表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/166

20.狙撃手、公式イベントのメールを受け取る

ある日ログインすると、運営からメールが届いていた。


いや運営からのメールはたまに届く。

メンテナンスのお知らせだったり、ガチャ更新のお知らせだったり。

頻繁にガチャを回すような層にとってメールは要チェック項目なんだろうが、俺は正直どうでもいい。

未だに布の服だしな。


だが今日のメールはちょっと違った。

『公式イベントのお知らせ』


公式イベントとな?


なるほど、オンラインゲームは大体どれも公式イベントというものを開催する。

このゲームも例に漏れず、定期的にイベントをやっているのだろう。

俺はメールに目を通す。



『ペンタくんバッジを集めよう!』



ペンタくんとは公式キャラクターの愛らしいペンギンくんだ。

何故ペンギンなのかは知らん。

メールを読み進めていくと、どうやらこういうことらしい。


イベント期間中にモンスターまたはプレイヤーを倒すと、一定確率でペンタくんバッジを入手できる。

そいつを集めた数でランキングを競うようだ。


正直ランキングはどうでもいい。

俺が興味を惹かれたのは、プレイヤーを倒すとという部分だ。

PKを推奨しているということだ。


しかしこれだとPKを嫌う一般プレイヤーは困るんじゃなかろうか?

そう思ったが、更に読み進めていくとそうでもないようだ。


一度集めたペンタくんバッジは、たとえ死んでも数は減らないらしい。

PKプレイヤーに殺されても安心というわけだ。

更にイベント期間中は、PKをされてもアイテムドロップがないようだ。


これなら一般プレイヤーは、アイテムドロップを気にすることなく各地でペンタくん集めに奔走できるな。

アイテムドロップがないのでPKプレイヤーたちにとっては旨味がなくなるが・・・。

まあモンスターとプレイヤーの両方をキルして、ペンタくんバッジを集めることができる以上、有利は有利だからいいのか。


うん。

一般プレイヤーとPKプレイヤーの両方に配慮したいいイベントじゃなかろうか。

比率としては一般プレイヤーのほうが多いので、一般プレイヤーをないがしろにするようなイベントを開催すると収益が減ってしまうだろうし。


俺にとっては初のイベントだ。

大いに楽しむとしよう。




******




俺はフレンド欄を開く。

リコッチのステータスがオンラインになっていることを確認して、メッセージを送る。


『リコッチ、今いいか?』


すぐにピロン!と返信が来る。


『あっ、センパイだ! 何ですか?』

『イベントに向けて新しいスナイパーライフルがほしいんだが、知り合いに鍛冶屋はいないか?』

『あー・・・』


少し間があって、ピロンと返信が返ってくる。


『そっち行くんで受理してください』


は? 受理?

ピロン!


”フレンドジャンプを受理しますか?”


・・・何だこれは?

とりあえず受理を選択する。


すると空中に光の粒子が舞って、ぱっとリコッチが現れた。

うお、びっくりした!

リコッチはふわふわスカートをはためかせながら、地面に降り立つ。


「ども、センパイ!」

「な、何だ今のは?」

「あははー。びっくりしました?」

「かなりな」

「やったあー」


ころころと笑うリコッチ。

話を聞くと、フレンドジャンプという機能らしい。

アイテムを消費するし、一日あたりの回数制限もあるが、フレンドのところに瞬時にワープできるようだ。

かなり便利だな。


「俺も使いたいが、何のアイテムが必要なんだ?」

「ジャンプストーンっていう鍛冶スキルで作るアイテムですねえ」

「あー、そりゃ無理だな」


俺の鍛冶スキルはゼロだ。

と、またピロン!と音がした。


”リコッチからトレード申請がありました”


ジャンプストーン:1個


「・・・いいのか?」

「いいですよー。私はギルドの鍛冶屋さんに作ってもらえばいいんで」

「そうか。助かる」


トレードを受理する。

リコッチには世話になるな。

そのうちゲーム内でもお返しできるようになりたいもんだ。


ちなみにこのゲーム、武器や防具のトレードはシステム上できない。

初心者に強力な装備をばんばん与えて高速育成、といった真似は禁止されているわけだ。

鍛冶屋に装備を依頼するときは、素材と引き換えに作ってもらうことになり、これはトレードとはまた別のシステムだ。


「それで、新しいスナイパーライフルがほしいんでしたっけ?」

「ああ。今のライフルも愛着はあるんだが」

「まー、初期装備ですもんねえ。イベントを抜きにしても、もうちょっと強いのがほしい時期ですよね」


うんうんと頷くリコッチ。

しばらく思案して、ぽんと手を打つ。


「いますよ! 知り合いの鍛冶屋さん」

「本当か? 助かる」

「街中にお店を構えてるんで、まずは街に入りましょー」


そうなのだ。

俺は街の外のスタート地点を拠点にしている。

結局ここが一番便利なのだ。


「街に入るならちょっと待っててくれ。外壁を回ってNPCを探さにゃならん」

「あー、いいですよ。私が先に街に入るんで、フレンドジャンプで追ってきてください」


・・・なるほど。そういう使い方があるのか。

凄まじく便利だな、フレンドジャンプ。


しかしそんな便利な使い方ができる以上、このジャンプストーンはそこそこレアなアイテムではなかろうか。

そう思ってリコッチを見ると。


「いつか出世払いで返してくれたらいいですよ、センパイ!」


そう言ってリコッチはけらけらと笑った。

やれやれ、借りばっかり増えていくなあ。


「リコッチ」

「はい?」

「ありがとな」


リコッチは一瞬きょとんとして、それから嬉しそうに「いえいえ!」と言った。


さて、鍛冶屋に会いに行くとするか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ