表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/166

31.狙撃手、レイド級討伐に参加する

レイド級ボスモンスター発生。

このワールドメッセージを見たプレイヤーたちが、大森林にぞろぞろと集結してくる。


「レイド級発生! 至急応援求む!」

「大森林だ、急げ!」

「ギルメン全員に招集をかけろ!」


一般プレイヤーもPKもPKKも関係ない。

レイド級とは全員で一致団結して当たらなければ討伐できないモンスターなのだ。


何せ全長30mはあるジャイアントイノシシだ。

まるでマッチ棒のように木々をなぎ倒していく様子は圧巻というしかない。


「メンバー集まりました!」

「時間を稼げ! もっと人数が必要だ!」

「迂闊に接近するな! 即死するぞ!」


プレイヤーたちが集まってくる。

俺は遠巻きに眺めているだけだが、すごい人数だ。

もう軽く100人を超えているが、まだまだ増えていく。


そして一部のプレイヤーはこの手のレイド級に慣れているようで、指揮官じみた声を張り上げている。

剣士職を前に、遠距離職を後ろにといった簡単なものだが、わらわらと陣形が作られていく。


俺は手近な木に登ってその様子を俯瞰する。

すげえな。

もう何百人いるかわからない。


俺はレイド級ボスモンスターと戦うのは初めてだが、ここまで人数が必要なのだろうか?

そんな疑問はすぐに氷解した。


「総員、行くぞ!」

「突撃いいい!」

「うおおおおおおおおおおお!!」


まるでライオンに群がるネズミのように、わさわさと殺到するプレイヤーたち。



ドゴオ!!!



そんなネズミたちを嘲笑うかのように、ジャイアントイノシシは牙の一振りだけで数十人を一度にミンチにする。


つ、つええ・・・。

攻撃力が半端じゃない。

プレイヤーが必死にポイントを割り振って得たタフネスなど何も意味を成さないようで、誰が食らっても一撃で即死している。

な、なるほど。これは人数が必要だ。

数百人でも足りないかもしれん。恐らく千人単位で必要だろう。


TVでトルネードを見たことはあるだろうか?

アメリカとかでたまに発生しているあれだ。

巨大な竜巻が、頑丈な家々を木っ端屑のように薙ぎ払っていく。

ちょうどあんな感じだ。


「怯むな! 死ぬ前に一撃入れろ!」

「魔術師はスキルを出し惜しみするな!」

「神官は素早さのバフをかけろ! バリアは意味ない!」


しかしレイド級の討伐に慣れた廃人プレイヤーたちは、次々と突撃を繰り返す。

大半は肉の塊になってスタート地点に送還されていくが、生き残った勇者たちがジャイアントイノシシの足や胴体にチクチクとダメージを入れていく。


そして死亡したプレイヤーたちが、何かの転送スキルだろうか、集団で大森林に戻ってくる。

彼らは死をも恐れぬ狂戦士と化して、再び大自然の脅威に立ち向かっていく。

凄まじい光景だ。感動すら覚える。

奴らに死の恐怖はないようだ。




俺は何をしているかって?

もちろん遠距離から次々と勇者たちの頭を吹き飛ばしていた。

ジャイアントイノシシの天災じみた破壊力を前にして、俺の豆粒のような狙撃など誰も気づかない。


今や1000人を超えるプレイヤーたちが、次々とジャイアントイノシシに突撃を繰り返しているのだ。

もうボーナスステージにしか見えない。

俺は自制心をかなぐり捨てて、ペンタくんバッジ生産機を次々とキルしていった。

見ろ、アイテム欄を。

チャリンチャリンとすごい勢いでバッジが増えていくぞ。

ふはははは! 笑いが止まらん。




そうこうしているうちに、ジャイアントイノシシの頭上のHPゲージが半分を切った。

死をも恐れぬ勇者たちの特攻が実を結んでいるのだ。


そしてイノシシは行動パターンを変えた。

これまではその場に留まって憐れなネズミたちを振り払っていただけだったが、自ら攻撃に転じるようになった。

イノシシの攻撃とは、つまり突進だ。


「ぎゃああああああ!」

「こっちに来るなあああ・・・げはっ!」


固まっていた遠距離職がイノシシの巨体に蹂躙され、無残な光景と化している。


「後衛は散れ! 一箇所に固まるな!」

「円形に囲むんだ! 突進対策は包囲だ!」


よく訓練された廃人プレイヤーたちが的確な指示を出していく。

どうやら突進は凄まじい攻撃力を誇るようだが、どのちみ脆弱なプレイヤーたちは何を食らっても一撃で死ぬのであまり関係がない。


俺は我関せずと狙撃を続け、木の上にいたのでイノシシの突進ルートから逃げられずバラバラになって死んだ。




「こっちだ!」

「大森林へのポータルを開くぞ!」

「急げ!」


俺がスタート地点に死に戻りすると、どこかのギルドが転送ゲートを開いていた。

なるほど、これで遠いエリアにもワープできるのか。

どういうスキルかも、どんなアイテムが必要かも知らんが、便利なものだ。

便乗させてもらうことにした。




大森林へ戻ると、ジャイアントイノシシのHPは残り3割というところだった。

レイド級の討伐に慣れた勇者たちは、どうやらこの絶望的な戦いを制しつつあるようだ。


イノシシが咆哮を上げる。

牙の一振りで大量の勇者たちが消滅する。

だがまだまだいる。

死亡して復帰を繰り返しているプレイヤーばかりだから正確な人数は不明だが、数千人が参加しているのではなかろうか。


俺は大きめの木に登ると、再び狙撃モードに入った。

ボーナスステージが終わるまでにできるだけ稼ぎたいところだ。




そしてそろそろプレイヤーたちの頭がジャガイモに見えてきた頃、ジャイアントイノシシも限界を迎えていた。

HPゲージはもう1mmも残っていない。

相変わらず荒れ狂っているが、じき討伐されるだろう。


うん。

俺も記念に一発だけ撃っておこう。

イノシシの脳天に照準を合わせて、トリガーを引いた。

レイド級を相手に、俺の狙撃など爪楊枝で突っついたようなものだろうが、まあ気分的なものだ。

俺もあの動く天災を討伐する一助となったのだ。



【クエスト達成】


【おめでとうございます! ジャイアントイノシシが討伐されました!】


【功績に応じて報酬が配布されます】



こうして、俺の初のレイド級討伐は終わりを告げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ヘッドすればある程度威力を保証されてるスナイパーライフルだし、もしかしたらLA取ってるかも...笑
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ