101.狙撃手、ついに家を手に入れる
それから数日は、素材集めに集中した。
フローラはほぼ木工スキルに全振りしているらしく、伐採で木を刈ってどんどん木材を集めてくれている。
リコッチは生産スキルはゼロなので、金を稼いで街でプレイヤーが開いている露店から購入。
俺はといえば木材を抱えていそうなプレイヤーを、ほどほどにPKしている。
あまり一ヶ所でやりすぎると、その場所に生産職のプレイヤーが寄り付かなくなってしまい、効率が落ちるのだ。
そこそこPKしたら場所を移動し、またそこそこPKしたら移動する、を繰り返すのがいい。
しかし些か問題があった。
やはり武闘大会で準優勝したのがよくなかったらしい。
知名度が上がってしまい、よくPKされるようになった。
俺が生産職を狙っていると、いきなり背後から殺しに来るのだ。
たまに「リア充はしね!」とかほざくやべー連中もいて、キルされては木材を失うため効率が上がらない。
本当なら俺もリコッチのように金を溜めて街中の露店で木材を買うほうがいいのだ。
しかし残念ながら人を殺しすぎて悪人となった俺は、街に入るたびにチンピラNPCに金を取られる。
なので俺がリコッチと同じことをするのは、PKで木材を集めるより更に効率が悪い。
そういうわけでやむなく外道なPKプレイヤーたちの目をかいくぐり、ちまちまと生産職をキルする日々が続いた。
「じゃーん! 私これだけ集めましたっ!」
「わ、私はこれくらい・・・」
「・・・」
フローラは生産職の本領を発揮し、最もたくさんの木材を集めてくれた。
彼女一人で必要な木材の、実に7割を確保してくれたのだ。すごい。
次点でリコッチ。
戦闘職のわりにかなり集めてくれたほうだ。
俺は・・・。
「不甲斐なくて済まん」
「あ、あの、大丈夫です・・・数は足りてるので」
「センパイもがんばりました! みんながんばったんです!」
2人が慰めてくれる。
こういうときにPKプレイヤーというのは役に立たないことを痛感した。
それぞれ得手不得手があるとはいえ情けないことだ。
「さて、それじゃー湖のエリアに移動しましょー!」
「は、はいっ」
「おう」
リコッチが街の倉庫から土地の権利書を引き出すと、俺たちは移動を開始した。
この権利書はPKされたらドロップしてしまうアイテムだ。
だから目的地に着くまでは間違ってもリコッチがキルされるわけにはいかない。
もちろん木材を大量にアイテム欄にストックしているフローラもだ。
俺たちは目を血走らせながら周囲を警戒し、森林エリアに向かう。
たまにPKプレイヤーに遭遇したが、主にリコッチが全力で排除した。
鬼気迫る迫力であった。
今日このときばかりは何者をも寄せ付けないという強い意志を感じた。
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「わあ・・・! 素敵な場所ですね・・・」
フローラが目を輝かせる。
気持ちはわかる。
この湖を最初に見たときの俺も、きっと似たような表情をしていたことだろう。
森の奥にひっそりとある湖。
非常にファンタジー感溢れる立地だ。
「よし。リコッチ、頼む」
「はいっ!」
リコッチが手元のパネルを操作して土地の権利書を使用する。
権利書が消滅し、代わりに湖のほとりの一角、地面がパアッと赤色に光る。
これでこの場所は俺たちの土地になったわけだ。
厳密には権利書を使用したリコッチが土地の所有者だな。
リコッチは最初、俺が土地の所有者にならないかと提案したが、無理やり押し付けた。
俺は元々はハウジングに関わろうと思っていなかった人間であるし、リコッチのほうが所有者に相応しいだろう。
「じゃあフローラ、頼む」
「は、はい・・・!」
フローラが緊張した様子でぐっと拳を握り、それからパネルを操作する。
シュワアアと地面から光の粒子が立ち上ると、程なくして木造の家が現れた。
外観は軽井沢によくある別荘のような感じだ。
イメージ通りだな。
「・・・」
リコッチが吐息を漏らし、無言で家を見上げている。
何やら大変感動の面持ちで、声も出ない様子だ。
フローラは安堵で胸を撫で下ろしている。
ゲームシステムに則った操作をしただけだが、やはり不安はあったのだろう。
「リコッチ。フローラに報酬を払おう」
「あっ、そうですね!」
俺たちはトレード操作をして、それぞれフローラに金を渡す。
俺は事前に取り決めていた額より、少し色を付けた。
「あの・・・こんなに?」
目をぱちぱちさせるフローラに俺は頷いて見せる。
「いい仕事をしてくれた職人には、相応の報酬が必要だ。フローラはよくがんばってくれた」
「ほんとだよ! 理想の家だよ! フローラさんありがと!」
「い、いえ・・・」
俺たちが手放しで褒めると、フローラは頬を赤らめてはにかんだ。
その表情にはどこか達成感が浮かんでいる。
生産職として満足する仕事ができたのだろう。
これでフローラの仕事は終わりだが、もちろんこの場で放り出すなんてことはしない。
心無いPKプレイヤーの被害に合わないように、きちんと街まで送り届けた。
こうして俺とリコッチは、ついに念願の家を手に入れた。




