32.狙撃手とイベントランキング
【功績に応じて報酬が配布されます】
レイド級を倒すと、こんなメッセージが表示された。
報酬?
俺は一発しか攻撃していないが、何かアイテムがもらえたのだろうか。
『ジャイアントイノシシの頭蓋骨』
・・・頭蓋骨? 何だこれは。
妙に生々しい名前だが、どんな価値があるのかも何に使うのかも全くわからない。
まあいいか。もらえるものはもらっておこう
「やったあああ!」
「勝ったあああああ!!」
「レイド級討伐だあああ!」
一方、集結したプレイヤーたちは大いに湧き上がっていた。
数千人のプレイヤーを動員した一大クエストだ。
達成したとなれば喜びもひとしおだろう。
皆が皆、手を取り合って喜んでいる。
しかし、やがて。
「・・・」
「・・・」
「・・・・・・」
皆が気づく。
そう、この場には大量の一般プレイヤー、PKプレイヤー、そしてPKKプレイヤーたちが入り乱れていることに。
それぞれが顔を見合わせて、困惑した表情になり、やがて緊張感を高めていく。
ピリピリとした雰囲気が周囲に漂う。
誰かがぽつりと「殺すか」と言った。
血で血を洗う地獄が始まった。
「まっ、待て! 俺たちはもう帰るところ・・・」
「問答無用じゃあああ!」
「クソPKプレイヤーどもの非道を止めろ!」
「うおおおお! 殺せええええ!」
理性を廃棄したかつての勇者たちは、畜生にも劣る所業で手を血に染めていく。
誤ってフレンドらしきプレイヤーをぶち殺しているヤツもいるが、誰も気に留めない。
この世のものとは思えない惨状であった。
俺は畜生に堕ちたゴミどもを不憫に思い、次々と安らかな眠りに就かせてやったが、目ざといゴミに見つかって火だるまにされて死んだ。
スタート地点に死に戻りした俺は、もはやあの人外魔境に近づく気にもなれず、初心者エリアで生産職に混じってハムスターのような初心者用モンスターを黙々と狩った。
PKプレイヤーもPKKプレイヤーもほとんど見なかったので、大半の戦闘職がレイド級討伐に出向いていたようだ。
俺はPKプレイヤーだが、今日はさすがにお腹いっぱいだ。
せめてイベントの残り時間は平和な気持ちで過ごそう。
******
【ただ今の時間をもちまして、イベント『ペンタくんバッジを集めよう!』が終了しました】
【プレイヤーの皆様お疲れ様でした】
【ペンタくんバッジの数に応じてランキングが発表されます】
【なお集めたペンタくんバッジはイベントストアでアイテムと交換できます】
ピカピカしたワールドメッセージが空中に表示される。
俺はぐーっと伸びをして、ゆったりとそれを見上げる。
さすがに眠い。
明日は月曜日なので、これだけ見たらさっさと寝ることにしよう。
ややあって、上からずらーっとプレイヤー名が表示された。
どうやら上位100名がランキングに並ぶようだ。
これだけ大人気のゲームで上位100名はなかなかシビアだな。
まあ俺の名前は当然ないだろうが・・・ん?
・・・あった。
97位 名前:ケンタロ 職業:狙撃手 武器:スナイパーライフル
こんな星の数ほどいるプレイヤーの中で、97位。
よくがんばったなあ、俺。しかもキル効率の悪いライフルで。
大量の漁夫の利が功を奏した形だな。
次にリコッチを探すと・・・いた。
78位 名前:リコッチ 職業:魔術師 武器:杖
ピロン!とフレンドメッセージが届いた。
『センパイ! おめでとうです! 初参加でランクインなんてすごーい!』
『ありがとう。リコッチもさすがだな』
『センパイと追いかけっこをしてなかったら、もうちょっと行けたんですけどねー』
『そいつは悪かった』
『あははー。楽しかったんでおけですっ』
リコッチは上位プレイヤーと呼ばれていた。
負け惜しみでも何でもなく、リコッチはランキング上位の常連なのだろう。
大したもんだ。
ふーむ、しかし・・・。
俺はもう一度、1位から100位までランキングを見る。
剣士と魔術師が大半を占めており、たまにいる狙撃手も武器は弓ばかり。
スナイパーライフルは見事に俺一人だった。
本当にライフルは不利なんだなあ・・・。
まあしかし、だからこそ俺は満足だった。
スナイパーライフルでもそこそこやれることを証明できたので、今後もこれでやっていこうと改めて思えたのだ。
イベント、楽しかったしな。
さて。
いい加減、仕事に差し支えるので寝よう。




