3.狙撃とは射程である
さて。
しばらくモンスターを狩った俺は、3のスキルポイントを得た。
このゲームは珍しいことに、スキルポイントしかない。
体力や筋力、敏捷といったステータスがないのだ。
いや内部ステータスとしては存在しているんだろうが・・・。
だからプレイヤーやモンスターの頭上に表示されているHPゲージも、数字がわからない。
どの攻撃を当てればどれだけ減るのか、体感で理解していくしかないわけだ。
まあ細々としたことを大量に覚えるのは面倒くさいので、俺としては何の問題もない。
要はモンスターを倒すとスキルポイントを得て、それを好きなスキルに振っていくことで成長するゲームなのだ。
それはそれとして、俺はスキルポイントを割り振るわけだが。
”狙撃手”の俺は初期状態で、何に割り振れるのだろうか?
空中のスキルという文字をタッチする。
何々・・・。
<パッシブスキル>
”射程”、”威力”、”命中”
<アクティブスキル>
”チャージショット”、”連射”
どうやら今のところパッシブ3つ、アクティブ2つの中から割り振れるようだ。
ちなみにパッシブは持っているだけで効果のあるスキル、アクティブは手動で発動させるスキルだ。
ふむ。
・・・。
・・・。
射程だな。
当面、パッシブの射程に全振りだ。
パッシブはどれも必要に思えるが、射程があれば2発目を撃てる公算が上がる。
それによほど遠くから狙撃すれば、そもそも敵に気づかれずに倒すことができる可能性もある。
戦いにおいて射程とは優位性なのだ。
それにさっきのモンスターとの戦いで気づいたが、胴体ではなくきちんとヘッドショットを決めれば、かなりダメージが上がるようだ。
ヘッドショットを決める前提なら、パッシブの”威力”は後回しにしてもいい。
”命中”は、多少狙いがズレても自動で補正してくれるスキルのようだが、これも時間をかけてきちんと狙えば済む話だ。
いずれ全部ほしいが、始めたばかりでスキルポイントが少ない状態では優先順位を明確にしておくのがいいだろう。
アクティブスキルは当面いらないな。
そういうわけで、俺は文字を3回タッチした。
射程:3
これでどれくらい遠くのモンスターに届くようになったのか試してみよう。
俺はかなり遠くに小さく見える犬狼に、狙いを定める。
さっきは届かなかった距離だ。
トリガーを引く。
ターンと音がする。
届いた。犬狼がのけぞった。
だがまあ、胴体に当たったから一撃では倒せなかった。
猛然とこっちに疾走してくる。
だが充分に距離があるので、俺は2射目を撃ち込んで犬狼を倒した。
うん。
実感できるくらい射程が伸びている。
これは当面、射程に全振りだな。
不意に。
ザシュ!と音がして、俺のHPゲージがグーンと減った。
そりゃあもう豪快に9割くらい減った。
な、何だ!?
驚いて振り返ると、でかい熊がいた。
別のモンスターがいたのか!
狙撃に集中しすぎて、全く気づかなかった。
慌ててスナイパーライフルを構えようとするが、目の前にいる敵に間に合うはずもなく・・・。
俺は熊の2撃目で死んだ。