表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/166

24.狙撃手と新しい相棒

鉱石を手に入れた俺は、早速カジの鍛冶屋に持ち込んだ。

今回はリコッチはいないので、チンピラNPCに金を払って街に入った。


「おう、早かったな」

「イベントに間に合わせたかったんだ」


筋肉ムキムキのカジが出迎えてくれる。

相変わらず暑苦しい。ニカッと笑う歯が眩しい。


「ところで武器ってどうやって作るんだ?」

「ああ、初めてだよな。よければ見ていくか?」

「ぜひ」


新しい相棒が誕生する瞬間に立ち会いたいと告げると、カジはうんうんと頷いて店の奥に案内してくれた。

炉と金床がある。

これが鍛冶スキルを使うためのアイテムなのだろう。


「まずは鉱石をインゴットにするんだ。見てな」


カジは炉の前で空中のパネルを操作すると、俺が渡した銀鉱石と鉄鉱石を投入する。

瞬く間に銀と鉄のインゴットが生み出される。


「・・・意外とあっさりしているな」

「はっはっは。リアルの鍛冶屋みたいなことをすると思ったか?」

「ちょっとな」


まあ実際に鉱石を炉に入れて溶かすところから始めたら、時間がかかって仕方がない。

ゲームならではの利便性というやつだ。


「で、次にこいつだ」


カジは金床の前でタッチパネルを操作して、銀と鉄のインゴット、それから研磨剤などの材料を投入していく。


「普通に作るのでいいか、ケンタロ?」

「普通じゃない作り方があるのか?」

「追加素材があればな」


カジの説明によると、こういうことらしい。


武器の材料だけを投入すれば、普通の武器が出来上がる。

しかし追加で属性アイテムや強化素材などを入れれば、武器に属性や強化値を追加できるとのことだ。

ふむ、強化素材か。


「こいつはどうだ? 命中の指輪+2なんだが」

「おう、ケンタロ! 悪くない装飾品を持ってるじゃないか。それは強化素材になるぞ」

「ライフルに命中強化が付与されるってことか?」

「そうだ」


一つ疑問がある。


「素材にすると、この命中の指輪は消えるんだろうな?」

「はっはっは、そりゃそうだ」

「それだと、次にまた新しいライフルを作ることになったらもったいなくないか?」

「ああ、まあ場合に依りけりだなあ」

「というと?」


確かにデメリットとして、次にまた武器を交換したら素材は無駄になるので、そういう意味ではもったいないらしい。

だから武器を頻繁に変えていくスタイルのプレイヤーは、あまり追加素材を入れないそうだ。

逆に俺は恐らく新しいライフルを長く使うだろうから、そう考えると悪くない投資なのか。


「それにメリットもあるぞ」

「どういう?」

「PKされても武器、防具、ファッションアイテムはドロップしない。わかるな?」

「・・・なるほどな」


命中の指輪+2は、装飾品のままなら運が悪いとPKされてドロップしてしまう。

だが武器に組み込んでおけば、装飾品としては消滅するのでドロップしない。

こいつはPKプレイヤーにとっては大きなメリットだ。


PKされても武器、防具、ファッションアイテムをドロップしないのは、一般プレイヤーに対する配慮だろうな。

特にせっかくガチャを回して出たファッションアイテムを落としてしまったら、課金してくれる一般プレイヤーが一気に離れる事態になりかねない。

運営としては、特にファッションアイテムに金をつぎ込んでくれるプレイヤーは大事にしたいところだろう。


「で、どうする? 命中の指輪を入れるか?」

「そうだな。頼めるか?」

「おう、任せろ」


カジは俺から受け取った指輪も投入して、金床のタッチパネルを操作する。

金槌でカンカンするような作業もなく、あっさりと新しいスナイパーライフルが完成した。


「さあ、ケンタロ。お前さんのもんだ」


俺はカジに報酬の金を渡すと、金床に鎮座しているライフルを手に取る。

形状は初期装備のライフルとあまり変わらない。少し長くなった程度か。

あと全体的に角が丸みを帯びて、ややスマートなフォルムになっている。


「ちゃんと性能も確認してくれよ」


カジに言われて、俺はアイテムウィンドウから装備品を確認する。




<スナイパーライフル(製作者:カジ)>


射程:5

威力:5

命中:5(+2)




俺のパッシブスキルがこれらの値に上乗せされるわけだ。

ちなみに初期装備のライフルは全部1だったので、かなり向上したといえる。


・・・そう考えると、俺は初期装備のライフルでよくプレイヤーを仕留めていたもんだな。

スナイパーライフルはヘッドショットを決めたときのダメージ倍率が相当高いのだろう。

恐らく性能はよくないが、ヘッドショットを命中させたときのみ馬鹿みたいに強い、といった設計に基づいた武器なのだ。


「素晴らしい。ありがとう、カジ」

「運よく大成功すれば、大成功ボーナスもついたんだけどなあ」

「いや充分だ。本当に世話になった」

「おう、いつでも来な」


気持ちのいい笑顔で送り出してくれるカジ。


念願の新しいスナイパーライフルだ。

この相棒は末永く使おう。


俺はフレンド欄を開き、リコッチにお礼のメッセージを送った。



『リコッチありがとな。カジに無事ライフルを作ってもらえた』

『えーっ! もう作っちゃったんですかあ? 私も呼んでくださいよー!』

『いやリコッチ呼んでもやることないだろ』

『むーっ。私もセンパイの新しい武器見たかったです!』

『今度見ればよくないか?』

『センパイわかってないー。一緒に立ち会いたかったんですよー』



うーむ、そういうもんか。

悪いことをしてしまった。

今度また昼飯を奢って機嫌を直してもらおう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ