148.狙撃手、雪山でスナイプする
クッコロの誕生日は平日だが、誕生日パーティは週末にやることになった。
参加者はクッコロ、ダンチョー、リコッチ、俺の4人だが、全員社会人で仕事があるからな。
そしてサプライズパーティではない。
事前にきちんとクッコロに打診して、日時を決めてから行うことになった。
サプライズというのは何でもそうだが、当然、本人の意向を無視した形で実施されることになる。
それがたまたま本人の要望と一致していれば良いが、そうでなければサプライズを仕掛けた側の自己満足にしかならない。
だから個人的にはサプライズというのはあまり好きではない。
そんなわけで、会場はリコッチと俺の別荘になった。
これは単純に都合の良い場所がそこしかなかったからだ。
ダンチョーとクッコロは家を所有していないからな。
それにあの別荘ならロケーションも悪くない。
綺麗な湖を一望しながら開くパーティなど心躍るではないか。
クッコロはしっかり者のナイトだが、だからといってロマンチックなシチュエーションが嫌いなわけでもないだろう。
街にはケーキ屋があるので、大きなホールケーキをそこで注文する。
無論、金はクッコロを除く3人の負担だ。
そしてそれ以外に、誕生日プレゼントを各々で準備する。
そう、誕生日プレゼントである。
・・・。
・・・。
・・・。
どうしよう?
一番望ましいのは、クッコロが持っていないような激レアアイテムである。
しかし俺にとってはそれが一番難易度が高い。
何故かというと、俺たち4人の中では俺が一番の新参者だからだ。
俺が入手できる程度のレアアイテムなど、上位プレイヤーのクッコロならほとんど持っていることだろう。
もちろんプレゼントしたレアアイテムが被っていたとしても、クッコロなら喜んではくれるだろうが・・・。
リコッチかダンチョーに相談してみようか?
・・・。
いや、やめておこう。
相談すれば良いアイデアをくれるかもしれないが、何というか・・・せっかくのプレゼントだ。
気持ちを込めるという意味もあるし、できれば独力で考えて入手したい。
つまらんプライドと言われればそうだろうが、クッコロは大切なフレンドだ、可能な限り自分の力で喜んでもらいたいのだ。
俺が入手可能で、かつ、クッコロが見たこともないようなアイテム・・・。
すぐには思いつかない。
オークションで探すことも考えたが、あいにく今の俺はあまり金がない。
端金で買えるアイテムなどろくなものがないだろう。
とりあえず狩りに出るとしよう。
各地を回りながら考えるのだ。
どこかでぽろっと良さそうなアイテムが落ちるかもしれないしな。
******
そんなわけで雪山に来た。
例の寝てないコンビに理不尽にぶち殺されたエリアだ。
ここはまだあまり探索できていないからな。
今日の天候は小雪だ。
灰色の空からちらほらと白いものが舞い落ちている。
しばらくすると吹雪いてくるかもしれん。
俺は白銀のライフルを取り出すと、充分な遠距離から雪狼やイエティをヘッドショットで狙撃する。
上位武器だけあり、ヘッドショットさえ決めればこのあたりのモンスターでも一撃で倒すことができる。
モンスターはプレイヤーと違ってHPが多いので、威力が上がった恩恵がとても大きい。
カジ様ありがとう。
そして雪山は、砂漠エリアよりもプレイヤーが多かった。
つまりは砂漠よりも美味しいエリアということだ。
となれば俺がやることは決まっている。
PKだ。
遠くにビッグイエティと戦っているプレイヤーがいる。
4人パーティだ。
プレイヤーのほうが圧倒的に優勢で、ビッグイエティはじき討伐されてしまいそうだ。
俺は雪上に伏せると、ライフルを設置してスコープを覗く。
くそ、降雪が邪魔をして視界があまり良くないな・・・。
だが相手も俺のことを発見しにくいはずだ。
まずプリーストに照準を合わせる。
慎重にトリガーを引く。
ターン。
プリーストの頭に見事な風穴が開いた。
「何だっ!? 誰だ!?」
「わからねえ! でもPKだ!」
「いきなり頭が吹き飛ぶこの感じ・・・知ってるぞ! 97位だ!」
「何い!? くそが、探せっ!」
いきなりバレた。
俺は雪上に伏せたまま、エルフの服のステルスを発動する。
残り3人になったパーティは、さっさとビッグイエティを仕留めると俺を探すが見つからない。
うーむ・・・。
唐突に頭が吹き飛んだら俺のPK。
そういう認識が、プレイヤーの間に広まりつつあるということか。
間違ってはいないが困る。
相手が油断してくれているほうが、狙撃手としては楽なのだ。
ステルスが切れると、俺は照準を合わせてまたトリガーを引く。
敵のウィザードの頭が消し飛ぶ。
残り2人。
「くっ、いた! あそこだ!」
「2人の仇!」
見つかった。
2人のプレイヤーが俺のほうへ突進してくる。
だがまだ距離がある。
そう、この距離こそがスナイパーライフル最大の武器だ。
俺は三度トリガーを引く。
3人目が消滅する。
残り一人。
しかし無理だ。
俺が次にトリガーを引く前に、奴に接敵される。
接近されれば死。
それもまたスナイパーの宿命だ。
しかし天候はもはや吹雪になりつつある。
視界は徐々に悪くなっている。
そこが狙い目だ。
俺は足元の雪をごっそり掴むと、接近してきた敵プレイヤーに投げつける。
「くっ、小賢しい!」
舞い散った雪の塊は、吹雪と相まって敵プレイヤーの視界を覆い隠す。
俺はその間にごろごろ転がって距離を取る。
膝立ちになり、素早く両手でライフルを構える。
「そこかっ! 逃さねえ!」
敵プレイヤーが再度、俺に迫る。
だが遅い。
俺の銃口はもうお前の頭を捕捉している。
最後は一騎打ちの形になったが――俺の勝ちだ。
悪く思うな、無名のプレイヤーよ。
お前の敗因はただ一つ。
俺より弱かった、それだけの話だ。
よく修行せよ。
今より強くなれば、また相手をしてやっても良いぞ。
それまでせいぜい励むことだ。
ではな、アリヴェデルチ。
「ソードストライク!!」
「は――!?」
敵がぶん投げた剣が俺の喉を串刺しにして死んだ。




