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45.狙撃手、ギルドに入団する

翌日、俺はジャスティスウィングに入団した。

といってもフレンド申請のときと同じように、入団申請を受理しただけだ。

実にあっさりした手続きだ。


『諸君! 我らの新しい同胞を紹介しよう!』

『おっ、誰だ誰だ?』

『おっさんだろおっさん!』

『ライフル使いだろ!』


早速ギルドチャットのウィンドウを開くと、ダンチョーの一言を皮切りに、大変な盛り上がりを見せていた。


『公式イベントにおいてスナイパーライフルで初のランクイン! 漆黒の銃弾! ”97位”狙撃手ケンタロだッッッ』

『うおおおおお!』

『きtらああああああああああああああ』

『ケンタロよろしくにゃ~』

『おっさん! おっさん!』

『ふん! 俺は反対したんだぞ!』

『レッドの意見は誰も聞いてないにゃ』

『うるせえ! にゃとかきもいんだよ!』

『にゃ!』

『決闘申請を飛ばすんじゃねえええ』

『黙りたまえ諸君。処すぞ』

『はっ、ダンチョー!』

『はっ、ダンチョー!』

『はっ、ダンチョー!』


大変やかましい。

仲が良さそうで何よりだ。

なるほど、ギルドとはこういう雰囲気なのか。

だが漆黒の銃弾は何なんだよ。変な二つ名はやめろ。


『ケンタロ、挨拶したまえ』

『あー、ケンタロだ。助っ人として善処する。よろしく頼む』

『おっさん固えよ! もっとフランクでいいぜ!』

『そうか? それなら一つ聞いてもいいか?』

『おうとも!』


俺は気になっていた疑問をチャットで打つ。


『知っての通り俺はPKプレイヤーだが、何でPKKギルドの皆にこんなに歓迎されているんだ?』


・・・。

・・・。

・・・。


静まってしまった。

何かマズいことを聞いたのだろうか。

いきなりやってしまったか・・・。


と、唐突にチャットが勢いよく流れ始めた。


『そりゃもちろん、うちのギルド脳筋しかいねえからだよ!』

『ガチにゃん。うちら8割が脳筋にゃん』

『毎回弓使いの大群にボコられるんだよなあ』

『いやな、次の対戦相手は弓使いが多いギルドなんだよ』

『敵の陰キャどもを仕留めてくれるんだろ? 神かよ!』

『頼りにしてるぜ! 漆黒の銃弾』

『おいその二つ名はやめろ』


どうやらこういうことらしい。

ジャスティスウィングは団長が筋肉好きで、なおかつPKKギルドということもあり、敵を直接殴り倒したい脳筋どもがこぞって集まる筋肉バカの巣窟と化しているらしい。

総数は数百人を誇るが8割が近接職で、残り2割に魔術師や弓使い、生産職が凝縮されているそうだ。

そういうわけで正面からのぶつかり合いでは無類の強さを誇るが、相手に遠距離職が多いときは毎回苦戦するとのこと。


『ダンチョーが筋肉好きなのが悪いにゃん』

『お前も好きだろ』

『好きにゃん!』

『むしろ筋肉が嫌いなやつはうちのギルドいねえよ』

『はっはっは! そりゃそうだ!』

『諸君、復唱したまえ。筋肉は全てを解決する!』

『筋肉は全てを解決する!』

『筋肉は全てを解決する!』

『筋肉は全てを解決する!』


やべーギルドに入ってしまった。




******




さて、明日はギルド戦ということでこれから幹部会議を行うらしい。

俺は幹部ではないが秘密兵器ということで、参加してほしいと要望があった。


ジャスティスウィングのギルド本拠地は、中世の城のような建物だった。

とはいえファンタジー風ゲームなので、実用よりも見た目を重視したものだ。

ちなみにギルド本拠地というのは、ギルド資金を大量に使って建設するもので、当然ながらギルドの一員しか立ち入れない。

見た目も城や西洋屋敷、和風屋敷、ただの家やメルヘンなキノコハウスなど様々なものから選択できる。


俺が物珍しそうにきょろきょろしながら城内を歩いていると、あちこちでギルドメンバーが挨拶してくれる。

なるほど、確かに逞しい風体のプレイヤーが多い。

そして圧倒的男率。

やはり正面きって敵をぶち殺したいと考える層は男プレイヤーのほうが多いということか。


「さあケンタロ、入ってくれ」


ダンチョーに案内されたのは、白い大理石風の円卓の会議室だった。

おお、雰囲気があるな。

まるで自分が円卓の騎士にでもなったかのようだ。


「よう、漆黒の銃弾」

「おいやめろ」

「はっはっは! ようこそケンタロ」

「共に戦おう、同胞よ!」


幹部と思しき男たちが気持ちのいい笑顔で歓迎してくれる。

うん、いいギルドだ。むさ苦しいのはさておき。


「歓迎する、ケンタロ」


いや、紅一点がいた。

女騎士だ。

プラチナブロンドの髪と、それに似合う白銀の鎧に身を包んだ女。

加えて上背もあるため、思わず見惚れるほど格好いい。


女騎士は凛々しい顔つきで俺を見つめる。


「私はクッコロだ。よろしく頼む」

「何て?」

「クッコロだ。よろしく頼む。」


クッコロ? 何それ名前なの?

その名前で女騎士なの? 俺はお前を呼ぶたびにクッコロ連呼しなきゃいけないの?


「ふぅむ。ケンタロは少々筋肉が足りないな。私が鍛えてやろうか?」

「・・・いや、遠慮しておく。狙撃手に必要なのは筋肉じゃないんだ」

「何を言う! 筋肉は全てに通ずるという言葉を知らないのか?」


こいつも筋肉フェチかよ。勘弁してくれ。

横でダンチョーが深々と頷いているのがうざい。

とはいえクッコロ騎士は悪い奴ではなさそうで、俺の肩をぽんと叩くと自分の席に戻っていった。

俺が馴染みやすいように気を使ってくれたんだろうな。恐らく。


「そういえばダンチョー、リコッチは幹部じゃないのか? 確か貢献度が高いと言っていたはずだが」

「ああ、幹部に誘ったが断られてしまってね。役職が付いていないほうが遊びやすいんだそうだ」


そういうものか。

まあわからんでもない。

会社でも役職がついている人間は、権限がある代わりにいろいろと制約も多いものだ。

リコッチも自由にゲームを楽しみたいのだろう。


皆が円卓を囲んで席についたのを見て、ダンチョーが表情を引き締める。

ちなみに赤髪を逆立てたレッドもいるが、案外大人しくしている。

ダンチョーが言っていた通り熱しやすく冷めやすい性分なのか、もう俺に対して、少なくとも表面上は敵対心を向けてくることはない。


皆が静粛にする中、ダンチョーが口を開く。


「ではこれより、ジャスティスウィング幹部会議を始める。議題は明日のギルド戦についてだ」

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[一言] マッスルマッスルゥ!マッスルウィング! ひらがなをにゅうりょくしてください き ん に く
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