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129.狙撃手は三度死ぬ

俺はリコッチにキルされて復活ポイントに送還された。

ピロン!とフレンドチャットが鳴る。



『センパイ。なんかミスリル鉱石がドロップしたんですけど』

『おい返せ』

『やです。センパイがPKしてるときは私もPKKします』



ぐぬぬ・・・。

まあそりゃそうだ。

リコッチがPKKプレイヤーである以上、PKの現場に出くわしたらPKプレイヤーを倒すのは当たり前だ。

普段は仲良くしていようが、ゲームに手は抜かない。

互いにそういう姿勢なのだ。


それはいいんだが、せっかくのミスリル鉱石が減ってしまった。

もう少し集めねば。

俺は時間を置いて、再度ミスリル鉱山へ赴くことにした。




俺は慎重に慎重を重ねて、先程張り込んでいた林に戻った。

さすがにもうリコッチはいないだろうが、万が一いたとしても俺が同じ場所でまたPKを繰り返すとは夢にも思うまい。

知略こそ武器である。

俺は相手の思考の裏を読む人間なのだ。

かつてダンチョーに軍師と評された俺の頭脳を持ってすれば、リコッチなど恐るるに足らず。


俺は木の側に陣取ると、再び腹ばいになる。

ライフルをセットすると、照準を合わせる。

トリガーに指をかける。


準備は万端だ。

ククク・・・早く出てこい生産者ども。

貴様らの血肉を我に捧げるのだ。


「フリージングエッジ」


俺は血肉をリコッチに捧げて死んだ。




******




復活ポイントに戻された俺は、両手を地面について驚愕していた。

まさか俺が同じ場所に戻るまいとした思考の裏の裏をかかれたのだ。

軍師ケンタロは知略で敗北したのだ・・・。


そうだな。

冷静になろう。

少なくとも今日のところは、もうミスリル鉱山は駄目だ。

わざわざもう一度戻るような愚を犯す必要はない。

諦めて銀色のダンジョンを周回しよう・・・。




・・・とでも思ったか?

俺は三度、ミスリル鉱山にやってきた。


ククク。

凡人ならば二度の失敗で諦め、他の手段を模索することだろう。

そう、ただの凡人ならばだ。


あいにく俺は軍師ケンタロ。

いくら何でも三度目はあり得ない。

そんな愚かなことを知性に富んだこの俺がするはずがない。

――そうした思考の裏の裏の裏を読んだのだ。


俺はまた先程まで陣取っていた林に戻った。

二度は死地であったこの場所は、三度目にしてついに安全地帯と化す。

もはや誰もこの場所には注目するまい。

犯人が三度も同じ場所に戻るなど、どんな推理小説でもあり得ないからな。

我が知略と勇気が見事勝利を収めたのだ。


「タイダルスピアー」


俺はモズの早贄みたいになって死んだ。




******




『ケンタロ、何でキミはジャッティの巡回経路に何度も突っ込んでくるんだい?』



ダンチョーのフレンドチャットを見て、俺は地面をぶん殴った。


まあつまりだ。

ミスリル鉱山は上級者用の採掘エリアだ。

PKKギルドが定期的に護衛していても何の不思議もないわけだ。


あそこでPKをするには、俺は準備不足だった。

もっとマップを綿密に確認して、PKKギルドの巡回に引っかからない場所を模索したうえでミッションに取り掛かるべきだった。

俺は準備段階で敗北していたのだ。


仕方がない。

もはや諦めざるを得なかった。

負けを認めた俺は、大人しく銀色のダンジョンを周回することにした。

もちろんソロなので、一周目のときのようなチキンプレイを徹底してだ。

時間がかかることは許容するしかない。

PKプレイヤーに殺されるリスクなく、一定の成果は見込めるわけだしな。

飽きるが・・・。



そんなわけで死んだ目をしながら何周も周回した俺は、とにかく時間はかかったが充分な数のミスリル鉱石と、金になりそうな多少のレアアイテムをゲットした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新&返信いつもありがとうございます! タイトル(大笑)!! 最後の >そんなわけで死んだ目をしながら何周も周回した俺は、とにかく時間はかかったが充分な数のミスリル鉱石と、金になりそうな…
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