162.狙撃手、3人と合流する
防衛戦2日目がやってきた。
楽しみだ。
俺は週末だというのに10時間しか眠れなかった。
まだ時間に余裕はあるが、早めにゲームにログインする。
ゲーム内も心なしか浮ついた雰囲気が漂っている気がする。
みんな楽しみにしているんだろうな。
ピロン!とリコッチからフレンドチャットが届いた。
『せんぱあーい! 合流しましょ!』
抑えきれないワクワク感が伝わってくる。
大変よろしい。
そんなわけで俺は別荘に移動した。
「わーい! センパイ待ってましたっ!」
リコッチがひまわりのような笑顔で出迎えてくれた。
尻尾があったらパタパタ振っていそうだ。可愛い。
それだけ今日を楽しみにしていたのだろう。
「やあケンタロ、来たね」
「何が来ても守ってやるから安心しろ」
後ろからダンチョーとクッコロも顔を出した。
相変わらず凛々しい2人だ。
こうして並んで立っているだけで絵になる。
ピロン!とダンチョーからパーティ申請が飛んできた。
もちろん参加を選択する。
どうやらリーダーはダンチョーのようだ。
パーティのリーダーは他メンバーをパーティに招待できる他、強制的にキックする権限も有する。
またパーティをダンジョンに入場させる権限を持つのもリーダーだけだ。
まあどのゲームでもリーダーの権限は似たような感じだ。
「3人は昨日もパーティを組んでいたのか?」
俺が尋ねると、3人はそれぞれ笑いながら頷いた。
それだけで初日のイベントも楽しんだであろうことが窺える。
良きかな。
「やはりああいうモンスターの大群には範囲魔法だな。リコッチが大活躍だったぞ」
「タンクがいてこそですよ! クッコロさんの鉄壁の守りといったらもう!」
リコッチとクッコロがお互いに褒め合っている。
とても仲良しだ。
「僕は一度、いきなり頭を撃ち抜かれたんだけれど・・・」
ダンチョーがじろりと俺を睨む。
俺は咄嗟に目を逸らした。
「モンスターが多かったからな。不意を打たれたんじゃないか?」
「・・・まあ、そういうことにしておこう」
ダンチョーがやれやれ仕方ないと表情を緩める。
彼は俺の、というか他者のプレイスタイルを尊重してくれる人間なので、本気で怒っているわけではないのだ。
もちろんクッコロとリコッチもそうだ。
俺は仲間に恵まれた。
「先に言っておくが、俺はあまり戦力にはならないぞ。せいぜい後ろからちまちま狙撃するくらいだ」
「あははー。一緒に遊ぶのが大事なんで、戦力とかあんまり関係ないですよ! センパイ!」
リコッチがころころと笑う。
他の2人もうんうんと頷いている。
「それに今日はケンタロとパーティを組んでいるからね。背中から撃たれる心配もない」
「それは大きいな」
くっ・・・。
ダンチョーとクッコロが好き勝手に言っているが、フレンドも隙あらばPK対象にしている俺は反論できない。
このゲームはパーティを組んでいるプレイヤーを攻撃できない仕様なのだ。
いや、どのゲームもそうだろうが・・・。
「そ、それより今日のイベントだ。やはり魔族が主力だと思うか?」
俺の疑問に、ふーむと考え込む3人。
こうしたイベントごとは、やはり俺より皆のほうが詳しい。
「予想だけど、魔族は他のモンスターを操ってるという立場で襲撃してくるんじゃないかな」
「私もそう思う。だから数でいえば昨日のように普通のモンスターのほうが圧倒的に多い気がする」
ダンチョーとクッコロがそれぞれ予想を口にする。
なるほど。
言われてみれば尤もだ。
魔族は一人一人が強大な力を誇る。
少なくともストーリークエストにおける魔族の設定はそうだ。
それを考慮すると、何千もの魔族がぞろぞろと押し寄せてくることは考えにくいか。
「センパイ、何か気になることがあるんですか?」
リコッチがくりっとした瞳で俺を覗き込んでくる。
「・・・わかるのか?」
「そりゃセンパイのことですもん!」
どや顔で胸を張るリコッチ。
リコッチは俺のことをよく見ているんだな。
・・・何か少し面映い。
「まあ大したことじゃあない。できれば、なるべく多く魔族を倒したいと思っただけだ」
「ははは。魔族に何か恨みでもあるのかい?」
「ストーリークエストで何度もやられたから、ないとは言えない」
「ああ・・・。ライフル一本だと確かに苦戦するか」
ダンチョーとクッコロがしたり顔で頷いている。
いやまあ、相手は所詮モンスター扱いの魔族だ。
別に恨みなんてないんだがな。
ただちょっと・・・気になることがあるのだ。
勘とも呼べない、些細なこと。
だがもし仮に、俺の勘が正しければ。
魔族をたくさん倒しておくと、きっといいことがある気がするのだ。
もちろんただの勘なので、外れる可能性も多分にある。
「まあそこまで言うなら、積極的に魔族を倒しに行こうか」
「ですねーっ。私もイベントならではの魔族と戦いたいですし!」
「何が来ようと私の盾で受け止めてやる」
3人ともやる気満々である。
無論、俺もだ。
「みんな、イベントを楽しむぞ」
4人でおーっ!と拳を突き上げる。
好きなゲームを、気心の知れたフレンドたちと遊ぶ。
贅沢な幸せである。
せっかくのイベントだ、精一杯楽しむとしよう。




