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52.狙撃手と攻撃隊

俺はときに草むらに身を伏せ、ときに物陰に隠れ、戦いを避けながら進んだ。

一人で敵と遭遇してどうにかなると思うほど自惚れてはいない。

豆腐よりも柔らかい狙撃手など、敵と出会ったら即座に死あるのみだ。


そうしてようやく前線の攻撃隊に合流すると、そこは激戦区だった。

3つ目のサブ石を死守せんとする敵と、それを打ち破ろうとする味方が激しい攻防を繰り広げていた。


「押し込まれるな! 守れっ!」

「脳筋バカどもの好きにさせるなっ!」

「バラけるな! 戦列を維持しろ!」


敵は剣士職を中心に防衛線を展開しているが、味方のほうが圧倒的に脳筋の数が多い。


「うおおおお! 死にさらせえええ!」

「陰キャの暗ダどもを蹴散らせえええ!」

「突撃いいいい!」


味方の脳筋たちはやたらと士気が高い。

まあ優勢だからな。

前回ボロ負けした雪辱を晴らせるとなれば、気合も入るだろう。

そして先頭切って剣を振り回しているのは赤髪レッド。随分と活躍しているようだ。


やがて敵の防衛線は崩壊し、頼もしき脳筋たちはサブ石をガンガン殴り始める。

もちろん俺もぼんやりしているわけではない。

部隊の後方から射程の利を活かして、逃げ出す敵に追い打ちを食らわせているのだ。


『3つ目のサブ石を撃破!』

『残るは1つだ。そのまま前進!』

『はっ、ダンチョー!』

『勝勢だ。サブ石の守備隊は全員、攻撃隊に参加したまえ。守りはメイン石だけ残っていればいい』

『はっ、ダンチョー!』


ちなみに銀髪イケメンダンチョーは、味方の本陣で待機しながら指揮を取っている。

総大将は前線に出ないのがセオリーだ。

だから最前線の攻撃隊は、実質的に赤髪レッドが率いる形になっている。


そして勇敢なるレッドは脳筋たちを率いるのが得意なようで、気合の入った表情で進軍している。

あれはあれで信頼を得ているようだ。

まあ見ていて頼もしいしな。




4つ目のサブ石で攻防戦が始まった。


敵は後がないので必死だ。

しかしジャスティスウィングの勇者たちは勢いが違う。

敵の防衛ラインをどんどん押し込んでいく。


どうにも敵の前衛が少ないのが気になるが・・・まあこんなものだろうか。

そう思ったとき、右のほうでいくつも悲鳴が上がった。


『右翼に敵の弓兵隊! 数が多い! 集まってる!』

『右からやられてる! 援軍を!』

『人を回せ! 一気に制圧する!』

『うおおお任せろ!』


・・・?

俺は違和感を覚えた。

地の利を得ていない状態で、遠距離職を集結させてそんな目立つことをするだろうか?


最初こそ弓の射程で多少は有利を取れるだろうが、脳筋が集まって突撃すればすぐに蹴散らされるに決まっている。

敵とてベテランのギルドだ。

きちんと地の利を得たうえで、遠距離から攻撃させてこその遠距離職。

果たしてこんな愚を犯すだろうか?


そして前線を支えるには少ない敵前衛。

これは恐らく・・・。


『こちらケンタロ! 後方に人を寄越してくれ!』

『はあ!? てめえ、馬鹿なこと言ってんじゃ』

『奇襲だ! 後ろから来る。弓隊はオトリだ!』

『なにい!?』


俺は振り返って後方の草原を凝視する。


・・・。

・・・。

・・・いた!


敵の姿は見えないが、背の高い草がガサガサと揺れている。

その揺れはどんどん近づいてくる。

あの規模からいって30人以上・・・40人ほどか?

奇襲をするからにはステルス持ちの短剣使いだろう。


味方の攻撃隊は、前方に脳筋が集中しており、脆い遠距離職は後方で支援を行っている。

敵の奇襲部隊は間違いなく、その脆い後方を突くつもりだ。


『左後方より敵接近! 恐らく短剣使いの集団だ! 後ろから食い破るつもりだ』

『くそっ! 人を回せ!』

『もう向かってる! 少し耐えろ!』

『了解!』


俺は草むらの揺れているあたりに向かって一発ぶっ放す。

「ぎゃっ!」と声が聞こえたので命中はしたのだろうが、キルできたかどうかは不明だ。


そして敵が草むらから飛び出してくる。

数十人おり、やはり大半が短剣を構えている。


「ぐわっ!」

「ぎゃあっ!」


味方の弓兵や魔術師が次々に倒されていく。

弓・魔術隊はすでに大幅に数を減らしていたため、この奇襲に対抗できていない。

反撃はしているが焼け石に水だ。


「センパイ! 下がってください!」

「リコッチ!」


栗色の髪を揺らして、リコッチが俺の前に割り込んできた。

すでにHPゲージが半分ほど減っている。


援護してやりたいが、ここまで接近されると狙撃手の俺は何もできない。

近接距離のスナイパーライフルほど役に立たないものはないので、リコッチの言う通り下がる判断が正しい。


「”97位”がいたぞ! 殺せ!」

「おっさんだけは逃がすな! 殺せ!」

「よくも散々やってくれたな! 殺せ!」

「リコッチと仲良しだぞ! 殺せ!」


・・・。

やべー奴らの恨みを買ってしまったようだ。


「フリージングストーム!」


リコッチの氷の嵐が炸裂する。

だが敵も馬鹿じゃない。分散して被害を抑えている。


「くあっ・・・!」


3人の短剣使いから攻撃を受けて、さしものリコッチも電子の光となって消滅した。

上位プレイヤーといえども、たった一人で無双できるわけではない。

それはこのゲームの良いバランスといえるのだが、そんなことに感心している場合じゃない。


俺のほうにも短剣使いたちが殺到し・・・。


「うおおおお! うちの大事な後衛たちに何さらしとんじゃあああ!」

「イワしたるぞわれえええ!」

「陰キャどもを蹴散らせえええ!」


応援に来てくれた脳筋たちが、横合いから敵の短剣部隊を襲った。

筋肉の群れは次々と短剣使いたちをすり潰していく。

やはり接近戦では無類の強さを誇るようで、味方の脳筋たちはあっという間に敵の奇襲部隊を殲滅した。


「助かった」

「なあに、ケンタロが奇襲に気づいてくれたおかげだぜ!」

「お前さんがいなけりゃ優勢をひっくり返されてた!」

「ケンタロが俺たちを救ったんだ!」


バシバシと肩を叩かれる。

そう素直に褒められると少し照れくさいな。

だがまあ、悪い気はしない。


『敵の奇襲部隊を排除した!』

『右翼の弓兵も追い払ったぜ!』

『守備隊がもうすぐ攻撃隊に合流する』

『ようし、総攻撃だ!』

『うおおおおお!』


いよいよ最終盤だ。

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