130.狙撃手、ついにジャイアントイノシシの頭蓋骨を使う
『カジ、ミスリル鉱石を集めたぞ』
『ようし、すぐに来やがれ!』
カジにフレンドチャットを送ると、気合の入った返信が来た。
やる気満々のようだ。
俺も自然とテンションが上がってくる。
どんなゲームでも新しい武器というのはいいものだ。
俺の場合は頻繁に買い替えているわけではないから特にだ。
そんなわけで俺はチンピラNPCに金を払って街に入り、途中で倉庫からジャイアントイノシシの頭蓋骨を引き出して、ウキウキでカジの鍛冶屋を訪ねた。
「ケンタロ待ってたぜ!」
「思ったより時間がかかった」
出迎えてくれたカジとガシッと握手を交わす。
相変わらずスキンヘッドのムキムキで暑苦しいが、今日は普段以上に熱気を感じる。
初の上級スナイパーライフルの作成とあって興奮しているのだろう。
「まずミスリル鉱石を全部くれ。インゴットにする」
「ああ」
俺がトレードで大量の鉱石を渡すと、カジは溶鉱炉に行ってタッチパネルをポチポチ操作した。
実に簡単だ。
次にカジは俺を伴って金床へと移動する。
「んじゃ早速作るぜ。追加したい素材はあるか? 前回投入した命中の指輪みたいなやつだ」
「そうだな・・・」
俺はアイテム欄を開く。
感情を殺してひたすら銀色のダンジョンを周回したおかげで、微レアアイテムをいくつか手に入れた。
”命中の指輪+2”もある。
ここまでゲームをプレイしてきてわかったことだが、実は命中の指輪+2はそこまで激レアではない。
ゲーム序盤であればそれなりに強いが、スキルポイントをそこそこ得て転職できる程度にまで成長すれば、+2くらいの補正はさほど強力ではないことに気づく。
カテゴリ上はレアアイテムなのだが、せいぜい微レアくらいの扱いだ。
「カジ。上級ダンジョンを周回したおかげで追加素材はいくつかあるんだが、いくらでも投入できるのか?」
「んなわけねえ。最大2個だ。前回ケンタロに作ってやった中級ライフルは、最大1個だったな」
なるほど。
武器が強くなると追加投入できる素材の数も増えるのか。
確かに他のゲームでも武器や防具にカードや宝石等を付与できるものは多いが、武具が上級になればなるほど付与できる数が増えていくもんな。
ふーむ・・・。
俺はアイテム欄を見ながら少し悩む。
命中の指輪+2、威力の指輪+2、アーマーブレイク+2、土属性の指輪・・・。
武器に属性を付けるのもありだろうか?
今の俺のライフルは無属性なので、どんなモンスターにも通常通りのダメージを与えることができる。
言い方を変えれば、明確に弱点があるモンスターに対しても通常のダメージしか期待できないということだ。
・・・。
やめておこう。
仮に土属性のライフルにしたとして、土に強いモンスターが現れたら手も足も出なくなる。
俺の武器はライフル一本しかないのだ。
属性はきっと、複数の属性武器を運用できる金持ちか、魔法使い用のシステムだ。
無難に命中の指輪とアーマーブレイクをつけてもらおう。
「カジ、これを」
「・・・まあこんなもんか。もっと激レアがありゃよかったな」
「そう都合よくは手に入らない」
「はっはっは、そりゃそうだ」
カジはトレードでアイテムを受け取ると、俺を見た。
「で、どうする。大成功のポーションを使うか?」
「何だそれは?」
「文字通り大成功の確率を上げるアイテムだぜ」
・・・そういえば前回ライフルを作成してもらったときに、大成功が出ればもっと強くなった的なことを言っていた気がする。
武器作成には大成功というシステムがあるのか。
「その大成功とやらが出るとどうなるんだ?」
「単純に能力が強くなったり、ごく稀に追加能力が付与されたりするぜ。かなり稀だけどな」
「大成功ポーションを使うとどれくらいの確率で大成功になるんだ」
「まあせいぜい30%ってとこだな」
「・・・もちろんそのポーションの費用は俺が払うんだろうな?」
「そりゃそうさ。つっても俺も初めての上級ライフル作成だ。大成功させたいって気持ちがあるから提案したんだけどな」
「いくらだ?」
「まあ・・・これくらいだな」
馬鹿みたいに高いわけではないが、とはいえ安くもない。
・・・恐らくこれでも少し値引いてくれているんだろうな。
大成功は魅力的だが、失敗したらただの金の無駄遣いだ。
そしてこれを使ってしまうと、俺の所持金はもうかなりカツカツになる。
俺はカジの顔を見る。
どうやらワクワクしているようだ。
何かを期待する熱っぽい目で俺を見つめている。
・・・。
うむ、そうだな。
俺は決めた。
これは現実じゃない、ゲームだ。
後生大事に金を取っておいたところで、別にリアルで金持ちになるわけじゃあない。
あるものはどんどん使えばいいのだ。
「大成功、期待しているぞ」
「さすがケンタロだぜ! そうこなくちゃな!」
カジは俺の肩をバシバシ叩くと、金床に向き直った。
大成功ポーションをゴキュッと一気飲みすると、拳を握り締めて気合を入れる。
「ようし、やるぜ!」
ミスリルインゴットやその他素材、命中の指輪、アーマーブレイク等を投入していく。
そして最後に満を持して・・・ずっと倉庫で埃を被っていたジャイアントイノシシの頭蓋骨を投入する。
長かった・・・。
ついに俺が初めて手に入れた激レア頭蓋骨が日の目を見るときが来たのだ。
いったいどんなライフルになるのか。
恰好良いのか。可愛いのか。ごついのか。スマートなのか。
性能はどれくらいなのか。
俺は興奮を帯びた目でカジの手元を凝視した。
カジがポチポチとタッチパネルを操作する。
金床がパアアと光り輝く。
そして――新しいスナイパーライフルが完成した。




