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13.狙撃手、PKされる

今日は草原エリアに来ている。

胸の高さほどの草がたくさん生い茂っている平地だ。


熊山のように上から下を狙える地形は、狙撃手にとって非常にやりやすい。

だが年中同じエリアに引きこもっているわけにはいかない。

いろんな条件の地形に慣れておかないと、後々困ったことになる。


そういうわけで草原。

俺は腰をかがめて、なるべく頭が草から出ないように低頭で移動する。

狙撃手は攻撃する前に、敵から発見されてはいけないのだ。


さて。

草原といっても、見渡す限りずっと草一面というわけではない。

草が多く茂っている場所と、比較的少ない場所がある。

そこが狙い目だ。


俺は草が多い場所に身を潜める。

そして草が少ない場所で狩りをしている標的を仕留めるのだ。

標的とはもちろんプレイヤーのことだ。


他のプレイヤーからすると、草が少ない場所のほうが見通しがいいから、モンスターと戦いやすいしな。

好き好んで草が多く生えているエリアに潜り込むような物好きは、それこそ狙撃手くらいだ。


俺は背の高い草を少しかき分けて、地面に腹ばいになる。

そして草と草の隙間から、スナイパーライフルの先端だけを覗かせる。

よほど注意深いプレイヤーでもない限り、ライフルに狙われていることなどわかるまい。




待つことしばし。


遠目にプレイヤーがやってくるのを発見した。

4人パーティらしい。

男3、女1のようだ。


4人パーティは、このエリアのモンスターである角ウサギを狩り始める。

角ウサギは体こそウサギだが、角による突進がかなり痛く、また動きも素早いのでなかなか仕留めるのが困難なモンスターだ。


ちなみに俺も角ウサギを倒したことはない。

というか狙ったことがない。

あんなに小さいうえに素早くピョンピョンする獲物を狙撃するのは無理だ。


さて、まずは角ウサギの倒し方を勉強させてもらうとする。

4人パーティは魔術師の女が、氷のスキルで角ウサギの動きを鈍らせている。

そのうえで神官から素早さ上昇のスキルをもらった剣士が、2人がかりで攻撃しているようだ。


なるほど。

素早い敵を相手にするときは、敵の速さを下げたうえで、自分たちの素早さを上げればいいのか。

単純だが効果的な戦法に思える。

まあソロプレイヤーの俺には使えないが。


4人パーティは小休憩をするようで、焚き火の準備を始めた。

ちなみに街の道具屋には焚き火セットなるものが売っている。

焚き火を起こすと、野外エリアでも料理スキルで料理ができるのだ。


それはともかく、標的の気が緩んでいる。

殺るなら今だろう。

もちろん回復スキルを持っている神官からだ。


俺はスコープの照準を合わせる。

上から下を狙うときとは、多少勝手が違う。

地面に伏せて相手の頭を狙うので、やや上向きに狙いを定めることになる。

ほんの数ミリ間違えるだけで、弾は何もない空中に飛んでいってしまうだろう。


相手は全く気づいていない。

照準の中心が、男神官の頭を捉える。

トリガーを引く。


ターン。


男神官の頭が光の粒子となって弾け飛び、一拍置いて身体も消滅する。

やはりヘッドショットを決めれば一撃でHPゲージをゼロまで減らせるようだ。


残った3人は仰天して周囲を見回している。

素早く周りを警戒するあたり、もしかするとPKをされた経験があるのかもしれない。

だが草むらに伏せて身を隠している俺が発見されることはない。


次は恐怖に顔を歪めている魔術師の女。

照準を合わせる。

トリガーを引く。


ターン。


魔術師の女も電子の光となって消滅した。


よし、このまま残り2人も・・・と思ったが、そう甘くはなかった。

2人の男は狼狽えながらも、一目散に逃げ出したのだ。


悪くない判断だ。

敵の姿が見えない以上、反撃は望めない。

ならばさっさと離脱するのがベストな行動といえる。


俺は追わない。

姿を発見されたら、脆い狙撃手など簡単に反撃を受けてしまう。

何より俺は鈍足だ。追いつける自信もない。


うむ。

2人逃したが、まあ悪くない首尾といえる。

早速アイテム欄の確認を・・・。


不意に。


がさっと、後方で音がした。

俺は素早く振り返り、膝立ち状態になる。

何だ、モンスターか?


いや違う。

プレイヤーだ。

まだ少年と呼べる年頃の顔立ちをしたプレイヤーだ。


草の合間を縫い、まっすぐこちらへ接近してくる。

その動きに躊躇はない。

俺はちらりと少年の手元を見た。

両手に短剣で武装している。


俺は直感した。

ヤツもPKプレイヤーだ。

もちろん標的は俺に違いない。


どうする。

会敵までもう数秒もない。


逃げるか?

だが相手は見るからに素早いし、俺は鈍足。

逃げ切れないだろう。


戦うか?

しかし俺の得物はスナイパーライフル。

誠に残念ながら、残り数秒で攻撃できる状態にはならない。


ならどうする。

と、不意に・・・少年の姿がかき消えた。

空気に溶け込むように、忽然といなくなったのだ。


俺は目を見張った。

意味がわからない。

いきなりログアウトしたのか?

いやそんな馬鹿な。


混乱した俺は、何も反応できなかった。

短剣を振りかざした少年が、目の前にぱっと姿を現しても、指一本動かせなかった。


ザシュ!と両の短剣で身体が切り裂かれて。

俺のHPゲージは一瞬でゼロになった。


そこでようやく理解した。

恐らくは姿を消すスキル。

自分の姿を短時間、ステルス状態にできるスキルがあるのだろう。


そんなことを考えながら。

俺は初めてPKで死亡した。

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