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49.狙撃手とギルド戦スタート

【ギルド戦エリアに転送されるまであと5分】


俺の目の前にメッセージが表示される。

ギルメンの皆も同じだろう。


ギルド戦への参加申請をしたメンバーは、どの場所にいようと時間が来たら勝手に転送される。

そしてギルド戦エリアに転送されたら、その瞬間にスタートだ。

準備時間なんて親切なものはない。


ちなみにジャスティスウィングは数百人規模のギルドだが、当然ながら全員が参加するわけじゃない。

非戦闘職はエリア外で応援に回るし、リアルの事情で参加できない層も一定数いる。

それとごく少数だが、ギルド戦に興味がなくて狩りだけやっているプレイヤーもいる。

ダンチョーは個々の事情やプレイスタイルを尊重するので、参加・不参加は完全に自由制としているようだ。



【ギルド戦エリアに転送されるまであと1分】



とはいえジャスティスウィングはPKKギルド。

参加者の比率は平均より多く、また士気も高い。

いや士気が高いのは脳筋しかいないせいか・・・。


ともあれ俺もやる気に満ちている。

ワクワクしているし、少しばかり緊張もしている。

こんな気持ちは社畜をやっていても味わえないので、ゲームを楽しんでいると強く感じる瞬間だ。



【ギルド戦エリアに転送されます】



一瞬、目の前が暗転し、気づいたときには広い草原にいた。

ここがギルド戦エリア・・・うお!? 何だこのバカでかい石は!?


目の前に直径10mに迫ろうかという巨大なクリスタルが鎮座していた。

クリスタルの下半身は地面に埋まっており、ちょうど半球の形だ。

そしてクリスタルの頭上にはHPゲージが表示されている。


な、なるほど。これがメイン石か・・・。

確かにこれだけ大きくないと、複数人が攻撃できない。

とはいえちょっと驚くような大きさだ。


「センパイっ、今日はがんばりましょー!」


リコッチがテテテっと駆けてきた。

緊張はしていないようで、にこにこ笑顔だ。

まあベテランプレイヤーだしな。


「リコッチ、サブ石はどこにあるんだ?」

「あっち方面とあっち方面に2つずつですねー。サブはこんなにおっきくないんで、まだ守りやすいですよー」


続いてリコッチは遠くを順番に指差した。

遠目に小高い丘がいくつか見える。


「ああいう丘が全部狙撃ポイントですっ。たぶん敵は早々にあのへんに陣取ってくるんで、センパイ頼りにしてます!」

「善処はする」


ふと気がつくと、リコッチ以外にもたくさんのプレイヤーたちが俺の周りに集まっている。

幹部ではない一般メンバーたちのようで、全員が初対面だ。

・・・なのだが、大半が暑苦しく爽やかな笑顔を向けてくるので、あまり初対面という気がしない。

鍛冶屋のカジと似た生き物がたくさんいて、ちょっと心にクる光景だ。


「よう、お前さんが”97位”か!」

「ダンチョーとクッコロが期待してたぜ」

「俺らも期待してるぜ! なあ?」

「おうさ! 陰キャどもに目にもの見せてやってくれ」


はっはっはと笑う脳筋たち。気のいい連中のようだ。

やはりというか大半が男プレイヤーだが、そりゃそうだろうと思う。

この中で生きていける女プレイヤーなど、筋肉フェチか何も気にしない天然ちゃんだけだろう。

・・・ん? するとリコッチは天然ちゃんか?

ふーむ。


パンパン!と甲高く手を叩く音が聞こえた。

ダンチョーだ。


「諸君、挨拶もいいが戦いはすでに始まっている。各自、攻撃隊と守備隊に分かれて配置につきたまえ」

「おっと、いけねえ!」

「そうだった、そうだった」

「健闘を祈るぜ、”97位”!」

「ああ、そっちもな」


リコッチも俺に向かってぴっと手を挙げる。


「じゃーセンパイっ、行ってきます!」

「武運を祈る」

「センパイもです!」


リコッチは明るい笑顔でそう言うと、パタパタと駆けていった。

そして入れ替わるようにプラチナブロンドの女騎士がやってくる。


「ケンタロ、私たちも急いだほうがいい」

「わかっている。移動ポイントはすでに決めてある」

「頼もしいな。では出陣しよう」


俺は相棒のスナイパーライフルを肩に担ぐ。

うん、程よい緊張感だ。


狙撃手ケンタロ。これより行動を開始する。




俺とクッコロは、背の高い草むらの間を身を屈めて移動する。

遠目に見える小高い丘には、すでに敵の弓兵と思しきプレイヤーたちが数人、陣取っている。


当然、俺たちも味方の陣地に近い丘へ移動・・・するわけではない。

丘の上に登れば狙撃はしやすいが、目立つ。

こっちの居場所を宣伝して回るようなものだ。

何せ俺の護衛はクッコロ一人なので、数を頼りに丘へ攻め入られたら逃げ場がない。


だから俺は草むらの中で膝を突き、ライフルを構える。

見上げる形になるから少々難易度は上がるが、それでも狙撃を外す距離ではない。

何より発見されにくいというのが大切なのだ。


スコープを覗くと、敵の弓兵が見える。

あれが暗黒のダークネスとかいうたわけたギルドのメンバーか。

すでに勝ちを確信しているのか、へらへらとした笑いを浮かべている。


このギルド戦の勝敗はわからんが、お前はここで退場だ。


照準を合わせる。

トリガーを引く。


ターン。


へらへらしていた弓兵の頭が爆散した。

周囲の他の弓兵たちが、ぎょっとした様子で警戒を始める。

だが悪いな。ライフルの射程は長いんだ。

お前たちの目視範囲に俺はいない。


ターン。


敵の弓兵がもう一人消滅する。

敵が右往左往している。

弓兵の護衛と思しき近接職が、守るような動きを見せ始める。


しかし肉の壁を形成するには人数が足りない。

隙間だらけだ。

俺は立て続けに敵の弓兵をキルする。


数人の弓兵を失った敵は、大慌てで丘を放棄して撤退していった。


「・・・見事なものだ、ケンタロ。97位は伊達ではないな」

「まだ始まったばかりだ。次の丘を狙う」


感心の眼差しを向ける女騎士を引っ張って、次のポイントに移動する。


最初は上手くいった。順調な滑り出しだ。

しかし自陣に近い丘から順番に潰していくわけで、それはすなわち時間を追うごとに敵地の奥深くに入り込んでいくことを意味する。


本番はここからなのだ。

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