奇襲で万が一にでも逆転されたら目も当てられないからだ。
「敵軍は残り少ない! 一気に突破するぞ!」
「戦力を中央に集中しろ! 突撃だ!」
「うおおおおお!」
「いくぞおおおお!」
一気呵成に突撃を始める脳筋部隊。
左右から敵の弓兵が矢を降らせてくるが、散発的だ。
敵も数が相当減っているのだ。
「うおりゃあああ!」
「死にさらせえええ!」
「前回の雪辱じゃああ!」
味方は一点突破の勢いで、敵の防衛ラインを中央から食い破っていく。
ガチムキの前衛が主力であるジャスティスウィング軍は、この当たり方が強い。
「下がるな! 守れっ! メイン石に近づけるな!」
「だ、ダメだっ! 止まらねえ!」
「ま、守りきれねえ・・・がはっ!」
対して敵軍は弓兵が主力であり、前衛の防衛線はさほど強固ではない。
中央を突破され、すでにメイン石のHPゲージが減り始めている。
サブ石をきちんと4つ破壊しただけあって、敵のメイン石には面白いようにダメージが入っていく。
とはいえ敵の弓兵は少ないながらもまだいる。
俺はそんな敵たちを、味方を肉壁にしながら遠距離から一人ずつキルしていく。
犠牲になった味方には悪いが、狙撃手の戦い方はこれなので勘弁してほしい。
ちらりと前線を窺うと、敵の防衛ラインはもう壊滅状態だ。
メイン石もじき破壊できるだろう。
勝敗はもはや覆るまい。
だが戦いはまだ終わっていない。
勝負が決する最後の瞬間まで、俺は自分に与えられた役割を黙々とこなした。
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【ギルド戦が終了しました】
【”ジャスティスウィング”の勝利です。おめでとうございます】
『うおおお!』
『うおおおおお!』
『うおおおおおおおおお!』
勝利の雄叫びが響き渡る。
誰もが喜びを隠そうともしない。
『勝った! 勝ったぞおおお!』
『リベンジだああ! 暗ダに勝ったあああ!』
『ジャスティスウィング最強おおお!』
『諸君、復唱したまえ! 筋肉最強!』
『筋肉最強!』
『筋肉最強!』
『筋肉最強!』
ギルド領地の中庭で喜びに舞う筋肉たち。
もちろん俺も嬉しい。
最後はともかく、それなりに勝利に貢献できた自負があるからだ。
「ケンタロ! ケンタロ! やったぞ!」
プラチナブロンドを靡かせて女騎士が駆け寄ってきた。
と思うと、むぎゅーっと俺を抱きしめた。
「クッコロ。おいクッコロ」
「我々の勝利だ! ケンタロは私の最後の言葉を守ってくれたぞ!」
「落ち着けクッコロ」
「よくやった! 私はケンタロを誇りに思う!」
喜色満面で俺を抱きしめるクッコロ。
まあいいか。
誇りに思うなんて言葉、生まれて初めてかけられたかもしれん。
・・・まあ、その。正直、嬉しくないわけじゃあない。
「いや。実際、僕もケンタロはよくやってくれたと思う」
「ダンチョー」
「ははは。クッコロ、そろそろ彼を放してやったらどうだい?」
「あっ・・・! す、すまないケンタロ。つい・・・」
顔を赤らめて俺を解放するクッコロ。
俺は首を振る。
「俺がよくやったと思うなら、そいつはクッコロのおかげだ。身体を張って俺を守ってくれたこのナイトこそ、俺は誇りに思う」
「ケンタロ・・・」
じーんと感じ入るクッコロ。
「だからダンチョー、クッコロのことも褒めてやってくれ」
「もちろん。ケンタロもクッコロも、本当によくやってくれた。2人が我らジャスティスウィングを勝利に導いてくれたんだ」
「ダンチョー・・・」
クッコロは嬉しそうに笑う。
戦場での凛々しい顔つきとは違い、花が咲いたような笑顔だった。
「むー。私も結構がんばったんですよー」
ダンチョーの後ろからリコッチがひょこっと顔を出した。
うん、それには同感だ。
敵より圧倒的に人数が少ない弓・魔術隊だが、人数のわりに奮戦していたのは間違いない。
「リコッチや弓・魔術隊の皆もよく頑張ってくれた。脳筋が多いギルドだから、どうしても負担をかけてしまって済まない」
「あははー。いいんですよ、ダンチョー。好きでやってるんですから」
けらけらと笑うリコッチ。
楽しそうなその様子を見ると、本当に負担とは感じていないようだ。
「ケンタロ、よくやったぜ!」
「お前さんがいなけりゃ最後の奇襲で危なかったぜ!」
「97位は伊達じゃねえな!」
「もうずっとうちに入っちまえよケンタロ!」
うおお・・・!
集まってきた脳筋たちにもみくちゃにされる。
体育系の部活のようなノリだ。
肩や背中をバシバシと叩かれる。だが嫌な気分じゃない。
一体感というやつだろうか。
皆で一つのことを成し遂げる高揚感。
なるほど、皆こんな風にゲーム内で絆を深めていくんだな。
こういう楽しみ方もあるのだ。
そして俺は今日、間違いなく楽しかった。
こうして俺の初のギルド戦は終わりを告げた。




