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145.狙撃手、ストーリークエストに手を出す

復活ポイントに強制送還された俺は理解した。

理解せざるを得なかった。

あの寝てないコンビは最強プレイヤーの一角にも拘らず、何故いつも2人で行動しているのか?

何故あんなに友達がいなさそうなのか?


そりゃあんな性格じゃ友達できねえよ・・・!

この世の全てを呪うような目をしながらゲームしてる奴なんて初めて見た。

アレは駄目だ。

迂闊に近づいていい類の人間ではない。

下手に触れると呪いに染まる呪詛の塊である。


俺は恐怖と共に学習した。

三次職のことを調べるなら、やはり独力ですべきだ。

攻略サイトに載っていない以上、知っているプレイヤーはほぼいないわけだからな。


まあ・・・とはいえ急ぐ必要はない。

今の俺は条件が判明したところで、どうせまだ転職できない。

気にはなるが時間はあるわけだし、ゆっくり調べればいいのだ。




******




そういうわけで街にやってきた。

相変わらず俺は悪人扱いなので、チンピラNPCに金を払って街に侵入した。

金がないからまた金策しないとな・・・。


俺が街を訪れた理由は、たくさんいるNPCから話を聞いて情報を集めるためだ。

というのも俺はこのゲームを始めて、街にいるNPCたちから真面目に話を聞いたことはあまりない。

俺にとってNPCといえばキルする対象だが、普通のプレイヤーからすれば情報収集のための存在なのだ。

RPGにおいてNPCから話を聞くというのは基本中の基本である。

たまには気分転換がてらにのんびり街をぶらつくのもいいだろう。


俺は通行人や武器屋、道具屋、宿屋、兵士、裏路地のチンピラ、果ては神殿の司祭と、いろいろなNPCに話を聞いて回った。

しかしもちろん、直接三次職に関わる情報は一つもない。


代わりにスナイパーライフルの歴史のおさらいができた。

つまり、かつて人間たちが魔族の侵攻に晒されたとき、魔族に対抗すべく神から与えられたのが弓よりも遠くから、魔法よりも強力な攻撃を可能とするスナイパーライフルであったと。

そして今のスナイパーライフルは、かつての神代のライフルの劣化品であると。


以前リコッチが教えてくれたストーリーによると、スナイパーのシナリオ的な使命とは、古に存在した神代のスナイパーライフルを取り戻すことらしい。

それに照らし合わせると・・・。


他の職は知らんが、スナイパーの三次職になるには、何かしらこう、スナイパーライフルに関するものが条件ではないだろうか?

鍛冶屋に強力なライフルを作ってもらうとか、そういうことではなく、もっとこう・・・。

攻撃力の数値として強力なライフルを手に入れるのではなく、ストーリー的に自分のライフルを上位のものにアップグレードするような。

何か、そんな行為が必要な気がする。


とはいえストーリークエストを進めれば良いという話でもないだろう。

そんな簡単な条件ならとっくに攻略サイトに掲載されているだろうし、もっと広まっているはずだ。

まあ、ここまでの俺の推測が全く的外れという可能性も大いにあるが。


・・・。

・・・。

・・・。


少し、ストーリークエストを進めてみるか。

一つも手を付けていないというのは、正直ゲーム的に問題があろう。

何かもっと情報が集まるかもしれん。


そんなわけで俺はスナイパーのストーリークエストを進めることにしたが・・・。




結論から言うと、退屈だった。

いや、これは俺が悪い。


プレイヤーは誰しも最初は弱いので、ストーリークエストも最初はごく簡単なものから始まるのだ。

初心者エリアのハムスターやうさぎを何匹倒して来いとか、荷物をどこそこに運んでくれとか。

あるいは草原で何がしの草をいくつ集めて来いとか。

これはどのゲームでも大体そうだ。


そんなクエストをある程度成長してからやっているものだから、全く歯ごたえがない。

例えるならベルトコンベアで流れてくる刺し身パックに、延々と菊を乗せる作業をしている感じだ。

銀色のダンジョンを死んだ目をしながら周回しているほうがまだマシだ。


そしてもう少し進めていくと、どこそこの村を荒らしている盗賊団を倒してこいとか。

盗賊団の親玉が洞窟に逃げ込んだから倒してこいとか。

神殿から何やら大切な石版が盗まれたから取り戻してこいとか。

クエストの難易度が少しずつ上っていく。


俺は初めて知ったのだが、いくつもストーリークエストをクリアしていくと、スキルポイントをもらえたりする。

なるほど、モンスターを狩るだけが能ではないらしい。

しかし考えてみれば当然だ。

モンスター狩り以外にスキルポイントをもらえないのであれば、生産職が困ったことになってしまう。

ストーリークエストをやらなければ、そんなことにも気づかなかった。

やはり食わず嫌いはよくないということだな。


とはいえさほど面白くないことには変わりがないので、俺は天井のシミを延々と数えるような心持ちでストーリーを進めていった。

アイテムもちょこちょこもらえた。

まあ大半が消耗品のポーションなどだが・・・。

使わないものは後でフレンドに送りつけてやろう。


ちなみにクエストアイテムもいくつか手に入った。

通常のアイテムとは別枠の、いわゆるクエストでのみ使用できるアイテムだ。

だから通常のプレイにおいては全く役に立たない。

アイテム欄が別枠なのは助かるが。



そんなこんなで、俺は珍しくPKもモンスター狩りもせず、延々とストーリークエストに没頭した。

サブクエストは全部放置だがな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 次の、また次の挑戦のために(挑めるようになればねてないコンビ…いや、粘着がひどかったら面倒だし)まずは門番ですね [気になる点] 犬小屋ぐらいの面積な権利書ですが、途方もない枚数があるなら…
[良い点] 確かに友達出来ないな笑
[一言] 更新&返信いつもありがとうございます! おっさん少し改心した?真面目にストーリークエストこなしてます! サブクエストはこのゲームでは大事じゃ無いんですかね? PKしないオッサンを久し振り…
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